【コラム】

シリコンバレー101

17 エンターテインメントの世界に登場したオープン・プロジェクト

    山下洋一  [2002/12/24]

    先日、ケーブルTVの技術系専門局でスポーツシューズ技術の特集をやっていた。「ショック吸収のナイキ対効率性のアディダス」という構図の最新技術解説に興味をひかれてチャンネルを変える手が止まったのだが、面白かったのはスポーツシューズ開発の歴史の方だった。その中でスポーツシューズがファッションのひとつとして履かれるようになったころ、開発が"マーケティング中心"になりすぎて、スポーツ愛好者のための靴、今後のスポーツシューズ開発のためのサンプルデータを取れるような靴が少なくなったという話があった。当然、スポーツ目的のユーザーからは不満の声が出てくるし、シューズの完成度も落ちてくる。そこで、今は、人気だけではなく、しっかりとしたサンプルデータを取れるアスリートを広告塔として採用し、マーケティングとスポーツシューズ開発をうまく融合させることがポイントになっているのだそうだ。

    さて、柔軟な著作権ライセンスの実現を目指す非営利団体Creative Commonsが16日、クリエーターが自分で作品のライセンス内容を選択できるという新形態の著作権ライセンスを発表した。

    具体的に説明すると、何か作品を作り出したら、クリエーターはCreative Commonsを通じてパブリックドメインとして作品を発表できる。またはCreative Commonsのツールを使って、自分が望む権利を指定できる。ライセンスの条件には、クリエーターのクレジットが入っている限りコピー/配布/使用が可能な「Attribution」、商業目的での使用を禁じた「Non-commercial」、派生作品の作成を禁じた「No Derivative Works」、クリエーターからのライセンスを入手すれば派生作品を作成できる「Share alike」などの4つがある。

    カスタム・ライセンスを指定すると、「Commons Deed」「Legal Code」「Digital Code」の3つのフォーマットでライセンスが発行される。Commons Deedは文書によるライセンス内容、Legal Codeはライセンスに関連する法的な制限の説明、そしてDigital Codeは機械読み込みが可能なライセンスだ。Digital Codeがあるため、ライセンス取得者はネットを通じて自分の作品を売り込み、作品のライセンスを主張できる。Creative Commonsは、Digital Codeの読み込みに関して、検索サービス企業と交渉を重ねており、将来的にはユーザーがライセンス内容から作品を検索できるようになるそうだ。

    多少、コマーシャル寄りではあるが、オープンソース・プロジェクトに似ていると思う人が多いのではないだろうか。実際、Creative CommonsのアイディアはGPLの活動がモデルとなっている。

    現在、元The BirdsのRoger McGuinn、DJ SpookyなどがCreative Commonsをサポートしている。だが、Creative Commonsを活用できるのは、すでに幅広く作品を発表しているアーティストよりも、無名のクリエーターや現在のエンターテインメント・ビジネスでは作品が発表できないという人たちだろう。これまでそのようなアーティストをサポートしていたサービスというと、Souliveなどを有名にしたMP3.comがある。Creative Commonsのライセンスによって、MP3.comのようにアーティストが自由に作品をアピールできる場所がネット上に増えると期待できる。

    ただし、Creative Commonsが目指しているのは若手クリエーターにチャンスを与えることではなく、パブリックドメインの確立である。今の著作権法は大手エンターテインメント企業の作品を守るために存在している面が強い。スポーツシューズの例だと、あまりにもマーケティング中心という状態だ。Creative Commonsは、創造物の多くは過去の作品から派生したもの、または影響のつみ重ねであると指摘。そのサイクルが文化的な発展につながっていると考えて、パブリックドメインを重視している。

    だが、共有や転用するのに魅力ある作品の多くは大手エンターテインメント企業が抱えているのが現実。今後の課題は、大手エンターテインメント企業と対立するのではなく、上手く相乗効果をもたらすことである。Creative Commonsの強みは、クリエーターと消費者の利益につながるライセンスであるということ。そこをアピールして、いつまでも作品を抱え込むのではなく、パブリックドメインに寄付することの効果をエンターテインメント企業側に考えさせるようになると、ネットの世界は大きく変わるだろう。

    Creative Commons
    http://www.creativecommons.org/

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    http://pcweb.mycom.co.jp/column/svalley.html

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