【コラム】

シリコンバレー101

71 ファイル交換のビジネスモデルはラジオ放送!?

    山下洋一  [2004/03/02]

    サンフランシスコで開催されたMusic Summit Westで、米Electronic Frontier Foundation(電子フロンティア財団、以下EFF)が音楽ファイル交換を合法化するためのライセンス・プランを提案した。

    仕組みはとてもシンプルである。まず交換される楽曲の著作権を管理する非営利団体を設立する。ユーザーはファイル交換に対して適当な額を定期的に支払い(ホワイトペーパーでは月5ドルぐらいとなっている)、著作権管理団体は徴収されたサービス料を楽曲の人気に応じて著作権保持者に分配する。サービス料金を支払っている限り、ユーザーは自由に楽曲を交換できる。EFFは、これを「Voluntary Collective Licensing」と呼んでいる。

    このライセンス・システムのモデルになったのは20世紀前半のラジオだそうだ。ラジオで音楽が流され始めたとき、当時の作曲家は海賊行為と受け取って、音楽放送を中止させるための訴訟を起こした。しかし、一度音楽放送を耳にした聴取者から根強い反対の声が上がったため、作曲家たちはASCAP(米作曲家作詞家出版者協会)という著作権管理団体を設立。使用料を徴収することで、聴取者、ラジオ局、作曲家、すべてが満足できる解決策を生み出した。

    EFFが訴えるのは、作曲家たちがASCAP設立にふみ出したような、ユーザーのためのソリューションである。今日のファイル共有問題では、CDの売上げは迷走し、ファイル共有技術は有効に活用されず、そしてユーザーは全米レコード協会(RIAA)からの訴訟におびえている。ユーザー、ファイル共有サービス、レコード会社のいずれも満足している状況ではない。ファイル共有をライセンス化すれば、ミュージシャンや著作権保持者には公正な報酬が支払われ、ファイル共有にも繁栄の道が開ける。ユーザーはAppleのiTunes Music StoreやNapsterを大幅に上回る豊富な楽曲を安心して交換できるようになるとしている。

    EFFの知的所有権専門弁護士Fred von Lohmann氏は「Voluntary Collective Licensingは音楽産業の目的と音楽ファンを結びつけるものだ。より多くの人が音楽を共有することで、より多くのアーティストや著作権保持者が作品に対する報酬を得られる」と述べている。

    ファイル交換のライセンス化は、決して新しいアイディアではない。Napsterもサービスを停止した後、同様のアプローチを検討していた。ただ、大手レコード会社が関心を示さなかったため、実現にはこぎつけなかった。

    その後、iTunes Music Storeの成功やRIAAによるファイル交換ユーザー訴訟があり、ライセンス化に対する見方が変化しているようだ。知的所有権問題専門の弁護士やデジタルエンターテインメント関係者などの中には、Voluntary Collective Licensingが音楽産業の将来的な方向であると認める人も出てきている。

    ただ、RIAAはライセンス化に対して依然として消極的。Music Summit Westにパネリストとして参加したRIAAの対政府関係部門の副社長であるDavid Sutphen氏は、ファイル共有サービスでは曲の価値が正確に反映されないと指摘していた。「月5ドルですべての音楽が手に入れられるのなら、『Ice Ice Baby』(Vanilla Ice)とBeatleのカタログの価値が同じということになってしまう」(Sutphen氏)。

    一方、流通にボトルネックを抱えるインディレーベルは、Voluntary Collective Licensingに強い関心を示している。インディレーベル数社が集まって、独自にファイル共有のライセンス化を取り入れるための団体を作ることも検討され始めている。

    Voluntary Collective Licensingの最大のメリットは音楽そのもので勝負できる点にある。根強いファンが存在するミュージシャンならば、個人レーベルで音楽ビジネスを成立させることも可能。EFFは大手レコード会社との共存共栄の道を探っているが、RIAAの反応を見ていると、逆にレコード会社の一方的な契約に不満を抱えるミュージシャンの独立独歩を支援する道になりそうな雰囲気である。

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