【コラム】

シリコンバレー101

115 ニッチ狙いのテクノロジー関連雑誌の増加、屋台骨はネットメディア

    Yoichi Yamashita  [2005/02/01]

    米国の一般向けコンピュータ情報誌「Computer Shopper」は、その厚さが話題になることが多い。90年代の中頃は「電話帳のような~」と形容される巨大な雑誌だった。それが次第に少年漫画誌ぐらいにサイズダウン。ネットバブルがはじけると、一気に青年漫画誌ぐらいの厚さになり、ノート寸前までやせ細ったところで、また厚みを取り戻してきた。パソコン販売店などの広告で成り立つ雑誌なので、広告量でページ数が決まるのだろうが、やせ細った姿を見ると、思わず「……」となってしまう。

    しかし、厚みが増減するだけならましな方で、90年代に数多くあったテクノロジー関連の雑誌は、21世紀を迎える頃にはずいぶんと消えてしまった。ある分野にかたよっていたり、少々専門色が強い方が内容的には面白いのだが、そのような雑誌に限って真っ先に倒れてしまう。

    テレビも同様である。テクノロジー情報専門チャンネルのTechTVは、以前はテクノロジー関連のニュース・情報番組・インタビュー番組など、充実した内容の番組を放映していた。ところが、Comcastが買収して、ゲームネットワークのG4に組み込まれてからは、一日中ゲーム情報ばかり。その方が広告を取れるのだろうが、番組は面白くない。しばらく我慢していたが、かつてのTechTVに戻る気配もないため、契約を切ってしまった。

    定期購読した雑誌はことごとく廃刊になり、契約したケーブルチャンネルはお子様番組に変わってしまう。自分と世間がズレている可能性もあるが、日本以上に広告に依存している米国では、雑誌やテレビでは骨太のテクノロジー関連の情報を広告ビジネスとして成立させるのが難しいのだろう。比較的コストのかからないWebの方が情報提供の場として適している。

    と思っていたら、昨年の後半頃から興味を引かれる雑誌の発表が相次いでいる。最初はO'reillyの「Make:」だった。何でも自分で作ってしまおうというハードウエア・ハッキングの内容も含む季刊誌である。編集スタッフは変わったが、ベンチャー情報を扱ったRed Herringもビジネス色を強めて復刊した。そのRed Herringの元編集スタッフが「MIT Technology Review」に加わった。同誌は、MITでの研究を中心にした100年以上の歴史を持つ技術情報誌だが、雑誌としては苦戦していた。そこで新スタッフを迎えて1998年以来となる紙面の大幅刷新を実施。MIT色を薄め、西海岸のシリコンバレーやハリウッドのメディア情報なども積極的に扱うようになった。

    これらの雑誌に共通するのは、ニッチ市場をターゲットにしているということ、そしてWebを使った情報提供を確立している会社であるということ。その傾向をよく現しているのが、Red Herringの創立者であるTony Perkins氏が立ち上げたブログ形式の情報サイトAlwaysOnの季刊誌「AlwaysOn magazine」である。

    Perkins氏曰く、雑誌は一通り目を通してもらえるのに、Webサイトでは見落とされる記事が多い。AlwaysOnは、月に25万人の読者を集めるが、「これは絶対に読むべき!」と同氏が太鼓判を押す優れた内容の記事やコラムでも読者は1万人程度。そこでAlwaysOnの優れた部分を確実に読みたいという人のために、重要な内容を集めて編集し直したのが雑誌版である。

    JupiterResearchがSearch Engine Strategiesコンファレンスで発表したレポートによると、2007年にはオンライン広告の売り上げが138億ドルに達し、雑誌広告の売り上げを上回るという。2003年から2004年にかけてオンライン広告の売り上げは27%上昇した。伸び率という点では、ケーブルTVの14.1%、ブロードキャストTVの8.2%、ラジオの7%、雑誌の5%、新聞の4.8%を大きく上回っている。

    つまり、最近、気になる雑誌の創刊・復刊・刷新は、オンラインと雑誌の広告売上げが逆転しそうになっている状況を反映した現象とも言える。以前はWebサイトがテクノロジー関連の雑誌を支援する役目だったが、今はAlwaysOnのように広告で成立する情報サイトをサポートするための雑誌が出てきている。だから、季刊誌が多い。値段は少々割高だが、これで内容の濃い雑誌が届けられるのならば、我慢できる範囲だ。

    関連サイト

    新着記事

    特設サイトの情報

      人気記事

      一覧

      イチオシ記事

      新着記事

      特別企画

      マイナビニュースマガジン