【コラム】

シリコンバレー101

99 ケータイでの高速入力を実現、BlackBerryのSureTypeテクノロジ

    Yoichi Yamashita  [2004/09/21]

    T-Mobileが発売する7100t。Vodafone向けの7100vもある

    先週、無線通信キャリアのT-Mobileがサンフランシスコで1000号店の開店イベントを開催したのだが、そこで久しぶりに「これは……」と思えるガジェットを手にした。BlackBerryの最新デバイス「BlackBerry 7100t」である。

    BlackBerryを開発するカナダのResearch In Motion(RIM)は成功を収めているが、意外と小規模。これまでに何度も大手の脅威にさらされて、崖っぷちギリギリに追い込まれては、アイディア勝負で盛り返してきた。本人たちは必死だと思うが、見ている分には非常に面白い企業である。

    元々、ページャー(ポケベル)技術を開発しており、エンタープライズ市場を中心にユーザーを開拓していた。携帯電話の普及でページャーの存在そのものが危うくなったら、双方向機能を持たせ、小型のQWERTY配列キーボードを搭載。ページャーならではの常時接続という特長を持ったコミュニケーターとして、携帯電話と共に持ち歩いて持ち歩いてもらえる存在にした。Eビジネスという言葉が出てくると、MicrosoftのExchangeやIBMのLotus Dominoなどに対応するモバイルプラットフォームへと成長させた。PDA・携帯電話・BlackBerryの3つを統合したHandspringのTreoの登場&大ヒットで、またまた危機を迎えたが、RIMも携帯電話を統合したスタイルのBlackBerryを投入して、何とか踏みとどまっている。

    これまでのBlackBerryデバイス。QWERTY配列の小型キーボードで草分けだったが、一般ユーザー向けにはデザインが渋すぎた……

    ユーザーの間でBlackBerryは「一度使ったらやみつきになる」と評価が高い。時間が空くと必ずBlackBerryを操作している人を指す「Crackberry」という言葉が誕生するほどだ。ただ、ビジネスマン中心のため、利用者数は推定で32万~33万人程度と意外と少ないのも事実。原因として、企業ユーザー向けのデザイン、300ドル~500ドルと高いデバイスの価格などが指摘されている。

    8月末に行われたMTV Music Awardで、OutkastのAndre 3000がスピーチの中で、思いついたアイディアや歌詞などをすべてBlackBerryに打ち込んでいることを明らかにした。自分のことを冗談めかして"Crackberry"と呼んでいたが、ビジネスマン御用達のBlackBerryを自分のようなミュージシャンが使っていることに対する皮肉も少し混じった言葉だった。

    さて、7100tは、Andre 3000が持っていても冗談にはならないようなデバイスに仕上がっている。外観は、大きめのディスプレイを備えた携帯電話である。BlackBerryの命とも呼べるQWERTY配列のキーボードをあきらめたように見える。だが、RIMは「SureType」という新技術で、携帯電話サイズにQWERTY配列のキーボードを詰め込み、なおかつ、これまで以上に快適な入力を実現している。

    SureTypeは20キーによる入力方式で、ひとつのキーに「QW」「ER」というように2つの文字が配されている。7100tは約3万5,000語を収めたデータベースを内蔵しており、例えばCATという言葉を入力するには「CV」「AS」「TY」のキーを押す。すると、SureTypeが入力文字を"CAT"と判断して変換してくれる。半信半疑で試してみたのだが、これが意外なほどに正確。キーの場所を覚えるまでは手間取るが、キー配置に慣れると片手のブラインドタッチで手早い入力が可能になる。プチプチした従来の33キーのQWERTY配列キーボードよりも、ひとつひとつのキーが大きいだけに押し間違いも少ない。

    "PCWEB"のように辞書に含まれていない文字でも、一度入力して変換すると変換候補の上位に加えられる。また、大文字やピリオドなどを飛ばして入力しても、ちゃんとした文章に仕上げてくれる。

    携帯電話機能のほか、Eメール、SMS、インスタントメッセージ(AIM、IRC、Yahoo!)に対応。ディスプレイは240×260ピクセルと小さいが、Word、Excel、PDFファイルを開くことができる。プロトタイプだったデモ機では試せなかったが、内蔵ブラウザで画像を含めたWebページの閲覧も可能だという。価格は200ドル~300ドルで、リベートを上手く使えば199.99ドルで購入できる。

    カメラを搭載していないが、米国ではコミュニケーション機能の方が重視される。むしろ厳選された機能と優れた入力技術を備えたスマートフォンが200ドル半ばで登場することの方が面白い。個人的には96年に手書き技術「Graffiti」を備えたPalm Pilotが登場してPDA市場を開拓したときぐらいのインパクトを、米国のスマートフォン市場にもたらすのではないかと期待している。

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