【コラム】

シリコンバレー101

70 フラッシュモブで、目指せスパコン・トップ500

    山下洋一  [2004/02/25]

    以前、ここでも取り上げたことがあるフラッシュ・モブ。電子メールやインスタントメッセージなどを通じて連絡を取り合った群衆が、あらかじめ決められた場所で一斉に申し合わせた行動を取る。行動そのものにあまり意味はない。その場所に偶然居合わせた人たちが驚くのを見て楽しむ程度だ。その驚く顔がフラッシュモブの成果と言える。

    昨年末には「パーティ列車」というフラッシュモブがあった。地下鉄の特定の車両を指定して、一斉にパーティ会場にしてしまう。食べ物と飲み物を持ち込むだけではなく、デコレーションも施して、ちゃんとしたパーティ会場に変身させる。実際、ドアが開くと、そこはミラーボールが回転する80年代風のディスコという状態になっていたのだが、あまりにも騒ぎになりすぎて、解散よりも早く駅職員に追い出されていた。

    ただ、最近では無目的な行動や大騒ぎするだけのフラッシュモブは飽きられてきたというか、よほど奇抜なアイディアでなければ、人が集まらなくなっている。このまま消えていくような雰囲気もあるのだが、久々に参加してみたいと思わせるフラッシュモブが現れた。サンフランシスコ大学で4月3日に実行される「FlashMob I」である。

    これは同大学の体育館にパソコンを持ってきてもらい、それをつなぎ合わせてスーパーコンピュータを構築しようという試みだ。計画を進めているのは、同大学でスパコンを研究している大学院生のグループで、スパコンのトップ500リスト入りが目標。参加マシンやシステム全体の効率性次第だが、およそ100台が集まれば目標達成の可能性が出てくると見ている。

    開催時間は午前10時から午後4時まで。会場でKnoppixのCDが配布(事前にISOイメージをダウンロードすることも可能)されるので、持ってきたパソコンをCDで起動してネットワークにつなげるだけ。何もインストールする必要はないし、ハードディスクに触れられることもない。ある程度パソコンがそろったところで、Linpackでベンチマークを取り、うまく行けばトップ500入りの期待がふくらむ。

    今回はトップ500入りが目標であり、また供給電力にも限りがあるため、参加パソコンの仕様には最低限の要求がある。CPUは1.3GHz以上で、RAMが256MB以上。CD-ROMドライブと100base-Tが必要。終了後はスパコンを一大LANパーティーに転じる計画もあるので、これだけのスペックのマシンが集まるのなら、ネットワークゲームを目的にやってくる人もいるかもしれない。

    こんな数時間だけのスパコンを誕生させて何の意味があるのかと思う人もいるだろう。当然ながら、計算してこそスパコンが存在する意味がある。ただ、今回は「フラッシュモブ・コンピューティング」というアイディアの実験なのだ。

    主催者は、規模の小さい研究所や企業、または個人が低コストで大きな計算力を利用する方法として、フラッシュモブ形式のスパコンというアイディアを思いついた。その可能性を探るのが、今回の「FlashMob I」である。イベントでは、フラッシュモブのような宣伝方法で参加者を募ってどの程度の計算力が得られるか、会場でのセットアップにかかる時間、さらに熱の問題などが確認される。

    ただし、今回の試みで計算力が証明されたとしても、フラッシュモブ・コンピューティングの成否を占うのは「FlashMob II」になるだろう。冒頭で述べたように、フラッシュモブという行為を成功させるのは意外性である。驚きのないフラッシュモブには誰も参加しない。今回はスパコン・トップ500という目標があるから、かなりの人が集まると期待できる。「FlashMob I」で高い計算力が記録されれば、例え短期間という制約があっても、グラフィックス処理に使いたいという人が出てくるだろうし、物理的な研究の解析に使いたいという人もいるだろう。だが、どのような利用方法でもフラッシュモブ・コンピューティングが成立するわけではない。人を集められなければ計算力は存在しないのだ。

    だから、フラッシュモブ・コンピューティングというアイディアは実用性のない、お祭り騒ぎで終わってしまう可能性もある。逆に考えると、実用的に成立させられる方法が提案されれば、フラッシュモブ・コンピューティングは奇抜なアイディアが連発されるカテゴリーになる可能性がある。

    フラッシュモブ・コンピューティングのサイトでは「FlashMob I」後、利用モデルを討論する場を設ける。そこでどのようなアイディアが提案されるかが、フラッシュモブ・コンピューティングの成否の分かれ道となりそうだ。

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