【コラム】

シリコンバレー101

124 大ばか者呼ばわりされた市議会議員候補とエイプリルフール

    Yoichi Yamashita  [2005/04/05]

    昨年、Googleはエイプリルフールに容量1GBのGmailを発表した。これは本当の発表だったが、エイプリルフールのジョークをしつこく疑う人が多かった。そのぐらいインパクトのある冗談のような本当の話だった。その1周年となる今年のエイプリルフールに同社は、Gmailの容量を2GBに拡張した。

    今にして思えば、Gmailもある意味エイプリルフールのジョークである。つまり、Gmailが本当の話だからこそ、逆に容量10MB程度、アクセスしないといつの間にか消えてしまうような、それまでのWebメールサービスがジョークに思えてしまう。Gmailが2GBになった今年は、有料の大容量サービスを笑い飛ばしているように思える。ライバルにとっては、エイプリルフールの本当の話だからこそ、頭の痛いところだろう。

    さて、個人的に今年最もはっとしたジョークは、「Apple、iTunes/iPodにWindows Mediaを採用」である。

    面白かったのは、このエイプリルフール記事に対して残された数多くのコメントである。意外にも"iPodでWindows Media"を歓迎する人が多く、それに比べるとAppleのDRM技術FairPlayを惜しむ声が少ない。記事はジョークでも、このコメントにはある意味真実が含まれている。果たしてAppleは、これらの声をどのように受け止めるだろうか。

    ネット上ならではのエイプリルフール・ジョークが年々増えているが、最近はやり過ぎと思えるモノも見受けられる。Appleのジョークなどは話が伝わるうちに一部では本当の話として伝えられていた。そういう危うさもある。エイプリルフールとはいえ、一体どこまで許されるのだろうか、と思えてくる。

    そんな疑問を持っていたところ、サンノゼから車で1時間ほどのところにあるホリスターという街で、「Dumb Asses(大ばか者)訴訟」というちょっと興味深い訴訟が行われた。

    これはWebサイトで「Dumb Asses」と表現された市議会議員候補が、サイトでの発言者を名誉毀損で訴えた訴訟である。Dumb Assという言葉は使い方によってはジョークっぽいニュアンスも含まれるが、明らかに中傷の言葉である。それ故に、ネット上での言論の自由、そしてDumb Assという言葉の誹謗中傷性、さらには「彼らは本当にDumb Assesなのか否か?」という奇妙な点でも注目された裁判となった。

    原告は2000年の市議会議員選挙に出馬したJ.J. Vogel氏とPaul Grannis氏。この2人を元市議会議員のJoseph Felice氏がWebサイトで、「J.J. Vogelは怠け者の烙印を押された父親」、「Paul Grannis--破産、アルコールとタバコ中毒」と表現した。さらにDumb Assesトップ10ランキングを作り、その1位と2位にVogel氏とGrannis氏をランクさせたのだ。ちなみにVogel氏とGrannis氏は落選している。

    担当判事は、1.被告の言論の自由を拡大解釈するような行為を原告は問題視している、2.被告の行為は社会的な問題に起因している、という2点を認めた上で、「原告の主張が、誹謗中傷という申し立てを裏付けているか?」を争点とした。

    結果から言うと2人は誹謗中傷の事実を証明できなかった。裁判では、Vogel氏が過去に子供の養育義務を怠っていたこと、Grannis氏が破産やアルコールおよび喫煙の問題があったことを認めている。つまり、Felica氏の指摘はでっち上げではない。

    問題の表現について判事は、2人が公的な立場にいたことから、「中傷的な言葉から逃れるのは難しい」と指摘した上で、「ある人にとって"Dumb Ass"に思える人でも、違う人には賢く映る」とした。つまり、意見は人それぞれ、例えそれが「Dumb Ass」であっても、意見を禁じることはできないという判断である。

    この地方の訴訟が今後の名誉毀損訴訟に引用されるとは思わないが、シンプルにポイントをまとめた裁きではないだろうか。もちろん意見なら何でも大丈夫という訳ではない。しっかり3つのポイントに照らし合わせて考えないと、エイプリルフールのジョークでも名誉毀損ということになってしまう。

    新着記事

    特設サイトの情報

      人気記事

      一覧

      イチオシ記事

      新着記事

      特別企画

      マイナビニュースマガジン