【コラム】

シリコンバレー101

92 論争を呼ぶRealのハーモニー、DRM変換がもたらす波紋

    Yoichi Yamashita  [2004/08/04]

    iPodとiTunesを愛用していているのに、iTunes Music Storeからはほとんど音楽を買っていない。これまで買ったのは同ストア限定の曲ばかりで、数えてみたらオーディオブックの方が多かった。

    音楽を買わない理由のひとつは音質である。128kbpsのAACで1曲99セントならば、好きなアーティストはCDを買うし、微妙なアーティストなら中古盤を探す。CDでは手に入らない曲、または1曲だけ欲しいのならば、Listen.comのRhapsodyを使う。CDへの書き込みのみのサービスだが、音質が豊かで、しかも1曲79セントだ。

    CDへの書き込みを面倒と言う人は多いが、実はそれもRhapsodyを選んでいる理由のひとつである。iTunes Music Storeで購入した曲は、iPodまたはiPod miniにしか転送できない。個人的にはジムやジョギング用にフラッシュメモリー内蔵型のプレイヤーも使っているので、iTunes/iPodを使っていてもMP3で統一している。だから、比較的音質がよく、さまざまな形に変換しやすいのがベスト・ソリューションなのだ。付け加えれば、この先もAppleが音楽を楽しむために最も優れた製品とサービスを提供してくれるとは限らない。柔軟性は肝要である。一度、ATRACに完璧に統一し、そして3カ月で後悔した過去の自分を教訓になっている。

    このようにデジタルオーディオでは悩みのつきない毎日を送っているので、RealNetworksがDRMを変換するという「ハーモニー・テクノロジー」を発表した時は、いち消費者として「実に面白い」と思った。もちろん、その技術がReal Music Storeで販売する楽曲をあらゆるプレイヤーに対応させるだけで終わってしまうのなら、全く逆の評価をする。また、ハーモニー・テクノロジーを実現する上で、DMCA(デジタルミレニアム著作権法)が絡むような問題も浮上している。だが、オンラインストアとオーディオプレイヤーの組み合わせが消費者に与える悪影響を、同社が強く指摘している点は評価したい。

    そこで早速、ハーモニー・テクノロジーを搭載したRealPlayer 10.5のベータ版をダウンロードしてみた。機能的な評価を下せる段階ではないが、DRM変換というアイディアがオンラインストアに与える影響だけでもいち早く体験してみたかったのだ。

    インタフェースは、RealPlayer 10からほとんど変化がなく、デバイスの追加の部分がハーモニー・テクノロジーに変更されて、さまざまなデバイスを登録できるようになっている。現在、米国の家電チェーンやパソコンショップで販売されているポータブル・オーディオプレイヤーは全てカバーされているようだ。

    手持ちのiPodとMuvo TXを登録、Real Music StoreでMaroon 5のアルバム「1.22.03. Acoustic」から4分15秒の「This Love」を購入した。同ストアのフォーマットは192kbpsのRealAudioである。これまで利用したことがなかったが、買収したRhapsodyの技術を導入しているのか、音質はなかなか優れている。

    RealPlayerからiPodに転送する際、変換にかかった時間は36秒。変換したファイルは保存されるため、2度目からは数秒で転送が終了する。また、WMAへの変換は1分10秒だった。ただ、Muvo TXではうまく再生されたが、iPodに転送した曲は再生されず、現在、サポート窓口にレポートをして原因を究明中である。

    Real Music Storeの192kbpsのファイルを聞くと、音質という点では同ストアで買い続けたくなる。しかし、iPodユーザーだから、iTunes Music Storeを使わなければいけない。なんとなく解せない気分だ。iPodを使うためにiTunes Music Storeが最も便利という程度なら許せるが、しばられてしまうというのはどうだろう。消費者の感情としては、「ポータブル・オーディオプレイヤーは自由に選択できるようになるべき」というReal Networksの主張に深くうなずいてしまう。

    だからと言って、DRM変換が解決策なのだろうか? BeatlesのフルセットをレコードとCDで持っている世代だからかもしれないが、購入するならばしっかりした音がほしくなる。正直、圧縮された音楽を再変換して使い回すソリューションには抵抗があった。""消費者のため……"と言うのならば、再変換することなく、オーディオプレイヤー側が主要なファイルとサービスに対応できるようになるのが理想的に思える。ただ、それが全く現実的に思えないのだから、「Beatlesのアルバムをオンラインストアで揃えるような日は、当分やってこない」というのが今回の結論である。

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