前回は、最新ノイズキャンセリングヘッドホン3製品の室内での性能を比較してみた。掃除機のそばといった極端な環境を除けば、どれもよくノイズを抑えており、性能に不満はない。

ノイズキャンセリングヘッドホンは、室内で静寂を得るために使用することもあるが、どちらかというと、通勤通学などの交通機関内で使用されることが多いはずだ。そこで今回は、屋外でのノイズキャンセリング能力について比較してみた。なお使用しているヘッドホンは前回と同様に、ボーズの「QuietComfort25 Acoustic Noise Cancelling headphones」(以下QuietComfort 25)、ソニーの「MDR-ZX110NC」、クリエイティブメディアの「Aurvana Gold」の3製品だ。

左から「QuietComfort25 Acoustic Noise Cancelling headphones」、ソニーの「MDR-ZX110NC」、クリエイティブメディアの「Aurvana Gold」

幹線道路のノイズはどのくらい抑えられる?

まずは、幹線道路脇でどの程度ノイズを抑えられるかを調べてみた。測定したのは、国道246号線の川崎市と横浜市の境あたりだ。交通量の多い片側2車線の道路で、朝と夕方のラッシュ時には渋滞も発生する。それ以外の時間帯はかなりの速度で車が流れている。

車が通過しているときの騒音を道路脇で測定してみたところ、80dB弱と、かなりのうるささだ。この状態で3本のヘッドホンを装着して、ノイズキャンセル機能をオンにしてみた。

交通量の多い幹線道路脇でノイズキャンセリング性能を比較

まずは、QuietComfort 25だ。車の走行音はエンジン音や風切り音、タイヤが路面を転がるロードノイズなどが含まれている。QuietComfort 25の場合、音が小さくなるのはもちろんなのだが、音の質が変わるのが大きな特徴だ。タイヤが路面を転がる音以外はほとんど聞こえなくなる。かなり不思議な感覚だ。これはぜひ体験してみてほしい。

続いてMDR-ZX110NCだ。MDR-ZX110NCでは、QuietComfort 25でみられた音の質の変化は起こらないが、全体的にノイズレベルが下がるのは感じられる。例えば、バス停でバスを待っているとき、あるいはバスに乗車しているときでも、十分に音楽を楽しむことができるだろう。ただし、音域によってノイズの減衰量に差があるようで、中高域は比較的よく抑えられているが、低域はノイズキャンセルをオンにしてもまだノイズが残っているのを感じられる。

最後はAurvana Goldだ。Aurvana Goldのノイズキャンセルの傾向は、MDR-ZX110NCに近く、全体的にノイズの音量が下がるタイプだ。ただし、耳を全体的に覆うイヤーカップを採用している分、MDR-ZX110NCに比べてノイズの抑制量は大きいように感じられる。また、MDR-ZX110NCで見られた音域による抑制量の差は、Aurvana Goldでは感じられない。

電車の中ではどの程度ノイズを抑制できるのか?

続いて電車の中でどの程度ノイズを抑えられるかを調べてみた。使用した路線は東急田園都市線の神奈川県内の区間だ。走行時の騒音を測定してみたところ90dB弱という結果になった。数値的には、幹線道路沿いよりも電車内のほうが騒々しいことになる。

90dB弱と、かなり騒々しい

電車内で、3本のヘッドホンを装着してノイズキャンセルをオンにし、騒音の変化を調べてみた。

まずはQuietComfort 25だ。QuietComfort 25の場合、道路脇で試したときと同様に音の質が変化する。車輪が線路の継ぎ目を通過する音以外は、ほとんど聞こえなくなる。電車内のアナウンスも小さくなるが、決して聞き取れないレベルではない。

続いてMDR-ZX110NCだ。全体的なノイズレベルは下がるが、道路脇で試したときと同様に、低域を中心としたノイズがわずかながら残る。

最後はAurvana Goldだ。全体的にノイズのレベルを抑える傾向のあるAurvana Goldだが、道路脇で試したときと同様に、MDR-ZX110NCに比べるとノイズの減衰が大きいのが感じられる。

しかし、室内や道路脇で試したときには気付かなかった「サーッ」という音がかすかに聞こえてくる。これは外部からではなく、ヘッドホンが発している音だ。正確な原因は筆者には分からないのだが、多分周囲の騒音のレベルが極端に高く、それに合わせてヘッドホンのノイズキャンセル回路が働こうとした結果ではないだろうか。ノイズキャンセル回路は周囲の騒音をマイクで拾い、その逆位相の音をヘッドホン内に流すことで、外部の騒音を相殺する仕組みだ。外部の騒音が大きければ大きいほど、ノイズキャンセル回路の作り出す音も大きくなる。その過程で何らかの電気的ノイズが増幅されて聞こえてきているのではないだろうか。

次回は、この3本のヘッドホンでノイズキャンセルをオンオフした際の音質の変化、そして、ノイズキャンセリングヘッドホンでは重要となるポータビリティについてまとめてみたい。