【コラム】

シリコンバレー101

23 オンラインゲームでの反戦デモと言論の自由

山下洋一  [2003/02/18]

日曜日にサンフランシスコを含めて世界中で大規模な反戦デモが行われた。米国でも反戦の機運が少しずつ高まっている。だが、1カ月前はどうだっただろう。1月18日にもイラク攻撃に反対する大規模なデモがワシントンDCとサンフランシスコで実施されたが、国民のほとんどはイラク攻撃に疑問を抱いていない状態だった。そのような中で、ベトナム戦争以来の大人数が反戦デモに集まったのは、正直に言って予想外の出来事だった。成功の要因は、デモを指揮したAct Now to Stop War and End Racism(ANSWER)が少数派を効率的に集めるために、WebとEメールによるコミュニケーションを存分に活用したことだ。ANSWERのネットワークに入っていれば、交通手段や泊まる場所がなくても、またはお金がなくてもデモに参加できる情報を集められたのだ。

ネットワークは少数派にとって心強い武器なのだろう。イラク攻撃が現実的になるにつれて、「Sims Online」や「There.com」などのバーチャルライフ・ゲームの中で反戦を説く人が出てきている。しかも、少しずつ輪が広がって、反戦運動に発展し始めているのだ。「ゲームの世界だから話にならない」と思うかもしれないが、米同時多発テロ直後、オンラインゲーム「EverQuest」「Anarchy Online」のプレイヤーたちはゲームを一時中断して、バーチャルな世界でろうそくに火を灯して犠牲者を追悼した。ゲームの世界の中には追悼碑も作られている。イラク問題に限っては、ニュースを見るよりも正確に反戦支持者の言葉を知ることができるかもしれない。

ユーザーの結束はオンライン・ゲームの醍醐味の一つだが、ゲームメーカーにとってユーザーが意図しない方向で団結するのは好ましくない。例えば、Sims Onlineはゲームの中で商品を宣伝するアドバゲーミングに積極的なゲームだ。マクドナルドがスポンサーとなっており、バーチャルの世界でもマクドナルドのハンバーガーが登場する。だが、スポンサー契約発表直後、ゲーム内のタイアップ広告を嫌うプレイヤーが、「ゲームの言いなりにならずに、しっかりと現実を反映させよう」と言い出した。「マクドナルドの前でピケを張って、マクドナルドの食べ物に対する考えを広めよう」、「マクドナルド製品を食べた後に倒れる、または疲れたふりをするなど、自分の感想をしっかりとジャスチャーで示そう」などと勧めている。ここまでくると不買運動、いや、いやがらせと言った方がいいかもしれない。しかも、広告主の製品に対して……。

ゲーム管理者は、こういったプレイヤーを削除することになる。オンラインゲームの世界はテーマパークのようなものなのだから、入場者はパーク管理者に従うべきというのが、その言い分だ。だが、バーチャルの世界での言論の自由はどうなるのか。マクドナルド問題はそれほど広がらなかったが、反戦キャンペーンでは言論の自由を指摘する声が出始めている。この先、宗教も生まれるかもしれない。次の大統領選では、Sims Onlineで活動する泡沫候補も出てくるだろう。ゲームメーカーの規制に対して、逆にプレイヤーが訴訟を起こす可能性だってある。

「ゲーム=子供ユーザー」という構図で、オンラインゲームをテーマパークと言うのは簡単だ。そのせいか、今プレイヤーのパーソナリティを反映できるゲームというのは、感覚的にはディズニーワールドにある夜間大人限定エリア「プレジャー・アイランド」という程度の刺激である。「テーマパークでは解決できないこと」にもっと真剣に取り組んで、良くも悪くも論争を引き起こすソフトが出てくると、オンラインゲームは大きく進歩すると思うのだが、いかがだろうか。

ANSWER
http://www.internationalanswer.org/

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