【コラム】

珍DVD、愛を込めてブッタ斬り

1 えっ、あの映画の番外編!? ……もちろん違います - 『バイオハザードX』

    山田井ユウキ  [2007/12/12]

    バイオハザード――。

    その名前を聞いて誰もが思い浮かべるのは、あの大ヒットTVゲーム、そしてゲームを元に制作された映画『バイオハザード』シリーズでしょう。

    しかし、バイオハザードという言葉自体は、実は固有名詞ではなく、「有害な微生物やウイルスなどが漏れることで発生する生物災害」を示す新語です。つまり、"バイオハザード"という言葉自体を映画やその他の作品で使用することは別に問題ないことなのです。

    ……そこに目をつけて21日に発売されるDVDが、今回レビューする『バイオハザードX』

    パッケージはかなりそれっぽい

    「例のシリーズの一員ですよ」みたいな顔でしれっと混じろうとしていますが、もちろんまったく何の関係もありません。おまけに、現在公開中の『バイオハザード3』にタイミングを合わせてぶつけてきた感がぷんぷんしますが、僕はこういういたずらっ子みたいな作品、嫌いじゃないです。というかむしろ大好物です。

    ということで、今回は重大なネタバレについては避けつつ、『バイオハザードX』の内容を皆さんにご紹介していくことにしましょう。ちなみにとってつけたような『バイオハザードX』の「X」ですが、いったい何が「X」なのかは、本編をご覧いただくと一応説明があります。

    ……で、おそらくコレ、真面目に作っている映画なのですが、内容はつっこみ所がありすぎてどこから手をつけていいのかわからない状態です。そこで、つっこみ所をいくつかのポイントに分けてご紹介していきますので、ぜひ皆さんの本編をご覧になる際には、このレビューを思い出しながら友達とつっこみまくってみてください。

    パッケージが狙いすぎ

    内容じゃなくてパッケージからかよ! というつっこみが逆に僕に入ってきそうですが、どうしても我慢できなかったので言わせてください。まずパッケージの表ですが、こちらは前述の画像をご覧いただくとわかる通り、荒涼とした大地をバックに血まみれの美女が仁王立ちしているという、かなりそれっぽい作りになっています。美女の雰囲気やルックスが思いきりミラ・ジョヴォヴィッチを意識しまくっているようにも思えますが、とりあえずはカッコイイのでOKです。

    問題はパッケージの裏面です。

    キャッチコピーである「壮大なスケールで贈るサバイバル・アクション超大作」という文面が若干引っかかりますが、何をもって「壮大」と捉えるかは個人の自由なので、これは別に嘘ではありません。しかし、その下部のあらすじには、嘘が混じっていました

    引用してご紹介すると、次のような内容です。

    2人の囚人を乗せたスペースシャトルが荒涼とした砂の惑星に不時着。その惑星はかつて「地球」と呼ばれていた場所だった。(中略)彼らを待ち受けていたのは、生物兵器の影響で凶暴化したアンデッドの群れだった…。

    ……ということで、最後に「アンデッドの群れ」とありますが、実はこの作品に出てくるアンデッドは1匹だけです。なのでまったく「群れ」ていません

    しかし何でまた「群れ」とか書いちゃったのでしょう。この件に関して、担当の方とぜひ白木屋で一杯やりながら語りたいところですね。

    アンデッドが色んな意味でやばい

    さて、その孤独なアンデッドですが、これがまたやばい。とりあえずバイオハザードやドーン・オブ・ザ・デッドのゾンビをイメージしている人は、即刻その想像を断ち切ってください。そして、ハムナプトラのイムホテップを思い浮かべてください。……できましたか? そう、それがこの作品のアンデッドです。

    それってもうアンデッドというか、裸にジェルかぶってなんかちょっとベタベタしてる人、という感じです。正直、もうちょっと特殊メイクにお金かけてほしかったです。しかもこのアンデッド、言葉もばっちり話しますし、知能も高いですし、挙句の果てには幻覚を見せる精神攻撃とか仕掛けてきますからね。これはかなり新しいアンデッド像ですよ。……受け入れられるかどうかは別にして。

    一応アンデッドということになっていますが、「生きてる臭」が強く漂っています

    特に意味のない60分

    この映画は全部で約90分あります。しかし、それにしてはどうも見終わった後の印象が薄いのです。なぜかと思って考えてみたら、最初の60分のせいでした。

    パッケージにもある主人公の美女ですが、なんと彼女が登場するのは後半の30分だけです。ちなみに例のアンデッドも彼女と同時に出てくるので、結局メインキャストが登場するのにオープニングから60分間待たないといけないわけです。

    しかもこの前半60分で、話がほとんど動きません。準主人公と思われる男二人が、ひたすら廃墟の中を探索したり(もちろん何も出てこない)、世間話をしたり、そんなこんなで60分が過ぎていきます

    逆に後半の30分では一気に急展開するのですが、いかんせん30分しかないので、それまでの伏線をまったく回収できず、投げっぱなしのまま終わっていきます。物語のバックボーンを理解する上でかなり重要なんじゃないかと思われる伏線まですべて投げ捨てて、無理やりエピローグに持っていく終盤の展開には、思わず違う意味で目頭が熱くなりました

    特に、主人公とアンデッドの最終決戦が丸々カットされたときには、さすがに一瞬、自分の勘違いかなと思って巻き戻しましたからね。

    ……もちろん間違っていたのは僕ではなく、この映画の時間配分の方でしたけど。

    僕の記憶が確かなら、主人公である彼女の名前は結局明かされずに終わりました

    他にも色々あるよ、つっこみ所!

    以上、ご紹介した以外にも、たとえばオープニングのスペースシャトルがオモチャっぽいだとか、場面によってセットのクオリティが違いすぎるだとか、オチが90分引っ張っておいてそれかよ! だとか、つっこむべきポイントは無数にあります。

    ペラペラなスペースシャトル

    ですので、このDVDは、一人で全部見るのではなく、ぜひ友達とワイワイつっこみながら見てください。そして、一通りB級エンターテインメントの本気っぷりを堪能できたなら、貴方の本棚に置いてある、ミラ・ジョヴォヴィッチのバイオハザードシリーズの横にそっと並べてやってください

    それがきっと……僕たちにできる精一杯の感謝なのだから……。

    今回ブッタ斬られていただいた愛すべき作品

    『バイオハザードX』

    CAST:ブレンダン・ガイ・マーフィ / アイク・スティールストラ
    キンバリー・バーモン / サラ・ケリー・スチュワート / ベン・ナースツ

    製作:デニス・ファリス / 監督:ウィリアム・スチュワート
    脚本:イグナティウス・フィッシャー / 音楽:ダニエル・ライアン・エスバイ

    12月21日、トランスフォーマーよりリリース。同日レンタル開始
    山田井ユウキ

    レビューサイト「カフェオレ・ライター」主宰。サイトでのP.N.は「マルコ」。映画はもちろんマンガ、ゲーム、さらにはBL作品に至るまで幅広くレビュー記事を執筆、その独特な視点とテンポのよい文章で人気を博し、このほど累計1千万アクセスを突破した

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