イプシロンロケットとはやぶさ2が名前やメッセージを募集中

JAXAが現在、2つのキャンペーンを行っています。「イプシロンロケット応援メッセージ大募集!」と「星の王子さまに会いにいきませんかミリオンキャンペーン2」です。どちらも、一般から募集した名前やメッセージを宇宙へ運ぶとうたっています。

名前の募集キャンペーンは火星探査機「のぞみ」から始まった

名前やメッセージを宇宙へ運ぶキャンペーンは、日本では宇宙科学研究所(ISAS)が火星探査機「のぞみ」で初めて行いました。「あなたの名前を火星へ」キャンペーンを発案したのはISASの広報担当、的川泰宣教授(当時)です。

このころはインターネットの利用者が少なく、署名ははがきによる受け付けでした。届いたはがきはISASの職員がすべて手作業で切り抜いて並べていきます。続々と届くはがきを切り抜くのは大変な作業でしたが、署名に添えられたさまざまなメッセージが職員たちの感情を大いにゆさぶったといいます。そこには家族への愛情や将来への希望、追悼や激励など、たくさんの人々の思いが詰まっていたのです。メッセージの一部はISASニュース203号(1998年2月)の「夢をありがとう」や、松浦晋也著『恐るべき旅路』(朝日新聞出版)で読むことができます。

27万人の署名とメッセージは、3.2cm×4.5cmのアルミ板20枚に焼き付けられました。アルミ板は「のぞみ」の重心を微調整するおもり(バランスウェイト)に組み込まれます。「のぞみ」は1998年7月、M-Vロケット3号機で打ち上げられました。

火星探査機「のぞみ」に装着されたバランスウェイト。署名を焼き付けたアルミ板1枚が中央に組み込まれている (C)JAXA

残念ながら「のぞみ」は機器のトラブルで、火星を回る軌道へ入ることができませんでした。現在は人工惑星となって、27万人の署名とメッセージとともに太陽の周りを回っています。

2003年12月に「のぞみ」の火星周回軌道への投入を断念したのち、的川教授が「火星探査機『のぞみ』にお名前を託された27万人の人々への手紙」という記事を発表しました。ここには「皆様の一人一人の生活と人生模様を反映した有り難いメッセージは、宇宙科学研究所(当時)の私たちに、『宇宙をともに感じることのできる無数の友人がいる』ことを実感させ、自信をもって前進するための勇気を与えてくれました」と記されています。

88万人を集めた「はやぶさ」のキャンペーン

次のキャンペーンは小惑星探査機「はやぶさ」での「星の王子さまに会いに行きませんか」です。「ミリオンキャンペーン」と銘打ち、100万人の応募を目指しました。はやぶさは小惑星「イトカワ」にタッチダウンするにあたって、事前に目印としてターゲットマーカーをイトカワへ落とします。3個のターゲットマーカーのうち、1つに88万人分の名前とメッセージが掲載されました。

小惑星探査機「はやぶさ」のターゲットマーカーにはアルミのフィルムに焼き付けられた88万人の名前が載せられた (C)JAXA

このターゲットマーカーは無事イトカワの表面に落とすことができました。はやぶさのプロジェクトマネージャ、川口淳一郎教授は「88万人の名前が載ったターゲットマーカーを着地させることができて、ほっとした」と語っています。はやぶさがその後イトカワへタッチダウンし、数々の苦難を乗り越えて小惑星のかけらを持ち帰ったのは多くの人が知るところです。

88万人という応募者は、ISASやJAXAが行ったこの種のキャンペーンでの最高記録です。日本惑星協会との共催だったため、アメリカ惑星協会にも話が届き、海外のテレビ局でも採り上げられたとのことです。その結果、日本からの応募が31万人なのに対し、アメリカからの応募が48万人にもなりました。

88万人の名前を載せたターゲットマーカーは今もイトカワの表面にあります。いつの日か、人類か宇宙人がイトカワに降り立ち、ターゲットマーカーを目にする時が来るでしょうか。

