前回前々回で、最新のノイズキャンセリングヘッドホン3製品について、周囲の騒音をどのくらい抑えられるのかを中心に比較してきた。シリーズ最後となる今回では、ノイズキャンセリング以外の点についての比較を行ってみたいと思う。

最新ノイズキャンセリングヘッドホンの携帯性

ノイズキャンセリングヘッドホンは、移動時のリスニング用として使用される場合が多い、そこで気になるのが携帯性だ。ボーズ「QuietComfort25 Acoustic Noise Cancelling headphones」、ソニー「MDR-ZX110NC」、クリエイティブメディア「Aurvana Gold」の3モデルは、どの程度コンパクトになるのだろうか。

まずはボーズのQuietComfort 25だ。QuietComfort 25はオーバーイヤータイプとしてはコンパクトなうえに、写真のようにクルッとまとまる。カバンにも収納しやすく、携帯性は非常に高いといえるだろう。

「QuietComfort 25」。オーバーイヤータイプのヘッドホンなのだが、ここまでコンパクトにまとめることができる

また、ハウジングの内部にLとRの文字が記されており、どちら向きに装着すればよいのか一目で分かる。もっとも、ケーブルが片出しタイプのQuietComfort 25では、その向きから左右が分かるので、ここまで親切でなくても十分だとはいえる。

ハウジング内にLとRの文字が記されており、装着方向がわかりやすい

次にソニーのMDR-ZX110NCだ。下の写真右がMDR-ZX110NCを折りたたんだところだ。フラットな形状になるため、カバンの中には収まりがよい。しかし、両出しタイプのケーブルが少々邪魔だ。製品には含まれていないが、別途ケーブルリールなどを用意したほうがよいかもしれない。

「MDR-ZX110NC」では、ハウジングが回転して折りたたまれることでフラットな形状になる

「クイック折りたたみ機構」を採用しており、この状態にたたむまでほぼワンアクション……なのだが、逆にちょっと力を加えるとたたまれてしまうので、片手で装着しようとしたときに「何故そこでたたまれる?」といったこともあった。

「クイック折りたたみ機構」は便利なのだが、ちょっと力を加えただけで、たたまれてしまい困る場合も

最後にAurvana Goldだ。Aurvana Goldは、ハウジングのスイーベル機能は備えており、フラットな形にはすることはできる。しかし、φ40mmドライバーを採用したオーバーイヤータイプのヘッドホンで、もともと大型のハウジングを備えたモデルだ。フラットになった状態でも、MDR-ZX110NCなどと比べるとかさばるのは否めず、携帯性という点ではやはり不利になる。ただし、Bluetoothヘッドホンなので、持ち運び時にケーブルが邪魔になることがないのは優れた点だといえるだろう。

他の2モデルに比べて大型の「Aurvana Gold」では、フラットになってもやはり携帯性では不利

ノイズキャンセルをオン・オフすると音の傾向が変わるか

ノイズキャンセリングシステムを搭載しているヘッドホンでは、システムのオン・オフを切り替えると音の傾向が大きく変わる場合がある。オフの場合、基本的にはパッシブタイプのヘッドホンとして動作するため、アンプや内蔵しているDSPによる処理が行われない。また、ノイズキャンセリングシステムを効果的に動作させるため、低域寄りのセッティングになっている製品が多い。

まずは、QuietComfort 25だ。ノイズキャンセリングシステムをオフにした状態では、低域の強さは感じられるが、密閉型ヘッドホンらしい力強いサウンドだ。ただし、広がり感はあまり大きくなく、ヌケのよさは感じられない。

ノイズキャンセリングシステムをオンにすると、明るくにぎやかなサウンドになる。音の広がりも強調されるようだ。ただし、DSPによるエフェクトがかなり強く、楽曲の種類によっては少々雑味が感じられる場合もある。とはいえ、それはわずかなものなので、ノイズキャンセリングシステムは常時オンにしておいて問題ないだろう。

MDR-ZX110NCの場合も、大まかな傾向はQuietComfort 25と同じだ。オフだと、ちょっとこもった感じの低域寄りのサウンドで、オンにすると元気でクリアなサウンドになる。高域の伸びや音の広がりもオンのときのほうが勝っている。MDR-ZX110NCも、常時ノイズキャンセリングシステムをオンにするのがオススメだ。

最後にAurvana Goldなのだが、このヘッドホンはBluetoothヘッドホンでもあり、ノイズキャンセリングシステムをオフにしてもパッシブ動作とはならない。プレーヤーとアナログ音声ケーブルで接続すればパッシブ動作をさせることもできるが、このヘッドホンの場合、ワイヤレスで使用するのがスタンダードな状態だといえるだろう。

Aurvana GoldはBluetoothで接続している場合、ノイズキャンセリングシステムをオンにしてもオフにしても、そのサウンドにはほとんど変化がない。音の広がりも感じられ、定位もはっきりとしている。ドライバーサイズやハウジングのサイズが大きいこともあり、自然なサウンドだ。

3本のノイズキャンセリングヘッドホンを使用してみて

今回使用したQuietComfort 25、MDR-ZX110NC、Aurvana Goldの3本は、それぞれ異なった特徴を持ったモデルだ。

ノイズキャンセリング能力に関してはQuietComfort 25が他を圧倒していた。しかし、それだけでは決められないのが、持ち歩くことを前提にしたヘッドホンだ。外に持ち出す機器は、どんなに頑丈なものでもいずれ壊れる。となると、携帯性と価格の安さという点でMDR-ZX110NCも悪くないチョイスだ。また、Bluetoothの利便性と大型ドライバーによるサウンドが特徴のAurvana Goldも、魅力的だといえるだろう。