前回のコラムで、Comlyのイヤーチップ「Ts」シリーズについて取り上げた。ところがTsシリーズは、エントリージャパンのWebサイトには掲載されていない。今回、その辺りも含めて、追加情報をお届けしたい。

TsシリーズがWebサイトに掲載されていない理由は?

エントリージャパンのWebサイトに現在掲載されているCompyチップは4種類。最初に取り上げたスタンダードタイプの「Tシリーズ」、そのほかに「Txシリーズ」「Pシリーズ」「Sシリーズ」だ。前回取り上げたTsシリーズは掲載されていない。

これらのうちTxシリーズは、「耳垢ガード」と呼ばれるパーツが付けられたモデルだ。イヤーチップの中心が貫通しておらず、耳垢によって、イヤホン本体にダメージを与えるのを防ぐようになっている。エントリージャパンによると、TxシリーズはTシリーズに耳垢ガードを付けたモデルで、音質的な違いはないとのことだ。

TsシリーズがWebサイト掲載されていないのは、現在は新シリーズの「Tsx」が準備されているからだという。Tsxシリーズは、Tsシリーズに耳垢ガードを付けたもので、やはりその音質はTsシリーズと変わらないらしい。

筆者が気になるのはPシリーズ

筆者がこれまで試したのは、TシリーズとTsシリーズだ。Sシリーズは音質の向上よりも遮音性を目的としたもののようなので、残るのはPシリーズということになる。

Pシリーズはロングタイプのイヤーチップだ。同社によると、ComplyのユーザーのなかでもPシリーズのみを使い続けている人がいるというほど、Pシリーズは他のイヤーチップと異なるらしい。これは気になるので購入してみた。

Complyの「Pシリーズ」

Pシリーズを購入する際に1点、気になったことがある。それは、サイズ表記がない点だ。TシリーズやTsシリーズの場合、「T-200」や「Ts-400」というように、製品名はシリーズ名の後に数字が続いた形になっている。この数字は、イヤホンの軸の太さを現している。「100」「200」「400」「500」の4種類があり、数字が大きいほど太い軸に対応している。Pシリーズにはそういった数字がないのだ。

届いたPシリーズをソニーの「XBA-H1」に取り付けようとしたところ、キツくて入らない。XBA-H1には200サイズのComolyチップが適合する。……ということから、Pシリーズは100サイズということになるのだろう。

筆者の手元にはPシリーズがピッタリ刺さるサイズのイヤホンもあるのだが、残念ながら100サイズのTシリーズやTsシリーズは持っていない。メインで使用しているイヤホンは200サイズなため、ここで100サイズのTシリーズとTsシリーズを新たに購入するというのも、少々気が引ける。

というわけで、かなり無理があるが、XBA-H1にPシリーズを強引に取り付けてみた。取り付けられるには取り付けられるのだが、かなり無理やりな付き方だ。

【左】かなり無理やりだが、ソニーの「XBA-H1」に取り付けてみた 【右】クリエイティブメディアの「Aurvana」にはジャストフィット

Pシリーズの性能は?

さて、無理やりではあるが、XBA-H1にPシリーズを取り付けたので、TシリーズやTsシリーズとの違いを簡単にレポートしてみたい。

左から「Tシリーズ」「Tsシリーズ」「Pシリーズ」

まず装着感だが、これは非常に優れている。ロングサイズで耳の奥まで挿入されるため、しっかりと保持される。装着感でT、Ts、Pの3シリーズを比べると、P、Ts、Tの順番になるだろう。

「Tシリーズ」の長さは約10mm。それに対して「Pシリーズ」は約16mmの長さ

次に遮音性だ。東急田園都市線の地下区間で試してみたのだが、Tシリーズよりは優れているが、Tsシリーズには及ばないように感じた。ただし、これに関しては、XBA-H1に無理やり装着していることが影響している可能性も否定できない。

最後に音の傾向だ。確かにPシリーズの音は、TシリーズやTsシリーズとは異なる印象だ。低域に関してはTシリーズとTsシリーズの中間ぐらいのパワーなのだが、中域の密度が増しているように感じられる。おそらくチップが耳の奥まで差し込まれていることによるものなのだろうが、ボーカルなどの中域の情報量が、TシリーズやTsシリーズとは明らかに違う。

オーディオテクニカの「ATH-IM50」に使用したら強力そうだが、残念ながら500サイズのPシリーズはリリースされていない。

モニタータイプのサウンドを好む人にとって、PシリーズはComplyチップのなかでベストなチョイスとなるだろう。サイズが100のみというのが非常に残念だ。