イヤホンの交換用チップとして有名なComply。その遮音性が、イヤホンに付属してくるイヤーチップとは別のレベルであることは、以前にこのコラムで取り上げた

先日、あるイベントでComplyチップを扱っているエントリージャパンの人に会い、Tシリーズを使用していると話した。すると、「ぜひ、Tsシリーズも使ってみてください。かなり差がありますから」と、サンプルを渡されたのである。

というわけで今回は、Complyの2種類の製品、TシリーズとTsシリーズの違いについてレポートしたいと思う。

まずは外観をチェックしてみる

まずは外観からだ。写真の左側がTシリーズで右側がTsシリーズ。Tシリーズは側面がまっすぐな円筒形なのに対して、Tsシリーズは側面が丸みを帯びている。素材はいずれも低反発ポリウレタンで、触った感じでは両者に違いはない。

左がTシリーズで、右がTsシリーズ

比較用に使用したイヤホンは、ソニーの「XBA-H1」。BA(バランスド・アーマチュア)型ドライバー×1基にダイナミック型ドライバー×1基を備えるハイブリッド型のイヤホンだ。XBA-H1には、「ハイブリッドイヤーピース」と「シリコンフォームイヤーピース」という2種類のイヤーピースが付属している。

「XBA-H1」

ハイブリッドイヤーピースは普通のシリコン製のイヤーピースで、シリコンフォームイヤーピースは内部に発泡ウレタンが入れられており、遮音性と低域が強化されているものだ。ノイズアイソレーションイヤーピースという名前でオプションとしても販売されている。

この2つのイヤーピースに、Complyの2製品を加えた計4種類で、電車内での遮音性とサウンドを比較してみた。

4種類のイヤーピースで遮音性とサウンドを比較

Tシリーズ以上の遮音性を持つTsシリーズ

ハイブリッドイヤーピースを使用した場合、イヤホンを装着していないときほどではないが、それでも外の音は普通に聞こえてくる。電車が駅から発車して加速しているときなどは、プレーヤーのボリュームを上げたくなる。

次にシリコンフォームイヤーピースを使用してみると、中域から高域にかけてのノイズが減少することに気付く。ただし、外部の音が遮断されているという感じではない。

続いて、ComplyのTシリーズに交換してみる。すると、高域から低域まで、すべての外来音が抑制されていることに気付く。電車の音だけでなく、車内のアナウンスもかなり聴きにくくなる。

高い遮音性を持つComplyのTシリーズ

最後にTsシリーズに交換してみる。ノイズ抑制能力は4種類の中で最大のようだ。電車の音だけでなく、アナウンスも「何かしゃべっているような気もしなくはない」といった程度にまで弱められる(回りくどい言い回しで恐縮だが……)。もちろん、車内で会話している人の声も同様だ。

音の傾向に違いはあるのか?

ハイブリッドイヤーピースのサウンドは、良くも悪くもこれが標準といった感じだ。音のヌケはよいのだが、低域の力強さにやや欠けている。シリコンフォームイヤーピースに換えてみると、低域の力強さが加わるが、ハイブリッドイヤーピースにあったヌケのよさは感じられなくなる。

Tシリーズのサウンドは、ハイブリッドイヤーピースとシリコンフォームイヤーピースの中間ぐらいといえばよいだろうか。ハイブリッドイヤーピースよりも低域の力強さを感じるのだが、シリコンフォームイヤーピースほどではない。

最後にTsシリーズだが、かなり低域にボリュームを持たせた感じだ。ただし、低域の出方はシリコンフォームイヤーピースとはやや異なる。シリコンフォームイヤーピースでは、どちらかというと中低域の厚みが増す。それに対してTsシリーズでは、それよりもさらに低い帯域の厚みが増す感じだ。

遮音性だけでなく、低域の厚みも加わるComplyのTsシリーズ

プレミアムだけのことはある遮音性とサウンド

エントリージャパンでは、Tシリーズをスタンダードモデル、Tsシリーズをプレミアムモデルと位置付けている。

2製品を使用してみると、遮音性だけを求めるのならば、Tシリーズでもそれなりのレベルにはある。しかし、低域の量感アップというところまで求めるのならば、やはりTsシリーズということになるだろう。もちろん、今回試したのはXBA-H1で、それ以外のイヤホンでどのように聞こえるのかまでは明言することはできない。しかし、現在使用しているイヤホンのサウンドに不満があるという人は、試してみる価値はあると感じた。