【コラム】

シリコンバレー101

111 Googleと米図書館の野心に満ちた関係

    Yoichi Yamashita  [2004/12/21]

    Googleが14日に図書館の蔵書を検索可能にするプロジェクトを発表した

    図書館の蔵書という膨大なアナログな情報に、デジタルの強力な検索力をもたらす試みとなる。Web検索の力を数百万冊の書物の検索に利用できるのだから、印刷された書籍を利用する機会の多い人にとってはうれしいニュースだと思う。

    一部で書籍の売上げへの影響を危惧する声があるが、図書館を利用する人は、本を購入する可能性も高い。Googleが主張する通り、膨大な書籍が検索対象となることで、オンライン書店へのリンクや検索型広告を通じて、幅広いタイプの本の売上げが伸びる可能性がある。ただし、このGoogleの主張の底辺には「出版業界はオンライン広告やオンライン書店での販売等にもっと力を入れなさい」というメッセージが見え隠れする。ここが問題となり得るのだが、面白い点でもある。このプロジェクト、アナログの世界とデジタルの世界を結ぶという試みだけではない。過激な一面も持ち合わせているようだ。

    以前にも紹介したことがあるが、サンノゼの公立図書館は、オンラインサービスの導入に非常に積極的だ。サンノゼ州立大学と提携しており、大学図書館にしか存在しないような専門書まで網羅している。住民は、インターネットで図書館システムの蔵書を検索可能。予約しておけば、大学図書館や中央図書館にしかないような書物でも、近くの小規模の図書館に配達してくれる。司書のサービスもオンライン化しており、調べ物や子供たちの宿題などを、EメールやIMを使ってサポートしてくれる。館内は、インターネットに接続するための無線/有線LANが充実している。図書館内にいても、自分のノートPCから図書館システムのサイトにアクセスして、各種サービスを受けている人が多い。

    最近、このサンノゼ公立図書館が力を入れている分野がデジタルライブラリーである。Adobe Reader 6.0、Mobipocket Readerで読める電子書籍とOverDrive対応のオーディオブックの2種類を用意している。利用するには、リーダーをダウンロードして、使用しているパソコンとの組み合わせを登録。デジタルライブラリーで借りたい本が見つかったら、"ブックバッグに追加"をクリックして、あとはダウンロードするだけ。貸し出し期間が過ぎると自動的に読めなくなる。これでもう遅延料金は発生しない。

    デジタルだから簡単にコピーは作れるが、図書館は購入した本を貸し出すことしかできない。コピーは作れないので、デジタルライブラリーでも貸し出し部数の制限が存在する。だから、人気の高い本は10人~20人の返却待ちになってしまう。

    デジタルライブラリー・サービスは、世界中どこからでも利用できる。おかげで出張中でも本を借りられるようになった。ということは、サンノゼ地域以外の人にもサービスを提供することができるのだが、図書館は地域住民のためのサービスである。残念ながら利用は、図書館カード所有者に限られている。

    このデジタルライブラリー、便利さが話題になって、導入の動きが全米に広がろうとしている。例えば、Googleの新プロジェクトのパートナーとなっているニューヨーク市立図書館も約3,000タイトルの電子書籍を用意しており、少ないタイトル数ながら貸し出し数では優れた成果を出しているという。

    このように米国の図書館は、"地域のため"という独特の立場を利用して、けっこう過激なオンライン・サービスの導入を実行している。しかも、図書館のオンライン化は、これまでなかなか普及しなかった電子書籍で利用者の支持を獲得し始めている。デジタルライブラリーが充実している地域では、AppleのiTunes Music Store登場のようなインパクトを住民に与えているのだ。このような動きにとって、オンライン書店と図書館を同時にサポートするGoogleの書籍検索サービスは強力な援軍となるだろう。

    音楽業界がそうであったように、出版業界もデジタル化には慎重。しかし、出版業界も眉をひそめるだけではなく、電子書籍の販売や優れたリーダーの開発など、積極的にオンラインのビジネスモデルを開拓すべき時期にさしかかっている。実際、「機を見て敏」なAmazon.comは、電子書籍読者の増加に対応して、E-Bookセクションを充実させている。従来のスタイルで、立ち止まり続けることが難しい状況なのだ。

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