【コラム】

シリコンバレー101

123 ベータマックス訴訟から21年、MGM対Groksterで問われる判決の有効性

    Yoichi Yamashita  [2005/03/29]

    先々週にこのコラムで1曲5セントのオンライン音楽販売というアイディアを紹介し、先週はP2Pで参加作品を配信するサンノゼの映画祭を取り上げた。三部作ではないが、今週はそれらも参照しながら読んで頂きたい。

    間もなく(米国時間の3月29日)、最高裁においてMGM対Grokster訴訟の口頭弁論が行われる。MGMは「ユーザーによる著作権侵害に対して、P2P技術を提供する企業は責任を負わない」という連邦地裁とサンフランシスコ第9巡回区連邦控訴裁の判決の破棄を求めている。これは「著作権保有者の権利を主張するハリウッド VS 革新的な技術の可能性を訴えるシリコンバレー企業」の第2ラウンドとして注目されている。P2Pユーザーに限らず、結果次第では、MP3プレイヤーを持っている人、TiVoのようなHDD録画機を持っている人、オンライン音楽ストアの利用者、写真共有サービスの利用者など、幅広い範囲のデジタル機器/サービス・ユーザーに影響を与える訴訟となる。

    第1ラウンドは1984年のソニー・ベータマックス訴訟だった。ソニーの家庭用VTRが著作権を侵害する可能性をユニバーサルとディズニーが指摘。さらに家庭用VTRを使用して著作権を侵害した個人だけではなく、製造・販売するソニーにも侵害行為に寄与した責任があると主張した。これは家庭用VTRの著作権侵害が問われた裁判だが、従来の事業利益を守ろうとするハリウッドと、新分野開拓のためには革新的な技術をどん欲に取り込むべきと考えるメーカーの主張のぶつかり合いとなった。結果、最高裁は「著作権を侵害しない意義のある用途が(VTRには)求められている」として、ソニー側の言い分を認めた。「技術は中立」という原則を築いた裁判であり、以後、ベータマックス訴訟が著作物の公正な利用方法を判断する際の大きな基準となっている。

    Grokster訴訟においても、地裁、そして昨年8月の控訴裁ではベータマックス訴訟の判決が引き合いに出されて、「著作権侵害の責任なし」という判断が下された。Grokster側は、著作権侵害を目的とした製品ではないことと、実際にパブリックドメイン作品の配布などに利用されていることを示して、上手くベータマックス判決にP2P技術を当てはめて見せた。

    だが、Groksterの主張に深くうなずけない人も多い。Groksterで交換されているファイルのおよそ9割は違法ファイルである。Groksterは、これらの行為をコントロールできる立場にいない。だからこそ、ベータマックス判決に当てはまるのだが、多くの人が「Groksterは違法ファイル交換を強く意識しながら、あえて距離を置くことで正当化している」と感じている。

    また、控訴審判決以降、P2Pによるコンテンツ配信の状況も随分と変わっている。今や著作権を尊重したP2Pサービスは不可能ではない。Napster考案者ショーン・ファニング氏の新企業Snocapやニューヨーク北部を拠点とするWurld Mediaなどが、著作権を保護しながらファイルを流通させられるP2P技術を開発しているし、先週紹介したCINEQUESTのP2P配信にも著作権保護技術が施されていた。

    最高裁において、エンターテインメント企業は、著作権保護技術の存在を武器に、Groksterが侵害行為に対する責任を逃れるために意図的に距離を置いていると主張してくるだろう。Groksterの立場では、距離を置くからこそ革新的な成長の余地が生じると反論できるが、現状では分の悪さが否めない。

    ベータマックス判決の型にはめただけの控訴審と違って、最高裁ではベータマックス訴訟の有効性を確認するような議論が予想されている。焦点は、ベータマックス判決の「著作権を侵害しない意義のある用途」という一文の解釈である。例えば、ベータマックスでソニーは、「これで『コロンボ』を見ているから『コジャック』を見逃す、ということはなくなります」という広告を用意した。VTRの可能性とユーザーの利益が伝わる広告であり、"意義のある用途"の意味がよく理解できる。このような広告をGroksterは打てるだろうか? 裁判の展開次第では、これまで消費者や開発者のために存在したベータマックス判決を逆手に取られる可能性もある。そこが問題なのだ……。

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