【コラム】

シリコンバレー101

69 なぜ欧米ではスマートフォンなのか?

    山下洋一  [2004/02/17]

    ウチには使わなくなったガジェットを投げ込んでおく箱がある。使用期間1~2カ月程度でお蔵入りということも少なくないので(というかほとんどなので……)、開けるたびに悲しい気分になってしまう。だから、思い出となった製品は上に、そして支払った金額が今でもはっきりと思い出せるような新しい製品は底に……となってしまう。で、今、最深部に潜んでいるのがAbacusのSPOT対応時計である。

    熟成されていない製品は買っちゃいけないと思いながら、ローカルショップで売り始めたのを発見して思わず手を出してしまった。サービス契約にもコストがかかるし、時計は思っていたよりも大きい。時計のデザインはカジュアルなのに、サービスの内容はビジネス寄りというのも矛盾しているように思える。次から次に不満点が出てくるが、それでも使っていると意外に重宝して、月々4ドル程度なら「支払ってもいいかな!」と思えるようになってきた。特にロケーションベースのサービスは便利で、この分野のチャンネルが増えれば面白くなりそうだ。それでもお蔵入りとなったのは、短すぎる電池寿命が決定打だった。元来、毎日欠かさず充電できない性格で、携帯電話とiPodだけは電池切れで何度も痛い思いをしながら、こまめに充電する習慣がついた。が、SPOT時計には「何で時計を……!」の思いが強く、面倒をみるのがだんだんつらくなってきて……。結局、放置しておいても勝手に正確な時間を刻み続けるソーラーバッテリー付き電波時計に戻ってしまった。

    ガジェットの墓場とも言える箱の中でもっとも多いのはPDAである。いつも「実用レベルではない」という結論に達するのに、新しい機能が付加される度に「今後こそは」と思ってしまう。CLIE Organizerもかなり危ない気分だ。

    そのPDA市場ではPalm OSを開発するPalmSourceが、スマートフォンに注力する戦略を打ち出した。一昔前なら「スマートフォン……?」と思われただろうが、Treoのヒットが展望を変えたのだろう。頭から否定する声はほとんど聞こえてこない。

    実際、周囲で「Treo 600」を使っている人はほとんどが満足しているようだし、最近では女性を中心にSidekickユーザーも増えてきた。携帯電話市場全体から見れば、まだまだユーザー数は少ないが、モバイル端末のハイエンド市場ではスマートフォンと呼ばれるPDAと携帯電話のハイブリッド製品が着実にユーザー層を広げている。

    スマートフォン・ユーザーを観察していると、携帯電話の買い換えというよりは、PDAでいろいろと試してきた人が行き着いた先というケースが多い。つまり、スマートフォンという名前から連想される高機能な携帯電話ではなく、PDAの進化形という印象が強い。だから、PalmSourceのスマートフォン路線は理にかなっていると思う。

    完成度、値段ともに高すぎるSony EricssonのP900

    CESでSymbianを搭載したSony Ericssonの「P900」を初めて使ってみたが、これまた物欲を刺激される端末だった。特筆すべきは入力のし易さである。キーボードを開いて、大きな画面にさらさらと書き込むだけで、しっかりと認識してくれる。PIMソフトの使いやすさも秀逸だった。難を言えばマルチメディア機能も充実しているのに、活用するにはアプリケーションを追加する必要があること。バッテリーの駆動時間も一日中楽しむためには不足する。加えて、800ドルという値段である……。

    P900を使って思ったのは、本来、シンプルなアルファベットはペン入力の方が快適だということ。だからこそ、欧米では大きな画面を備えたスマートフォンが好まれているのだろう。

    では、なぜ通信機能を備えたPDAが今ひとつ売れなかったのに、Treo 600やP900が好評なのか?

    おそらく携帯電話として利用されることを前提に作り込まれているか、否かの違いだと思う。ほとんどのユーザーにとって欠かせない機能は携帯電話であり、そこにいかに上手く他の機能を組み合わせるかが成否のポイントになる。実際、昨年末にNokiaのN-Gageが大安売りされ、それをきっかけに仲間内でN-Gageトーナメントが開催できるぐらい一気にN-Gageユーザーが誕生した。だが、携帯電話として使いにくく、年明けにはトーナメントが消滅していた。

    PalmSourceがスマートフォンに力を入れる背景には、携帯通信事業者の取り組みもあるだろう。これまでOmniskyやYadaYada、Ricochetなど、数多くのPDAで利用できるワイアレスサービスが登場したが、一部で熱烈なファンを集めるだけで短期間で消えてしまった。逆に現在の携帯通信事業者は、安定した携帯電話市場を土台に着々とその勢力を広げている。例えば、T-MobileとAT&T Wirelessがホットスポットのローミング契約を交わし、さらにT-MobileがケーブルサービスComcastと提携した。ユーザーがひとつのアカウントだけで多様なホットスポット・サービスを利用できるという、理想的な環境を実現するためのキープレーヤーになろうとしている。

    ただ、変化がめざましくて、乗り換えのタイミングに困るのも事実。昨年秋のComdexでは、GPRSサービスの開始をきっかけに「そろそろスマートフォンが買い時だなぁ」とプレスルームで盛り上がっていた。それがCESでは誰かが「P900が次期モデルでWi-Fiに対応するかもしれない」という噂を聞きつけて「800ドルも出すんなら、もう少し待つか……」という雰囲気になっていた。

    関連記事

    新着記事

    特設サイトの情報

      人気記事

      一覧

      イチオシ記事

      新着記事

      特別企画

      マイナビニュースマガジン