その後、月周回衛星「かぐや」や金星探査機「あかつき」、ソーラーセイル実証機「イカロス」でも同種のキャンペーンが行われました。いずれも十数万から数十万人の応募があり、さまざまな形で搭載されて宇宙へ飛び立っています。

月周回衛星「かぐや」に搭載された名前とメッセージのシート (C)JAXA

金星探査機「あかつき」のキャンペーンに応募された名前とメッセージはアルミ板に印刷された (C)JAXA

応募者の名前が刻印されたプレートはソーラーセイル実証機「イカロス」の帆の先端にあるおもりに積まれた (C)JAXA

名前だけでも宇宙旅行の気分を

現在開催されているキャンペーンのうち、イプシロンロケットへの応援メッセージは締切が近く、ゴールデンウィーク明けの5月7日です。忘れないうちに早めの応募をおすすめします。

また「はやぶさ2」のキャンペーンは2つのコースがあります。ターゲットマーカーに名前を掲載する「あなたの名前を小惑星に届けます」と、小惑星のかけらが入る再突入カプセルにメッセージや寄せ書きなどを掲載する「『はやぶさ2』と一緒にタイムトラベル」です。

ターゲットマーカーは目的地の小惑星に置いてくる一方、再突入カプセルは2020年にわたしたちのもとへもう一度戻ってきます。宇宙へ出たら行きっぱなしになるものが多い中で、これは非常に珍しい機会です。2つのコースの両方に応募できますから、どんな人と一緒に応募するか、どんな内容のメッセージをカプセルに載せるか、いろいろ考えてみると楽しいのではないでしょうか。

人の名前やメッセージを宇宙へ送ることに科学的な意義はありません。しかし大切な人の名前や自分が考えた言葉が宇宙へ行くだけで、ほんのわずかながら宇宙を身近に感じられます。またキャンペーンに応募すると対象となるロケットや探査機にも愛着がわき、応援したくなってきます。

宇宙飛行士でない普通の人が宇宙へ行くのは今のところとても難しいですが、こういったキャンペーンに応募すれば宇宙旅行の気分を少しでも味わえるでしょう。

ISASやJAXAのメッセージキャンペーン一覧

リンクはキャンペーンのページやキャンペーンについてのJAXAのページを示しています。

「あなたの名前を火星へ」キャンペーン
  • 対象:火星探査機「のぞみ」
  • 募集期間:1998年1月1日~2月28日
  • 打ち上げ:1998年7月
  • 応募人数:27万人
「星の王子さまに会いに行きませんか」ミリオンキャンペーン
  • 対象:小惑星探査機「はやぶさ」
  • 募集期間:2002年5月10日~7月6日、7月16日~22日
  • 打ち上げ:2003年5月
  • 応募人数:88万人
セレーネ「月に願いを!」キャンペーン
  • 対象:月周回衛星「かぐや」
  • 募集期間:2006年12月1日~2007年2月28日
  • 打ち上げ:2007年9月
  • 応募人数:41万人
「お届けします!あなたのメッセージ、暁の金星へ」~「あかつき」メッセージキャンペーン
  • 対象:金星探査機「あかつき」
  • 募集期間:2009年10月23日~2010年1月10日
  • 打ち上げ:2010年5月
  • 応募人数:26万人
君も太陽系をヨットに乗って旅しよう!
  • 対象:小型ソーラー電力セイル実証機「イカロス」
  • 募集期間:2009年12月4日~2010年3月22日
  • 打ち上げ:2010年5月
  • 応募人数:15万人
イプシロンロケット応援メッセージ大募集!
  • 対象:イプシロンロケット試験機
  • 募集期間:2013年4月10日~5月7日
  • 打ち上げ:2013年夏予定
星の王子さまに会いにいきませんかミリオンキャンペーン2
  • 対象:小惑星探査機「はやぶさ2」
  • 募集期間:2013年4月10日~7月16日
  • 打ち上げ:2014年12月予定