『全日本コール選手権2 with ピエール瀧』。

日本一、いや世界一くだらないDVDを挙げろ、と言われたら僕はコレを推します。

――と断言してもいいぐらいのしょーもなさがなぜかウケて大ヒットした、「全日本コール選手権」シリーズ。有名なのでご存知の方も多いかもしれませんが、簡単に内容を説明しておくと、要するに飲み会で一気飲みを煽るためによく若者がやっているコールをチームを組んで披露し、トーナメント形式で優勝を決定するという誰が得をするんだかわからない企画(※)です。

※この企画はDVDで明言されているようにコールというカルチャーにスポットを当てたもので、一気飲みを推奨するものではありません。

ノリとしては地上波のバラエティ番組とそう変わらないように思えますが、公式サイトに掲載された木村カエラのコメント、「DVDでしか出せない理由が見ればわかります。最高です」からもわかる通り、放送禁止用語とそれを隠すための「ピー音」が連発されておりますので、冗談の通じない方と一緒に見るのは少々危険かもしれません。

さて、今回は間違っても出ないだろうと思っていたのに出てしまった続編、『第2回 全日本コール選手権2 with ピエール瀧』を、主にそのくだらなさに注目しながらレビューしたいと思います。

第1回を見たという人も、そんなDVDがあることを初めて知ったという人も、むしろ僕が出ていますという人も、ぜひ老若男女そろってこのどうしようもなさを味わってください。

パッケージからしてもう何がなんだか

気になるトーナメントのルールは!?

さて、このシリーズを未見の方がまず疑問に思うのが、「どうやってコールで勝負するのさ?」ということでしょう。 まず簡単にトーナメントルールをご説明させていただくと、

  • 泥酔禁止
  • 8つのサークルによるトーナメント方式
  • それぞれのサークルは90秒以内でコールの自由演技を行う
  • 審査委員長が独断で優劣を判定する

となっており、方式だけなら「M-1グランプリ」などとほぼ同じなのですが、争う内容が内容だけに思わず苦笑いが漏れてしまいます。 でも僕は、こういう風にバカバカしいことを真剣にやる大人が大好きです。

この手のDVDは、出場チームやスタッフに敬意を表しつつ、「コールの自由演技って何だよ!」「判定は独断かい!」など全力でツッコみながら鑑賞するのが正しい楽しみ方というもの。

さあ、皆さんも缶ビールを片手に最高のエンターテイメントの世界へと旅立ちましょう。

個性豊かな出場チームに注目!

この手の企画、頭で考えているうちは面白いのですが、実際にやってみて難しいのはクオリティの高低が出場メンバーに左右されてしまうところ。しかも内容がアレなだけに、参加者はかなり偏ってしまうのではないか……。

と、見る前は思っていたのですが、そこは全力でくだらなさを追求する(褒め言葉)スタッフの力の見せ所! 世間に対してどんなPRをしたらこんな凄まじい面子が集まるのか、と言いたくなるほど個性豊かなチームが、全国各地から集結しました。

以下、僕が見ていて思わず飲んでいたカフェオレを吹きそうになった面白チームをいくつかピックアップしてご紹介したいと思います。

1 : KOT-TUN

今回が初出場となる北海道大学と酪農学園大学の混成テニスサークル。名前からしてネタですが、そんな彼らのコールには北海道ならではの小ネタが満載。コール界(そんなのあるのか!)ではご当地ネタをコールに盛り込むのがひとつのテクニックであるらしく、日本ハムやヒルマン監督、果てはムネオハウスに元タレントの田〇など微妙に危険なネタを織り交ぜてくる突き抜けっぷりが彼らの持ち味です。

2 : ジグザグ

立教大学を代表する巨大テニスサークルから出場の、男4:女1で構成されたチーム。コールの内容には「ヤリ〇ン」「包〇」(自主規制)といった多数のシモネタが含まれており、それをチーム紅一点のマリコちゃんが叫ぶという、男心を巧みにくすぐる技で勝利を狙います。……しかし、コールよりも僕が気になったのは、このサークルの男女比が男30:女60だという事実なんですけど。あのう、立教大生じゃないと入れませんかね……?

3 : スガワライオン

クラブイベントを企画、運営するイベントサークルで、リーダーの菅原くんは前回の裏MVPなのだとか。メンバー構成は、「ザ・渋谷」といった感じのギャル・ギャル男ばかり5人。チームの紹介文である「放送禁止のエロライオン」がもう、このチームの全てを表しているといっても過言ではありません。もちろんコールはオールシモネタ。実社会では完全にアウトな単語のオンパレードを勢いだけで披露してくるスガワライオンに、僕はこのDVDの真髄を見ました

4 : 男子寮

第1回コール選手権の覇者である、横浜市大の男子寮「夕照寮」チーム。言うまでもなく全員男で、応援団を思わせるその硬派っぷりは他のチーム、特にスガワライオンあたりとは一線を画した迫力を感じます。ディフェンディングチャンピオンというだけあって、童貞ネタ若ハゲネタなどの自虐コールもハイレベルですが、伝説のキラーコールとも呼ばれる「男魂2006」は特にすごい。とりあえずこのDVDを見る機会がありましたら、このチームだけが出てくるまでは停止ボタンを押さないでください

