1925年に創業したBang & Olufsen(B&O)は、オーディオ機器の枠に収まらないデザインと、高いサウンドクォリティによって知られる、デンマークのハイエンドオーディオメーカーだ。オーディオに多少なりとも興味がある人ならば、耳したことがある名前だろう。そのB&Oが、より広い層をターゲットとするために2012年に立ち上げたカジュアルブランドが、B&O Playだ。

現在、B&O Playからは、ヘッドホンやイヤホン、そしてワイヤレスタイプのミュージックシステムなどがリリースされている。今回取り上げるのは、ワイヤレスミュージックシステムの「Beoplay A2」(以下A2)だ。

「Beoplay A2」

スピーカーを主張しないデザイン

A2では、"やはり"といっては何だが、典型的なオーディオ機器のスタイルは採用されていない。一見すると、小ぶりなクラッチバッグのようだ。ただし、これは筆者の目が「オーディオ機器はこういったスタイル」という固定概念にとらわれているせいかもしれない。

小ぶりのクラッチバッグのようなスタイル

A2のスタイルは「ポータブルのための新しいデザイン」。アルミニウム製のコア部分を樹脂のシェルで挟み込むような構造を採用している。これは、外部からの衝撃の影響を抑えるためのものだ。デザインはデンマークのデザイナーCecilie Manz(セシリエ・マンツ)氏が行っている。かなり個性的なデザインだが、それがデザインのためのデザインになっていないところがB&Oらしいところだろう。

シンプルな操作性と必要十分な機能

本体上面のスイッチ類は、電源とボリューム、Bluetoothボタンだけで、いたってシンプルだ。Bluetoothのバージョンは4.0で、aptXにも対応している。右側面には、外部入力のためのφ3.5mmステレオミニジャックとUSBポート、DCジャックが配置されている。

「A2」の操作ボタン

「A2」の接続端子

USBポートは外部機器への給電用だ。A2は大容量のリチウムイオン充電地を内蔵しており、他のポータブルデバイスへの充電も行える。なお、A2の充電時間は約3時間で、再生時間は最大24時間。

実際にスマートフォンからBluetoothで接続して音楽を再生し続けてみたところ、約12時間程度の再生でシャットダウンした。最後のほうはBluetooth接続が途切れ気味になっていたが、普通に10時間以上の連続再生は可能なようだ。

しっかりとした低域とやわらかな中高域を持つサウンド

A2のサウンドは、B&Oのエンジニアによってチューニングされている。新開発のDSPによって、豊かな低域を実現しているとのことで、実際に聞いてみても、低域の豊かさやドライブ感は感じられる。ただし、A2の低域表現は、サウンドに臨場感を与えているが、極端に刺激的というわけではない。

高域はクリアで伸びのよさは感じられるが、こちらも刺さるようなサウンドではない。全体的には、柔らかめの中高域にしっかりとした低域がプラスされているといった感じだ。現代風のサウンドをリラックスして聞けるようにするにはこういったチューニングになるのだろう。長時間、ある程度のボリュームで音楽をかけっぱなしにしていても、気に障るようなことがない。

A2は設置場所に関わらず360度どの方向からでも音楽を楽しめる「True360 オムニディレクショナルサウンド」を採用している。実際には真横に座ると中高域が減衰するといった指向性が感じられるが、おおむね全周で同じように音楽を楽しめる。また、コンパクトなワンボックススタイルでありながら、ニアフィールドでは音像が明確に定位する。

背面も前面とまったく同じデザイン。定位が左右逆になる以外、前と後ろで音は変わらない

B&Oとは違ったカジュアルさを持つA2

A2はカジュアルかつ上品にまとめられたポータブルスピーカーだといえるだろう。それはデザインだけでなく、サウンド面も同様だ。

2014年12月に行われた「ポタフェス2014」で、「B&O Playでは、B&Oではできないようなデザイン上の冒険ができる」という話を聞いた。B&O自体が下の写真のような製品をリリースしているので、ここは笑うか突っ込むべきポイントだと思ったのだが、どうやら違うらしい。

B&O本体も十分に冒険的なデザインだと思うのだが……

B&O Playでは、外部のデザイナーを積極的に登用し、B&Oのブランドイメージに縛られないデザインの製品を提供できるということらしい。そうした意味において冒険なのだろう。

B&O Playの製品は、B&Oともまた違ったテイストを持っている。なかでもA2は、日常的にカジュアルな使い方ができるスピーカーだといえるだろう。

ポタフェス2014に出展されていた「A2」。今回試用したグレーのほか、グリーン、ブラックのモデルがある

B&Oではなく、B&O Playだからこそできるデザイン