【コラム】

シリコンバレー101

131 PC・デジタル家電業界のファンタジー不足について考える

    Yoichi Yamashita  [2005/05/31]

    今週はメモリアルデーで米国は月曜日まで3連休。夏のバケーションを先取りする人も出てくる中、サンノゼ市では27日から30日まで FanimeCon というアニメ・イベントが開催された。

    警察官ももちろん本物ではない
    FanimeCon会場前

    会場はMcEnery Convention Centerである。Game Developers Conferenceや、少し前まではIntelのDeveloper Forumの会場になっていた大規模なコンベンション会場だ。技術系のイベントが小さい会場に移ったり、消えたりしている昨今、McEneryで4日間もやる。そんなにアニメってこの国で勢いがあるのか……と驚かされる。

    日曜日に買い物に出かけたら、紀伊國屋書店でアニメ本をあさるコスプレ集団を発見。その後、日系スーパーで日本のお菓子の買い出しに来たコスプレ集団と遭遇。カレーを食べにいったサンノゼ・ダウンタウンは、コンベンション会場周辺、そして近くのマクドナルドがコスプレの団体に占拠されていた。

    米国ではアニメ・イベントやコンベンションの成長が著しく、FanimeCon以外にもアナハイムで開催されるAnime Expo 、ボルチモアのOtakon 、シアトルのSakuraCon 、ボストンのAnime Boston などが有名。以前は数千人規模だった参加者が、今では2万人超がめずらしくなくなった。年齢層も広がり、女性の参加者も急増している。

    先々週、E3を取材した際に立ち寄ったハリウッドのスターウォーズ「エピソードIII シスの復讐」の封切りパーティー もコスプレの大集団だった。そういえば、このタイトルはサンディエゴで開催されるComiCon でジョージ・ルーカスが発表したのだ。

    アニメ・イベントの盛り上がりには圧倒されるが、米国で"コスチューム・プレイ"と言っても、一般の人にはあまり通じない。だが、よくよく周囲を見回してみると、コスプレの手法は意外と身近に浸透しているように思える。

    例えばファッション業界。オルセン姉妹をフィーチャーしたティーン系ファッション、ヒルトン姉妹を利用したお姉系ファッションのマーケティングは一種のコスプレと言える。
    ベルサーチの春モデルではマドンナが起用されており、広告の中でカラフルでセクシーなエグゼクティブを演じている。従来のように広く誰にでもアレンジできるスタイルではなく、ひとつの形を押しつけることになる。だが、非常にわかりやすい。"マドンナの~"というイメージで納得してもらうところがポイント。春物がディスプレイされたベルサーチからマドンナのコスプレが出てくる様子は容易に想像できる。

    ちょっと路線は外れるが、17日からカールス・ジュニアというハンバーガー・チェーンのCMにパリス・ヒルトンが登場している。6ドルのプレミアバーガーのCMで、露出度の高い黒い衣装を着て、ベントレーを洗車しながら、分厚いハンバーガーにかぶりつくというあり得ない演出……。セクシー過ぎて、TV局からクレームがつけられたことでも話題に……。"大人のバーガーショップ"というイメージで、マクドナルドとは一線を画そうという狙いは伝わってくる。洗車しながらハンバーガーをほおばる人が出てくるとは思えないが、おじさんの"ファンタジーの世界"をCMにしているという点では、ベルサーチのマドンナ広告に通じるものがある。このCMはカールズ・ジュニアのサイト でも公開されている。

    ちなみにパリス・ヒルトンの前には、ホームラン王マーク・マクガイアが出演していた。ハンバーガーを食べるマクガイアが映されていて、「現役時代ビッグマックのあだ名で呼ばれていた彼(マクガイア)のお気に入りのハンバーガーは?」というナレーションと共に手元がアップになると、6ドルバーガーをほおばっているという演出だった。面白いんだけど、スゴく現実的。

    思うに、パソコンやデジタル家電の売り込みは、このように消費者があこがれる要素が少なすぎる。日本ではこういう マーケティングも展開されているが、米国での手法は非常に現実的。かろうじて、U2をiPodのCMにひっぱり出したアップルが健闘している。そのアップルも、80年代にはコカコーラ・ペプシ戦争でペプシに勝利を導いたマーケティングの天才ジョン・スカリーを活かせなかった。パソコンが進む道を模索していた時代には、フィットしない人材だったのだろう。だが、幅広い消費者の心をつかむという課題に挑戦している現在、「ペプシ・ジェネレーション」や「ペプシ・チャレンジ」のようなアイディアを生み出すような人が活躍できるのではないだろうか。

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