この記事では、スマートフォンや音楽プレーヤーに付属するイヤホンからの買い替え対象になりやすい価格帯の製品について、使い勝手や音質などをチェックしている。今回も前回に引き継ぎ、ソニーの「XBA-C10」」を取り上げ、主にサウンド面について話を進めていきたいと思う。

「XBA-C10」の基本的な音の傾向は?

「XBA-C10」

XBA-C10はバランス重視型のモデルというのが、2週間ほど使用して受けた印象だ。シングルBA(バランスド・アーマチュア)モデルなので低域の量感は仕方のない部分があるが、中高域にかけての解像度や伸びのある高域を楽しむことができる。

手持ちのヘッドホンとテストトーンで比較してみたところ、同じソニーの「XBA-H1」との比較では、1kHz以外のすべての周波数でXBA-H1のほうがレベルが高い。同じ自社製のBAドライバーを使用しているにもかかわらず、高域でもXBA-H1のほうがレベルが強く感じられる。

また、オーディオテクニカの「ATH-IM50」と比較してみると、32Hz~125Hzまでの低域ではATH-IM50のほうが明らかにレベルが高い。250Hz~500HzでもATH-IM50のほうがレベルが高いが、その差は少なくなってきている。2kHz~4kHzでは、2本の差はあまり感じられず、8kHz以上では明らかにXBA-C10のほうがレベルが高くなっている。

手持ちのイヤホンと比較してみた

ある意味で当たり前の結果になってしまったのだが、その後、XBA-C10を電車の中で使用する機会があった。その際に、せっかくなのでいくつかイヤーピースを交換して試してみたところ、気づいた点があった。ここでは、それについて触れてみたい。

別のイヤーピースで試してみると……

インナーイヤーヘッドホンの場合、イヤーピースを換えることで、音の傾向や遮音性が変化する。XBA-C10が標準で装備しているイヤーピースは「ハイブリッドイヤーピース」で、製品に付属しているものと同じものがオプションとして「EP-EX11」という型番で販売されている。さらに、製品には付属していないが、「ノイズアイソレーションイヤーピース」もオプションとして設定されている。型番は「EP-EXN50」。どちらもソニーのインナーイヤーヘッドホンで広く使われているイヤーピースだ。

左が「ノイズアイソレーションイヤーピース」で、右が「ハイブリッドイヤーピース」

さらに今回は、Complyのイヤホンチップも用意し、これも含めて比較を行ってみた。なお、XBA-C10やXBA-H1にマッチするComplyのイヤホンチップは「T200」のようだ。Complyイヤホンチップを販売しているエントリージャパンのWebサイトには、各メーカーのヘッドホンやイヤホンとの対応表が掲載されている。そこには、発売から間もないXBA-C10やXBA-H1は掲載されていないのだが、EP-EX11やEP-EXN50を使用する「XBA-1SL」などは掲載されている。これらに対応しているComplyイヤホンチップがT200ということなので、おそらくこれで問題はないだろう。

Complyのイヤホンチップ「T200」

ノーマルのハイブリッドイヤーピースの場合、XBA-C10を装着していないときに比べると少ないが、それでも外の音が普通に聞こえてくる。電車が走行している区間によっては、プレーヤーのボリュームを上げ気味にしないと音楽が聞き取りにくい場合もある。

シリコンフォームイヤーピースを装着すると、特に中高域の外来ノイズが抑制されることに気付く。さらに、低域の量感もアップする。

最後にComplyのT200に交換してみる。T200を装着すると、中高域だけでなく全域にわたって外来ノイズが減衰していることが実感できる。ノイズキャンセリングシステムとは異なり、連続したノイズ以外も減衰させるため、電車内のアナウンスも聞きにくくなる。遮音性は非常に高いといえるだろう。ところが、音の傾向に関しては、シリコンフォームイヤーピースほど低域は強くはならない。感覚的には、ハイブリッドイヤーピースとシリコンフォームイヤーピースの中間ぐらいだ。

「XBA-C10」に「T200」を装着

確かなことはわからないが、おそらくComplyのチップでは、全域にわたって音を吸収減衰させているのではないだろうか。それに対して、シリコンフォームイヤーピースでは、低域を選択的に吸収させないような何らかの工夫がなされている感じだ。これら2つに比べると、ハイブリッドイヤーピースは、音のエネルギーを多少とも外部に逃している感じがする。

Complyチップとの組み合わせで、上位モデルに近いパフォーマンスを発揮

先ほどのXBA-C10とXBA-H1、ATH-IM50で行ったテストトーンでの比較では、イヤーピースはバラバラだった。では、すべてをComplyのTシリーズにしてみたらどうなるのか。改めて試してみた。なお、ATH-IM50には付属のComplyの「T500」を取り付けている。

さて、同じComplyのTシリーズを装着して、先ほどと同様にテストトーンを聞き比べてみた。XBA-C10とXBA-H1を比べてみると、低域では2本に差は感じられない。4kHz以上になるとHBA-H1のほうがややレベルが高く感じられるが、その差はわずかでしかない。

同じComplyのTシリーズで比較

続いてXBA-C10とATH-IM50を比較してみる。標準のイヤーチップでは、ATH-IM50のほうが低域が出ていたのだが、同じComplyのTシリーズを使用してみると、低域の差は感じられなくなった。高域では相変わらずXBA-C10のほうが、レベルが高くなっている。

音楽再生の場合でも、ComplyイヤホンチップとXBA-C10の組み合わせは悪くない。細かいことを言えば、XBA-H1とComplyイヤホンチップの組み合わせに比べると、音の広がりが少し弱く感じられる。また、ATH-IM50とComplyイヤホンチップの組み合わせに比べるとボーカルなど中域の解像度が弱く感じられる。しかし、XBA-C10は低価格なエントリーモデルだ。その点を考えると、非常に高いコストパフォーマンスだといえるだろう。

また、前回取り上げたように、XBA-C10のハウジングはコンパクトで、持ち運びや装着時に邪魔になりにくい。通勤や通学などの際に使用する、いわゆる"デイリーユース"のヘッドホンとしては、なかなか優れたバランスを持ったモデルだといえるだろう。

次回に続く