【コラム】

シリコンバレー101

68 P2P裁判第2ラウンド、1割の合法利用にもフェアユース!?

    山下洋一  [2004/02/10]

    昨年末に加入者100万人を突破したTiVo。今や米DVR市場で、事実上の標準とも呼べるような存在になっている。TiVoの成功は、ハードディスクでテレビ番組を録画するというパソコン畑に属していたTV視聴の方法を、リモコンひとつで誰もが操作できる家電製品に上手くまとめた点にある。

    ただし、TiVoがDVR市場を開拓していた時期には、ReplayTVというライバルがいた。特にSONICblueが販売していたReplayTVシリーズは、インターネットを通じて録画した番組をReplayTVユーザー同士が交換できる機能を備えていた。同モデルがファイル交換ユーザーの取り込みを狙っていたのは明らかで、著作権をめぐって3大ネットワーク局から提訴される騒ぎに発展した。一方、TiVoはというと、"エンドユーザーとコンテンツ所有者、双方のニーズを満たすこと"を目標に、CMスキップや録画番組共有などの機能は組み込まずに、DVR独自のタイムシフティング機能や予約録画機能だけをアピールした。機能的にTiVoは見劣りしていたが、最終的に消費者に選ばれたのはTiVoである。

    さて、「ファイル共有ソフトの配布元には、著作権侵害行為に対する責任があるか」を問う控訴審が一段落した。口頭弁論で争点となったのが1984年のBetamax訴訟である。

    Home Recording Rights Coalitionは、Betamax訴訟20周年をきっかけに、改めて消費者のフェアユースの重要性を訴えている。今の焦点はDMCAだが、Betamax訴訟を拡大解釈するような動きにも目を光らせている。

    Betamax訴訟は、複製を作成できるVCRの製造・販売は著作権侵害に当たるとして、米映画会社がBetamaxのメーカーだったSonyを訴えた裁判である。一審はSonyの勝利、二審は映画会社の主張が認められた。そして、最高裁は「海賊行為などに使われる可能性のある技術でも、著作権侵害にあたらない相当量の利用が認められる限り、その技術を禁ずることはできない」と判断。以後、消費者のフェアユースを論じる場で、その判例が参照されるようになった。

    今回、Betamax訴訟を持ち出したのはエンターテインメント企業側である。ファイル共有サービスでやり取りされるコンテンツは90%が違法だと指摘。また、Sonyは消費者の利用方法をコントロールすることはできなかったが、ファイル共有ソフトは著作権付きコンテンツの管理が可能だと主張。GroksterやStreamCastなどのファイル共有サービスは、Betamax訴訟で認められたフェアユースに当てはまらないとしている。

    理路整然としたエンターテインメント企業側の主張に、John Noonan判事は思わずなるほど……とは思わなかった。逆に著作権侵害に当たらない10%の方に着目し、Betamax訴訟で認められた"相当量"である可能性を指摘したのだ。

    このNoonan氏の判断には素直に拍手を送りたい。Betamax訴訟で認められたフェアユースは消費者のために認められた権利である。たとえ10%であってもP2Pが有用に使われているのならば、その可能性は守られるべきものなのだ。

    では、これで訴訟のターゲットとなっているGroksterやStreamCastが訴訟を勝ち抜けるかというと、逆に多くのP2P企業にとって10%が重しになるかもしれない。

    Betamax訴訟でSonyの主張が認められたのは、複製が作れる点ではなく、フェアユースの範囲でVCRを使った新たなTV視聴の可能性をアピールしたからだ。結果的に、Sonyの主張は映画業界にも大きな利益をもたらすことになる。DVR市場でTiVoが勝ち残れた理由も同様だ。むだな騒ぎは起こさず、フェアユースにターゲットを絞ったDVRのビジネスモデルを作り上げた。どちらも無に等しい場所から新たなビジネスを組み立てたのが成功につながった。同様のことがP2Pソフト作成企業にも求められる。

    10%のフェアユースを広げる試みは、にわかに活発になり始めている。例えば、フランスのカンヌで開催された国際音楽見本市MIDEMでは、メジャーレーベルのひとつEMIがP2P利用の可能性を訴えていた。すでにEMIは、P2Pサービスでライセンス付きの楽曲を提供するWippitと楽曲提供で契約している。Wippitは、年間49ドルのメンバー料金を支払えば、ネットワーク上の楽曲を自由にダウンロードできるというサービスだ。EMIとの契約をきっかけに、他のメジャーレーベルとの契約にも意欲を見せている。他にもLindows.comがCDで起動できる「Lindows Live」を主要なP2Pサービスで配布するというニュースがあった。Lindows Live配布に利用していた帯域を浮かすことで、数万ドル単位のコストダウンにつながるそうだ。

    ただ、残念ながら、今のところサービスのインパクトという点では今ひとつ……。ReplayTVを寄せ付けなかったTiVoのように、P2Pの海賊行為イメージを払拭するような一般消費者向けのサービスがそろそろ登場してほしいところである。

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