【コラム】

シリコンバレー101

121 ファイル共有に対抗するには1曲5セント、それでも利益は上げられる

    Yoichi Yamashita  [2005/03/15]

    「もう1曲に99セントを支払う必要はない!」という広告を最近、雑誌などでよく見かける。Napsterのサブスクリプション・サービス「Napster To Go」の広告だ。月々14.95ドルの会費を払っている間は、100万曲以上を自由にダウンロードして、ポータブルオーディオプレイヤーに転送できる。広告の文句もかつてのNapsterを連想させるようで、効果的だ。

    1曲99セントで利用者が楽曲を所有できるサービスと、月々14.95ドルのレンタルサービスはどちらがお得だろう?

    ちなみにウチにあるCDの枚数を数えたら、楽にNapster To Goを40年以上契約し続けられるぐらいの額をすでに投資していた。その前のレコード時代も入れれば、月平均の購入枚数は4~5枚になる。これなら、月々CD1枚程度のサービス料金で100万曲以上を自由にダウンロードできるNapster To Goはかなりお得である。ただ、音楽を買うというのは損得勘定ばかりではない。

    例えば、個人的には、オンライン音楽配信サービスを利用するようになって、逆にCDの購入枚数が増えている。NapsterやRhapsodyなど、サブスクリプション・ベースのサービスは100万曲以上を自由に聴けるから、以前のように雑誌のレビューなどからCDを購入して失敗するという経験を避けられる。その安心感がCD購入に拍車をかける。だから、「レンタル」か「購入」かという比較ではなく、サブスクリプションで聴き続ける曲、99セントで購入する曲、アルバム単位でダウンロード購入する曲、CDで購入という風に、アルバムや曲によって投資額を調節できるのがNapsterの優れた点だと思う。

    では、Napster To Goは違法ファイル交換を減少させるだろうか?

    「100万曲+を聴ける料金=月14.95ドル」は音楽好きには間違いなくお得感がある。だが、違法ファイル共有に慣れた人やそれほど音楽に関心を持たない人も惹きつけるかというと疑問が残る。サービス間のカベなど、目に見えない制限を取り払うためには、さらにそれなりの額を音楽に費やす必要があることなどを考えると、現状を大きく変えるのは難しいようにも思える。

    先週、カナダのトロントで行われたCanada Music Weekコンファレンスで、The Clashなどのプロデューサーとして知られるSandy Pearlman氏が、1曲5セントで販売すれば音楽業界を変えられるというアイディアを紹介した。これは私見ではなく、現在McGill大学で学ぶ同氏がDaniel Levitin教授などと共に研究した結果である。

    具体的には、Googleのような検索エンジンにすべての楽曲を登録し、5セントのうち1セントを使用料として支払う。Googleがダメなら、オンライン音楽販売の道すじを作ったiTMSでも成功する可能性があるとしている。ちなみにGoogleにはコンタクトしていないが、Appleには同氏の仮説を伝えているそうだ。

    要点は、より多くの人が音楽を聴くチャンスを創り出すこと。ファイル共有が広まっている現状でも、より多くの人がより多くの楽曲を頻繁に購入する価格に設定する。ファイル共有で違法に交換されている楽曲の数量を考えれば、音楽に対する人々の関心は薄れていない。それらを上手く取り込めば、5セントでも今以上の利益をアーティストが得られる可能性があるそうだ。地域的には、アーティストを支援する環境が整ったカナダはテスト地域として最適だとしている。

    机上の理論、絵に描いた餅にも聞こえる。当然、レコード会社は猛反対だ。ただ、音楽業界の一部にも、ティーンエイジャーなどにとっては高価な音楽を、もっと身近な存在に引き下げることに興味を示す声がある。

    サービスに目を向ければ、Googleが名指しされているのも面白い。これまで音楽というと製品でしかなかったが、文化資産として共有しようという考えが底辺に見え隠れする。

    また、Appleについては、Napster To Goの登場で、少なくともサービス面ではユーザーの引き留めに不安を残している。5セントプランに乗ってくるかは別として、このままiPod人気に安心するか、それとも再び世間をアッと驚かせる一手を打ってくるかが注目される。

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