【コラム】

シリコンバレー101

20 容認できなくなってきた迷惑メール、第1回スパム会議開催

    山下洋一  [2003/01/21]

    今から2年ぐらい前、米国ではテレマーケティングが加熱した時期があった。留守電をセットして1日家を空けておくと、長距離電話サービスや雑誌の定期購読の勧誘など20件ぐらいのメッセージが残されている。自宅の電話ならば留守電にしておけば問題がないが、仕事に使っている電話だと留守電という訳にもいかない。かといって全ての電話を受けていたら仕事にならない。こういったテレマーケティングに対する苦情が多かったらしく、それから1年ぐらいの間にほとんどの地域で、テレマーケティングを禁じる、電話を通じた勧誘は本人の承諾を得たサービスに限るなどの対策が講じられた。

    これと同じような問題が今、Eメールで起こっている。米国だとスパムメールと呼ばれる迷惑メール。新しい問題ではないが、ここに来て問題が深刻化している。Ferris Researchによると、2002年に米国企業がスパムメールから受けている被害は89億ドルに達するそうだ。実際、私の場合も、1.仕事用、2.知っている人用、3.その他という3つのメールアドレスを使い分けているが、「その他」のアカウントには1日で50通ぐらいはスパムが舞い込んでくる。アドレスを変更しても、あっという間である。

    ちょっと前まではMatadorというスタートアップ企業が提供するスパム対策ソフトを使っていた。これはスパマーなのか不確かな場合はテストメッセージを送信するというユニークなプログラムだ。テストメッセージは、「写真の中に何匹の小犬がいますか?」という簡単なクイズ。これに答えられた人は機械送信ではないと認められて受信OKとなる。ただ、毎日20~30通程度ならこのようなプログラムも効果的だが、最近のようにどかどかと舞い込んでくると、1通1通をチェックするのも面倒くさくなってくる。同じ悩みを持つ人は少なくないようで、昨年末からスパム根絶に向けた動きが活発になっている。

    ひとつはSpamArchive。Eメールセキュリティ企業CipherTrustが運営するこのサイトでは、スパムメールの寄付を募り始めた。約2カ月で収集したスパムは約25万。1年で150万は突破すると見ている。こうして集められたスパムは、まとめてダウンロードしてスパム対策プログラムの作成に役立てることができる。

    17日にはMassachusetts Institute of Technology(MIT)で、スパム・コンファレンスが開催された。プログラマーやISPが集まって、より効果的なスパムフィルターの実現に向けて意見を交換する初めての試みだ。主催者側は100人も参加すれば成功と考えていたが、予想を大きく上回る600人近くが集まり、スパム問題に対する関心の高さがうかがえる。主催者のPaul Graham氏も「このコンファレンスは1回限りで終わらせる」とスパム根絶に向けて気合いが入っている。このコンファレンスの様子は1カ月間ウエブキャストで公開されているので、興味がある人は http://spamconference.org/webcast.html へ。

    コンファレンスの中心となったのは、MITのコンピュータ・サイエンティストWilliam S. Yerazunis氏による「CRM114 Discriminator」に関する講演である。メッセージを分断し、短いフレーズをベースにスパムに用いられるフレーズリストと照らし合わせる。Yerazunis氏が自ら分別しても99.84%であるのに対して、99.915%という正確さでスパムメールを選び出すそうだ。まだα段階だが、コンファレンスにはAOL、MSN、Yahoo!など主要なサービスプロバイダーが参加しており、これらがCRM114のようなフィルターを採用すれば、ユーザーが意識することなくスパムを撲滅できそうだ。

    一方で多くの人にとって"スパム"(米国の有名な加工肉の缶詰で、ジャンクの代表。スパムメールの語源はモンティ・パイソン説もある)でも、人によっては"ハム"(偶然求めていた情報と合致する)にもなるという、スパムの定義をめぐる論争も加熱していた。また、ユーザーの心理としては、スパムを含めて自分のメールボックスは100%管理したい。となると、日本のように受信者の承諾や指定された件名に限るなど宣伝メールの法規制が必要という声もある。だが、コンファレンスに集まっている人の多くは、インターネットの世界に法規制を持ち込むのをあまり快く思っていない。

    「1回で終わらせる」というプログラマーの意気込みは認めるが、最近はこのような問題が発生した場合、ユーザーに目線を合わせるというのが解決方法となっている。それだけに、行政、ユーザーなどを含めた土台整備のためのコンファレンスも必要なのではないかと感じられた。

    Matador
    http://www.matador.com/

    SpamArchive
    http://www.spamarchive.org/

    Spam Conference
    http://spamconference.org/webcast.html

    バックナンバー
    http://pcweb.mycom.co.jp/column/svalley.html

    新着記事

    特設サイトの情報

      人気記事

      一覧

      イチオシ記事

      新着記事

      特別企画

      マイナビニュースマガジン