今回の参加チームでも最高に男臭い男子寮チーム。スガワライオンあたりとはどう考えても水と油

……以上、4チームをご紹介させていただきましたが、この他にも関西のお嬢様チーム「シャイニー」や、早稲田大学で行われた第1回早稲田コール選手権(早稲田にもあるのかよ!)優勝チーム「和敬塾」、結成40周年の老舗サークル「和泉FC」など、強力な面子がそろっています。

中でも、赤文字ファッション誌の読者モデル経験者ばかりで構成されたチーム「sky☆blue」には、そもそもなぜこの企画に応募しようと思ったのか尋ねたい気持ちでいっぱいです。

場違い感たっぷり、でも可愛いからOK! 関西お嬢様軍団「シャイニー」

本番スタート! ここからが本当の地獄だ……!(腹筋がよじれるという意味で)

……メンバー紹介だけで皆さんもうお腹一杯だと思いますが、時間に直すとDVDが始まってからここまでまだ4分ですので、気合入れ直してついてきてくださいね。

続いて、いよいよ本編。カオスに満ちたトーナメントの内容をご紹介していきましょう。

1回戦の勝負は、「KOT-TUN」VS「sky☆blue」、「和泉FC」VS「ジグザグ」……といった具合に、8チームがそれぞれサシで戦うわけですが……ここからは、通常の笑い耐性では腹筋が最後までもたないかもしれませんので要注意です。

勝負の流れは、「プレイコール!」("無礼講"にかけてるらしい。座布団1枚!)という司会者の良い声と共に、まず先攻チームがこの日のために考案してきた自慢のコールを90秒間で次々と披露し、続いて後攻チームが同じようにとっておきのコールを披露した後、ピエール瀧が独断で勝敗を判定していきます。

この試合内容については、もう実際に見ていただかないとそのすごさが伝わらないわけですが、とにかくサブカル的な笑いにかけてはプロフェッショナルであるピエール瀧が、腰砕けになって爆笑しているのですから、その破壊力たるや推して知るべしといったところ。

そしてさりげなく良い仕事をしているのが、ピエール瀧の横に座っている司会の矢野アナ。コールを見ながら冷静なツッコミをさらりと入れたり、時には熱く「レジェンドコール出ました!」と実況してみたり。 今回の本当のMVPは、実はこの人なんじゃないかと僕は思っています。

……さて、どのチームが勝ちあがるのかはもちろんネタバレになりますので伏せておきますが、参考までに僕が個人的に注目したい1回戦の対戦カードを挙げておきますね。

スガワライオンVSシャイニー

エロネタ全開のスガワライオンと、シモネタとはもっとも縁遠そうなお嬢様チームシャイニーの対決という興味深い一戦。先攻のスガワライオンから何の躊躇もなく繰り出される放送禁止用語の連発は、語感の良さも手伝ってか妙に脳内に残ります。……エロで埋まってしまった僕らの脳内を、シモネタ抜きの後攻シャイニーがどこまで上書きできるのか注目ですね。

それにしてもこの2チーム、コール選手権がなければ絶対に関わることはないと断言できるぐらい住む世界が違います。そんな彼らの人生を一瞬だけ交差させたコール選手権、それだけでも何かものすごく意義のある企画なんじゃないかと思えてきました

和敬塾VS男子寮

どちらも男子寮。そしてどちらも童貞ネタがデフォルト。……似た者同士で、しかも両チームタイトルホルダーという実力派ですから盛り上がらないわけがありません。ちなみに和敬塾は前回大会優勝の男子寮を尊敬しているらしく、この第2回大会の前に彼らを表敬訪問したそうです。

……その労力はもっと違うところに使った方がいいような気がしてなりませんが、そこらへんはきっちりピエール瀧がつっこんでくれているので、どうぞ安心してご覧ください。

何だかんだと書きましたが、僕が一番好きなチームはスガワライオンです(写真中央が菅原くん)

持っていると何かと役立つ(?)本作品は、間違いなく"買い"!

……僕もそれなりにたくさんの珍DVDを見てきましたが、くだらなさという点では本作品がぶっちぎりです。純粋に笑えて、楽しめて、見終わった後に何も残らない。これぞまさにエンターテイメント!

  • 自室に1本置いておき、異性を部屋に招いたときの話題作りに……
  • コンパを盛り上げるためのコールの考案に……
  • この春、新しい環境で友達を作るときの話の掴みに……

など、いずれのシチュエーションでもきっとあなたを満足させてくれるはず!

……なお蛇足ですが、今回記事を書くにあたって公式サイトをチェックしていたときに見つけた、第2回コール選手権・観覧募集のお知らせページ応募概要での注意書き。

「※DVD内ブックレットに記載された募集要項は忘れてください。」

という一文が何だか妙にツボに入りました。もう公式サイトからしてグダグダじゃないですか!

そんな「全日本コール選手権」は、すでに第3回が開催され、今夏のDVD発売が決定しているようです。ちなみに解説は浅草キッド! これは期待できますね。

今回ぶった斬られていただいた愛すべき作品

全日本コール選手権2 with ピエール瀧

解説:ピエール瀧 / 実況:矢野武

BMG JAPANより発売中 2,990円

山田井ユウキ

レビューサイト「カフェオレ・ライター」主宰。サイトでのP.N.は「マルコ」。映画はもちろんマンガ、ゲーム、さらにはBL作品に至るまで幅広くレビュー記事を執筆、その独特な視点とテンポのよい文章で人気を博し、連日30.000以上のPVを誇る