【コラム】

シリコンバレー101

85 テクノロジー業界のオールスター戦にも改革を……

    Yoichi Yamashita  [2004/06/15]

    米大リーグのオールスター戦開催まで1ヶ月を切った。今月末に締め切られるファン投票もラストスパートである。

    大リーグでは、昨年からオールスター戦で勝ったリーグ側のチームに、その年のワールドシリーズでホーム・アドバンテージの権利が与えられるようになった。このシステムが導入された原因は2002年のオールスター戦だ。延長11回まで同点でもつれた末、交代選手がいなくなって引き分けとなってしまった。この試合は、両リーグのプレイヤーが好プレイを競い合うような雰囲気になった上に、公式戦さながらの白熱した試合展開。観戦していた4万2,000人近いファンからは「試合の決着をつけろ」の大合唱となったが、残念ながらファンの願いは聞き入れられなかった。

    この試合によって、それまでの「オールスター=お祭り」というイメージが払拭された。最高の選手による最高の勝負を体験した後では、単なる"お祭り"には戻れない。そこで、ホーム・アドバンテージの権利をかけた戦いが導入されたのだ。ベースボールファンにはうれしい制度だが、選手には少々不評だ。「オレたちは、いつでも全力でプレイしている」というのが、彼らの言い分である。

    ただ、これで緊張感のあるゲームが再現されるかというと疑問が残る。オールスター戦が"お祭り"になっていたのは、チームよりも個を優先した選手選びにも問題があった。もし真剣勝負を演出するのならば、セットアッパーやユーティリティプレイヤーなどチームとしての機能に欠かせないタイプの選手も選ぶべきだと思う。例えば、チーム作りは監督中心ではなく、前年にもっとも素晴らしいチームを作ったゼネラルマネージャーに任せてはどうだろう。少々シブいラインナップになるだろうが、最強のチームのぶつかり合いを楽しめそうだ。

    と、延々とオールスター戦の話をしたのは、テクノロジ業界でも6月6日~8日にかけて南カリフォルニアで、「D:All Things Digital」というオールスター戦とも呼べそうなカンファレンスが開催されたためだ。出演者はマイクロソフトのビル・ゲイツ会長、アップルのスティーブ・ジョブズCEO、HPのカーリー・フィオリーナCEO、デルのケビン・ロリンズCEO、オラクルのラリー・エリソンCEO、グーグルのエリック・シュミットCEO等々。彼らが一カ所に集まって、デジタルの将来について語るのだから、"そこから何が飛び出すか"という期待が高まった。

    だが、結果は人気選手だけが集まったオールスター戦と同じ。4番バッターばかりが集まったために、誰がオールスターチームの4番に座るかという争いに終始した感がある。オラクルはマイクロソフトを挑発し、マイクロソフトはグーグルを意識する。デルとHPは、それぞれ"ビジネスの効率性"と"R&D重視"を主張しあって対立。それぞれの言い分は目立ったが、カンファレンス全体としては「底を抜け出して、今後の回復に意欲」という感じのぼやけたまとまり方で終わってしまった。観客が期待したカリスマCEOそろい踏みの効果、例えば、アップルとマイクロソフトがデジタル音楽サービスの接点を示してくれるというようなマジックは起きなかった。このような素晴らしいカンファレンスが実現(今年で2回目)したのに、この結果は残念……。

    「D」が終わった翌日、シリコンバレーに大きな功績を残したCEOのひとりであるバーニー・ボンダーシュミット氏が亡くなった。同氏は、60歳の時にザイリンクスを共同設立した遅咲きの経営者である。というのも、長年RCAに務め、普通ならリタイアを考える55歳になって、起業のために大学院に戻ってMBAを取得した。そして、ザイリンクスで"ファブレス"というビジネスモデルを築き上げた。もちろん、当時のザイリンクスには工場を建設するだけの余裕が無かったという事情もあったが、同氏のアイディアはザイリンクスだけではなく、半導体業界全体に開発から生産の過程の効率化とコスト削減という大きな変化をもたらした。

    ボンダーシュミット氏自身は控えめな人物で、その功績とは対照的に、同氏がCEOとして脚光を浴びることはほとんど無かった。それだけに、同氏の半導体業界に対する貢献、その死を惜しむ数々のコメントを読むと、逆に90年代半ばから続く、CEOをヒーローのように扱う傾向に疑問を感じずにはいられない。

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