ハイレゾ音源をヘッドホンで楽しもうと思った場合、意外と手軽に環境を整えることができる。では、スピーカーでハイレゾ音楽を楽しむ場合はどうだろうか。

スピーカーでハイレゾ音源を聴く場合の環境

スピーカーでハイレゾ音源を楽しむのに必要なものを並べてみよう。まずは、ハイレゾ音源に対応したプレーヤー。続いてDAC、アンプ、スピーカーということになる。

プレーヤーはPCでもかまわないし、ネットワークメディアプレーヤーや、専用のプレーヤーを利用してもかまわない。ただし、プレーヤーによって出力の形態が異なるので注意が必要だ。PCを使用する場合、USBポートでUSB DACに接続するスタイルをとるのが一般的だ。専用のプレーヤーやネットワークメディアプレーヤーの場合、DACとは同軸、または光デジタルオーディオケーブルで接続する場合が多い。DAC側でこれらの入力端子を装備しているか、装備していても、その入力が自分が使用したいサンプリングレート・量子化ビット数に対応しているかをチェックする必要がある。

アンプは、DACのアナログ出力と接続する。ハイグレードモデルでは外部ノイズの影響を受けないバランス接続が採用されていることが多いが、普及機はアンバランス接続だ。

これらのうち、既に所持しているものがある場合、例えばアンプとスピーカーはあるという場合には、DACとプレーヤーさえあれば、スピーカーでのハイレゾ音源の再生環境は構築できることになる。

一から手軽に揃えたいのなら、DAC内蔵アンプというチョイスも

オーディオシステムをこれから揃えようという場合、DAC内蔵アンプは手軽なチョイスだ。ティアックの「NP-H750」や、東和電子の「NANO-UA1」、ソニーの「UDA-1」などのリーズナブルなモデルもリリースされている。いずれもハイレゾ音源に対応したUSB DACを搭載する小型のプリメインアンプだ。

そのなかから今回は、2013年10月に発売された「UDA-1」をお借りしたので、これを使用した手軽なシステムを試してみたい。

「UDA-1」

「UDA-1」の外観は、一般的なハーフサイズのプリメインアンプに近い。フロントパネルにはUSBポートとヘッドホンジャック、各種インジケーター、INPUT SERLECTORボタン、ボリューム、電源スイッチが配置されている。ヘッドホンジャックは6.3mmの標準ステレオジャックだ。INPUT SELECTORボタンは、押すたびに入力が1つずつ変わっていくタイプで、ダイレクトに入力を切り替えるにはリモコンを使用するしかない。インジケーターは、現在の入力を表示するものと、ハイレゾ信号が入力されているときに、その種類を示すものが配置されている。

ハイレゾ信号が入力されると、その種別のインジケーターが点灯する

背面パネルには各種接続端子が配置されている。シンプルなモデルなのだが、入力の種類は豊富で、これが高い汎用性を生んでいる。一番左の列はデジタル入力で、上からUSBポート、同軸デジタル、光デジタルの順に並んでいる。USBポートだけでなく、同軸・光のデジタル音声入力端子からも192kHz/24bitの再生が可能だ。また、USBで接続した場合、DSDの再生にも対応している(2.8MHz/5.6MHz)。なお、フロントパネルにもUSBポートが配置されているが、こちらはリニアPCMの48kHz/16bitまでしか対応していない。

「UDA-1」のリアパネル

その右側にあるのは、アナログの音声入出力端子だ。それぞれ1系統装備している。その右がスピーカー端子だ。スピーカー端子はネジ式のターミナルで、バナナプラグにも対応している。スピーカー端子の下には、イコライザーのオン・オフスイッチが配置されている。このイコライザーは、UDA-1の推奨スピーカー「SS-HA3」に特性を合わせるためのもので、それ以外のスピーカーを使用する場合はオフにしておく。

ソニー「UDA-1」を使用したシステム

今回、「UDA-1」をお借りしたところ、推奨スピーカーの「SS-HA3」も一緒に送られてきたので、まずはこの組み合わせを試してみよう。

「UDA-1」と推奨スピーカーの「SS-HA3」

「SS-HA3」はアルミキャビネットを採用したコンパクトな2Way・3スピーカーのブックシェルフ型。キャビネットの前面と上面に配置されているスーパーツイーターが外見上の大きな特徴となっている。

前面と上面にスーパーツイーターが配置されている

スピーカーの背面にはバスレフダクトと接続端子が配置されている。接続端子は大型のネジ式ターミナルだが、「UDA-1」のものとは異なりバナナプラグには対応していない。

「SS-HA3」のスピーカーターミナル

「UDA-1」と「SS-HA3」、PCを接続し、専用のドライバーをインストール。すると、ASIOドライバーが使用できるようになる。プレーヤーには、foobar2000を使用している。

専用ドライバーをインストールするとASIOを利用できるようになる

この状態で、192kHz/24bitのサウンドを聴いてみると、当然のことながら、ヘッドホンで聴いたときに比べて広がり感は強い。SS-HA3に装備されている2本のスーパーツイーターは特に指向性を広く取るように設計されたものだ。セパレーションも高く、コンパクトなスピーカーのため定位もしっかりとしている。ボーカルも非常にリアルに聞こえる。

では、この組み合わせ以外ではどうなのだろうか。手元にあったJBLの「4305H」を接続してみる。「SS-HA3」よりも中低域が前にでてくるようなサウンドで、さらに広がり感も「SS-HA3」のときよりも高く感じられる。コンプレッションドライバーとホーンの効果なのだろう。「SS-HA3」の場合、縦方向の広がりが強く感じられたのだが、「4305H」の場合は、横方向の広がりがより強く感じられる。どちらかというと、こちらのほうが自然な感じだ。

他のスピーカーと組み合わせも楽しい「UDA-1」

「UDA-1」はエントリークラスの製品だが、DAC部分とアンプ部分のいずれにも、決して手抜きはない。出力23W×2と、あまり大きなドライブ力を持っているわけではないのだが、手持ちのシステムで、スピーカーの効率が極端に低くない場合には、アンプを「UDA-1」に置き換えるだけでも十分に満足できるサウンドを実現できるだろう。また、「SS-HA3」との組み合わせは素直で高バランスなのだが、それ以外のスピーカーとの組み合わせもいろいろと楽しめそうだ。

DACとアンプをそれぞれ揃えるよりも、シンプルで使い勝手のよいシステム

PCにアドオンするだけで、ハイレゾオーディオ環境を構築できるのがDAC内蔵アンプの大きなメリットだ。スピーカーだけでなくヘッドホンでのリスニングも1台でこなせ、PC用以外の入力も充実するなど汎用性の高さもポイントだ。

単体のDACとアナログアンプを接続したシステムの場合、必然的に操作系が2つに分かれてしまう。それに対して、DAC内蔵アンプでは、ヘッドホンで聴くときもスピーカーで聴くときも、操作は同じで使い勝手が高い。また、設置スペースやケーブルの引き回しなどについてあまり考慮せずに済むのも利点だ。