【コラム】
サンフランシスコのFM局「95.7 KMAX」がジャンルや年代にこだわらずに選曲した曲を流し始めた。
米国のラジオは、局によってかける音楽のジャンルが一定で、さらにオールディーズ、80年代、最新ヒットというように年代も決まっている。これは特定の聴取者層をがっちりとつかむためで、広告を安定して獲得するための基本だった。それがなぜジャンルを問わないミックスを始めたのかというと、ここ数年でラジオのリスナーが減り、広告の伸びが鈍っているからだ。Radio Advertising Bureauによると、米国における2004年のラジオ広告の伸びは2%にとどまった。
原因のひとつは、好調だった90年代にビジネス色を強め過ぎたためだ。レコード会社の意向に沿った曲が1時間ごとに流される。選曲者不在のラジオ局ばかりになった。
もうひとつは、パソコンを使った音楽の楽しみ方の普及である。CDという単位ではなく、HDDにため込んだ膨大な楽曲ライブラリーから、ユーザーが好みで曲を切り取り始めた。このプレイリスト作りがDJ的な気分で楽しい。つまり、ワンパターンのラジオ局に飽きたリスナーが、自ら選曲者になる楽しみを見つけ始めたのだ。
筆者の場合、以前は特定のジャンル、特定のミュージシャンばかり買っていたのに、最近はずいぶんとばらついている。それはプレイリストを作るようになってから、"ビートルズのカバー曲"、"スティーブ・リリー・ホワイトの仕事"といった様な感じで曲を漁るようになったからだ。例えばビートルズのカバー曲だと、ロックよりも、カントリー、ジャズ、クラシック、レゲエ等々の方が多いぐらいだ。それらをごちゃ混ぜにして聞いたとき、ビートルズをキーワードにしたジャンルレスの意外な気持ちよさを味わえる。
さすがにこれではマズいと感じ始めたのだろう。スポンサーの顔色ばかり見ていたラジオ局が、リスナーの動向に気を配り始めた。その結果が番組構成上、避けるべきと言われていたジャンルを超えたミックスである。ちなみにKMAXは、全米に20以上のラジオ局を展開するBonneville Internationalが運営している。サンフランシスコの局をジャンルレスに切り換えたのは、iPodほかのデジタル音楽プレーヤーのユーザーが多いからだ。ベイエリアではKMAX以外にも、週末だけとか、午後3時から6時までという様に時間限定でジャンルレスを試すラジオ局が増えている。
まさに今KMAXでかかっている曲を紹介すると、ジョン・メイヤー、AC/DC、ブライアン・アダムス、パールジャム、ロッド・スチュワートと続いている。曲間には「オレたちは同じ曲をかけ続けない」とか、「かけたい曲をかけるのがThe MAX」と威勢がよい。ただ、KMAXを聞き続けたいかというと、残念ながら疑問符だ。選曲の妙が伝わってこないというか、幅広くなったのはいいんだけど、なんだか浅い……。発見がないのだ。
ジャンルレスのラジオ局がライバル視するAppleは、iTunesをPodcastingに対応させる。スティーブ・ジョブズ氏はPodcastingを「ラジオ版TiVo」とか、「ラジオ版ウエインズ・ワールド」と説明する。正直ウエインズ・ワールド色が強いのが現状だが、それゆえにジャンルレスで奇妙な深さのある番組を楽しめたりする。プロから見れば、Podcastingの多くはアマチュア臭さが鼻につくだろう。だが、プレイリストは楽曲ではなく、パーソナリティである。ラジオ局側がそこに気付かないと、ラジオの世界もAppleに席巻されてしまうかもしれない。
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