今年初めに公開され大きな話題を呼んだ日本映画『感染列島』。

今回ご紹介するのは、そんな『感染列島』……ではなく、『合衆国感染』というなんかちょっとモヤッとするタイトルの洋画DVDです。

本連載をご覧くださっている皆様ならもうこの時点でピンときたことでしょうけれど、はやる気持ちは抑えていただいて、まずは恒例のパッケージ鑑賞タイムです。

いかがでしょうか?

……あといつも通り『感染列島』で画像検索していただくと、その酷似っぷりに驚かされますが、もちろん偶然です

ちなみに本編にはパッケージに飛んでいるようなヘリコプターは一切出てきませんし、上の方に写っている3人の軍人らしき人物がいったい誰なのか全編見終わった今でもわかりませんし、そもそもこんなシーンあったっけ? とちょっと戸惑ってしまいましたが、そういう細かいことを気にしてはいけません。

そもそもこのパッケージには主人公を含むメインキャラがまったく描かれていませんし、別にアメリカ全体ではなくとある小さな町でウィルスが流行るだけなので、タイトルも微妙っちゃ微妙です。……たぶん、タイミング的に何としても「感染」という単語を入れたかったのだと思いますけど。

さて、一通りツッコんだところでもう満足しそうになってしまいましたが、内容の方はストレートなウィルス感染もので、あらすじは次の通り。

ディアブロ郡で家畜を襲う奇妙な病。体のあちこちから血液を流してもだえ苦しむ症状を見た獣医のシドニーは、これがただ事ではないことを察知する。一方、郡の検死官グリーンは、同じ症状で死亡した人間の遺体と遭遇。二人は未曾有のウィルス危機が迫っていることを感じ取り、CDC(疫病管理センター)に連絡するのだが――。

まずはなんといってもウィルスに冒された動物や人間の描写のグロテスクさに注目しなければなりません。全体的に低予算な雰囲気が漂っている本作ではありますが、そんな中ウィルスに感染した症状の特殊メイクがやたらハイレベル。もっと端的に言うと非常に気持ち悪いです。もう、予算のほとんどをここにつっこんだんじゃないかと思えるぐらいです。

では画像を出しますので、お食事中の方はご注意くださいね。

この特殊メイクだけかなり出来が良い

かなりキツい映像ですが、主人公のシドニーとグリーンは運ばれてきた感染者の遺体にかかっている白布を嫌がらせかと思うぐらい執拗にめくってこの特殊メイクを視聴者にアピールしてきます。これには僕も思わず、せっかくお金をかけたところだから見せたいのはわかるけどもういいです! と言いたくなりました。

次に気になるのはストーリーですが、こちらは実に薄味。本編は1時間35分間なのですが、ウィルスに対抗する術がまったく見つからないまま右往左往しているうちにどんどん時間だけが過ぎていくため、おそらく視聴者の誰もが、1時間15分を過ぎたあたりで「これ、本当に終わるの?」と不安に駆られることと思います。

……そしてその悪い予感は的中し、終わった後には、「いや、終わりかい!」と叫ぶことになるでしょう。まあある意味ウィルス感染もの映画としては定番的な終わり方とも言えるのですが、そこまでの引きがあまりにも弱いためちょっと呆然としてしまいました。

主人公のシドニーと、謎の軍人……この場面が意味するものは?

とまあそんな感じで、懐かしのX-ファイルを見た後のような何とも言えない後味の悪さは残るものの、中盤の緊張感はなかなか。

特にシドニーを慕う牧場主であるスペンサーと共に郡からの脱出を図る場面では、なぜか急にカーチェイスが始まったりして驚かされるものの、このあたりから陰謀論などが浮上して一気に物語が盛り上がります。

それだけに後半の失速は残念なところ。せっかく出てきたメインキャラが特に何の役割を果たすこともなくあっさり死んでしまったり、事件の全容が見えづらい結果に終わってしまったりするのはもったいないなあと感じました。

何というか、こう……打ち切りが決まってから広げた大風呂敷を急いでたたみはじめた漫画のような虚しさをそこはかとなく感じる映画でした。そもそも主人公の役割すら明確にならないまま終わっていくので、これだと単に「ウィルス怖いよね」という結論にしかなっていないような気がします。じゃあホラー映画なのかというと、それもまた違いますし。

良い笑顔のおじさんですが、服装からわかる通り軍人です。果たして彼らが物語にどう絡んでくるのか……

……色々書きましたが、どの方向から考えてもやっぱりあの特殊メイクがやりたかっただけとしか思えません。まあそれはそれで潔いですけど。

ちなみに本作の監督はショーン・コネリーの息子であるジェイソン・コネリー。……お父さんがこの映画についてどう思っているのかぜひ伺いたいところです。

また出演者には『ワン・ミス・コール』(『着信アリ』のハリウッドリメイク)に出演していたレイ・ワイズや『ランボー 最後の戦場』のグレアム・マクダヴィッシュなど、知名度があるのかないのか微妙なラインの俳優が揃っていて、本作が彼らにとって黒歴史にならないことを祈るばかりです。

そうそう、この映画の一番のツッコミどころは、仮にもウィルスに感染した疑いのある遺体を、医療関係者であるシドニーとグリーンがチープなマスクと手袋をしただけでベタベタ触る場面ですので、そこは画面を見ながら皆さんもしっかりと「もうちょっとリアリティ出せよ!」とツッコんでやってくださいね!

今回ぶった斬られていただいた愛すべき作品

『合衆国感染』

キャスト : レイ・ワイズ「ワン・ミス・コール」「グッドナイト&グッドラック」「ツイン・ピークス」/グラハム・マクタヴィッシュ「ランボー 最後の戦場」「トゥームレイダー2」/ピーター・アイル・ホールデン「極寒激戦地アルデンヌ ~西部戦線1944~」

監督:ジェイソン・コネリー

トランスフォーマーより発売中


山田井ユウキ

レビューサイト「カフェオレ・ライター」主宰。サイトでのP.N.は「マルコ」。映画はもちろんマンガ、ゲーム、さらにはBL作品に至るまで幅広くレビュー記事を執筆、その独特な視点とテンポのよい文章で人気を博し、連日30.000以上のPVを誇る

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