【コラム】

シリコンバレー101

48 テクノロジは21世紀のデモクラシーをサポートできるか?

山下洋一  [2003/08/26]

高校のとき、好奇心にかられて地元の衆議院選候補の立候補宣言集会に参加したことがある。選挙権を持っていない未成年だったし、夜の集会だったから会場に入れてもらえないかと思ったら、意外とすんなり入れて、自由に飲み食いしたあげく、最後に万歳三唱をして家に帰った記憶がある。今の自分では考えられないが、当時の自分は「政治家がどうやって人心をつかむのか?」を本気で知りたくてのこのこ出かけたのだ。でも、3時間及ぶ講演を聴いても自分が1票を投じたくなるような言葉は見つからず、その割に会場内は集団心理の盛り上がりで、かなりこわかったのを覚えている。

自分の1票がどのように役立つのか。アメリカで生活している今はさらに分かりづらくなっているような気がする。アメリカの選挙はシンプルに思えるが、政治の方がむずかしい。地域的な問題に加えて、人種、宗教、貧富の差などがからんでくる。複雑になりすぎるためか、選挙に対して無関心な人は日本よりもずっと多いように感じる。

米国では11月第1週の選挙の日を中心に選挙シーズンとなる。大統領選がない年はそれほど盛り上がらないのだが、カリフォルニアは知事リコールのおかげで、大統領選なみの関心を集めている。と同時に、投票システムもどうするかが問題となっている。次の大統領選までに解決すれば良かったのが、いきなり世界的な注目を集める選挙投票になりそうな雰囲気。ちなみにシリコンバレーの中心であるサンタクララ郡は次世代的なシステムを導入しているように思われがちだが、前回の大統領選で問題となったフロリダ州のパンチカードとほぼ同様のおそろしく古くさいシステムで、かなり焦らないとまずい状況だ。

現在、米国の選挙ではDirect Recording Electronic(DRE)というタッチパネルに触れて直接投票できるデバイスが利用され始めている。だが、スタンフォード大学コンピュータサイエンス学部のDavid Dill教授がシステムのセキュリティの欠点、誤作動の可能性などを指摘してからは、その信頼性に疑問符がついている。同教授は投票の証明を残すことが不可欠であると主張しており、電子投票装置でも投票内容を紙に印刷する機能を備えたものを推奨している。問題が起これば、紙の方を数え直せる仕組みだ。本当にそんなに電子システムは信頼できないのかという声もあるが、今月初めに行われたハッカーの集会DefConでも、電子投票システムを不正動作させる方法がトピックのひとつとなっていた。

最初に書いた通り、アメリカの政治は読み解きにくい。2000年の大統領選挙ではパンチカードのシステムが問題になったが、実際には押し間違いよりも無関心に投票した人の方がはるかに多かったという指摘がある。そこで、Accelerated Democracyというサイトが、デモクラシーという観点からテクノロジを違う方向に利用する方法を提案し始めて話題となっている。

同サイトでは4つのシナリオを用意している。(1)投票エージェントソフトの導入。これはパソコンに常駐させて、そのユーザーのWebブラウジングやチャットの内容を記録し、そこからそのユーザーに最適な候補を勧めてくれるというソフトだ。日頃、立候補者の発言を細かくチェックしていなくても、ある程度しぼり込んでリサーチできるようになる。(2)ロケーション・ベース投票。例えば森林を切り開く住民投票を行う場合、新たな公園や道路などが本当に必要なのかを実際に現地に行って確かめる必要がある。そこで、現地に一定の時間滞在した人だけに投票の権利を与えようというシステムで、滞在時間を携帯電話などのワイアレスデバイスで証明する。(3)選挙権行使システム。無関心な1票よりも、選挙に関心を持った人の1票を重んじようというシステム。例えば新聞のデータ欄などにコードを設け、データを読んだ人がインターネットでコードを入力すればポイントが貯まっていく仕組み。(4)トラッキング。選挙後、当選した政治家が有言実行の人であるかを確認するシステム。

実現するのはまず不可能というようなアイディアばかりだが、荒唐無稽だと切り捨てられるものでもない。1票の重みを軽んじる方向に進むテクノロジを否定するという点ではDill教授と同じである。

VerifiedVoting.org(David Dill氏が運営するサイト)
http://www.verifiedvoting.org/

Accelerated Democracy
http://www.accelerateddemocracy.net/

バックナンバー
http://pcweb.mycom.co.jp/column/svalley.html

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