【コラム】

シリコンバレー101

15 米企業で3年ぶりの買い換えブーム、捨てられていくPCはどこへ?

    山下洋一  [2002/12/10]

    ComdexでNational SemiconductorのBrian Halla氏が「本物のITブームが来るのは来年の6月」と予測していた。これまでのハイテク業界の浮き沈みを公式化するという面白い予測だったが、来年の上半期にPC業界は上向きになるという楽観的な見通しを示す米ハイテク企業の経営者はHalla氏だけではない。多くの経営者が企業の買い換えの波を意識している。今年年末から来年の上半期にかけて重要な製品が次々と登場するのは、その証明とも言える。

    前回の企業によるPC購入の波がピークに達したのは1999年中頃である。2000年問題という、今となっては懐かしい言葉が原動力となった。当時のCPUのクロック周波数は500MHz前後。そろそろ、それらのマシンが買い換えの時期を迎えている。実際、今年の中頃から廃棄PCが急増。さらに年末商戦の出だしが好調で、前半戦を終わった段階でHPやeMachinesなどが、次々と目標達成を発表している。ダメダメだと言われ続けてきたのに、本当に買い換えブームが到来しそうな勢いになってきた。しかし、ここでちょっと気になるのは、廃棄されている方の1999年製品の行方である。

    現在、カリフォルニア州では米版家電リサイクル法でもめている。発端となったのは、今年の3月にSilicon Valley Toxics Coalition(SVTC)やBasel Action Network(BAN)などで構成されるグループが公表した「Exporting harm: the high-tech trashing of Asia」というレポートである。米国の"e-廃棄物"がアジアに輸出され、しかも作業員が有害な環境下でリサイクル作業を強いられていることを明らかにした。このレポートにショックを受けたカリフォルニア州は、中古電子機器を回収/再利用/リサイクルするシステムを作るために、コンピュータやTVの価格に回収費用の上乗せすることを検討し始めた。

    メーカー側は、フロントエンドの資金調達システムでは製品の売れ行きが鈍ると猛反発。また、カリフォルニア州の小売店グループも、ローカル店で買わずに、製品回収料金が課されない他州のオンラインショップで購入する人が増えると反対している。その結果、議会を通過しても、知事が拒否するというような膠着状態に陥っていた。

    だが、先週、フロントエンドの資金調達システムに反対していたHewlett-Packardが州側の意向に沿ったリサイクル計画を提案したことでリサイクル法実現の可能性が出てきた。

    HPの案には二つのポイントがある。一つは中古電子機器の回収・リサイクルの責任を消費者ではなくメーカーに負わせる。さらに企業ではなく、政府主導のシステムにすることを求めている。

    具体的には、「モノを作って売ったら終わり」ではなく、廃棄までメーカーが責任を持つシステム作りを提案している。回収・リサイクルの費用は製品の価格に反映されるだろう。その点ではフロントエンドの資金調達システムと同じだ。だが、全てのメーカーが回収・リサイクルのシステムを取り入れ、システムが熟成して効率的に運営できるようになれば、上乗せされる費用は大幅に減少するというのがHPの主張だ。全メーカーが足並みを揃えるのがポイントであり、そのための政府主導である。業界トップという立場から、こういう提案をできるHPには素直に拍手を送りたい。

    しかし、残念なことに今のところHP案を歓迎するメーカーは出てきていない。逆に業を煮やした加州では、一度拒否された「回収・リサイクル費用としてテレビやモニターに1台10ドルを上乗せ」を再検討する動きも出てきた。

    個人的には、前向きな姿勢のHP案を支持したい。一つ気になるとすれば再利用という点だ。例えば、ベイエリアにはACCRCという有名なリサイクル団体がある。同団体は、主催者であるJames Burgett氏がゴミ捨て場から拾ってきた廃棄PCを再調整して地元の学校に寄付したことから始まった。低所得者アパートでスタートし、今では野球場ほどの大きさの倉庫でPCリサイクル作業を行っている。ここでは数多くのホームレスや元受刑者が手に職をつけるためにリサイクル作業に従事している。また、イーストベイにある教育機関のほか、南米の学校や施設に再調整PCを寄付しており、再利用製品は十分に活用されている。

    こういった団体は企業による製品回収プログラムの不備を補うようにして誕生した。解体・リサイクルもやるが、可能な限り再利用するように努めている。今、使わなくなったPCの有効利用を本当に考えている人はACCRCのような団体を利用している。それだけに、今後のシステムの中でも、このような団体が活動する場が残されればと思う。

    Exporting harm: the high-tech trashing of Asia
    http://www.svtc.org/cleancc/pubs/tt2.htm

    HPの環境対策プログラム
    http://www.hp.com/hpinfo/globalcitizenship/environment/

    ACCRC
    http://www.accrc.org/

    バックナンバー
    http://pcweb.mycom.co.jp/column/svalley.html

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