【コラム】

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88 いまさらながらのインターネットラジオ(1)

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「インターネットラジオ」という言葉を聞いたことはあるという人は多いようだが、日常的に利用しているという人はどのくらいいるのだろうか。今回から数回、インターネットラジオという単語自体は耳にしたことがあるが……という人向けに、その世界の一部を紹介していこうと思う。

インターネットラジオは、使っている人は非常に詳しいが、そうでない人は興味すら持っていないという傾向が強いサービスだ(大抵のものがそうかもしれないが……)。いわゆる情報の偏りが激しい分野だといえるだろう。今回から数回の記事では、既にインターネットラジオを使用している人向けではなく、全く使ったことのない人に「こういった世界もあるんだ」と感じてもらえる内容にしていこうと思う。そういう人は、興味すらないような気もするので、先行き不安ではある。

まず、インターネットラジオについて語る前に、そもそものラジオについて、ある程度のことを書いておかなければならないだろう。言うまでもなく、ラジオ放送を受信するには、受信のためのラジオとアンテナが必要だ。中でもアンテナは、良好な受信環境を構築するには重要なポイントとなる。

一般的な中波ラジオでは、放送を受信するのに本体内蔵のバーアンテナを使用している。バーアンテナは、フェライトコアに細い被覆電線を巻き付けたもので、バーの垂直方向への指向性と、サイズの割に高い"利得"(入力と出力の比、「ゲイン」ともいう)を特徴としている。普通に近隣の中波ラジオ放送を受信するにはこれで十分なのだが、残念ながら最近の家屋内での電波環境は、控えめに言っても最悪だ。特に、集合住宅の多くでは、鉄筋コンクリートが使用されているため、完全ではないがシールド効果があり、外からの電波が減衰することになる。また、家庭内に雑音発生源が多数存在することも大きな問題だ。

バーアンテナの例

これらの原因により、都市部を中心として、外に出れば放送を受信できる地域であるにもかかわらず、昼間の室内ではほとんど放送を受信できない、あるいは強力な1~2局しか受信できないというケースが多く生じている。筆者は以前、ソニーのラジオレコーダー「ICZ-R50」のレビューを行った。大きめのバーアンテナを内蔵するなど、なかなか高性能な製品なのだが、それでも、室内では上記のような状態で、普及タイプのラジオとあまり変わりがない状況だった。電波の届かないところでは、何をやっても受信できないものだ。

以前レビューを行った、ソニーの「ICZ-R50」

では、屋外に立てた外部アンテナでもつなげば?……という話になるのだが、中波用のアンテナは、かなりかさ張る。中波放送に使われている電波は、波長でいうと565m~187mで、もちろんそんなサイズのダイポールを張るわけには行かないので(ダイポールだと1/2長だが)、一般的には、ループアンテナが使われる。

ループアンテナは、ループ面の垂直方向に強い指向性を持つため、混信にもある程度効果がある。しかし、普通は一から自分で作らなくてはならないため、めんどうだ。ちなみに、既製品としては、受注生産だが、ミズホ通信の製品が存在している。

現在主流となっているポータブルラジオの多くは、外部アンテナ端子を持っていないが(前述したICZ-R50は、付属のループアンテナ用のアンテナ端子を装備している)、アンテナ端子を持っていなくても、下の写真のようにすれば、外部アンテナを接続することは可能だ。

写真はラジオにアンテナコードを巻き付けたところ。これでも受信できる

ループアンテナ以外の手軽な方法としては、電灯線アンテナというものも存在する。家庭に電気を送っている電線をアンテナとして使用するという方法だ。一般的には、コンセントプラグの片方だけを使用して、そこにコードを接続。コードとプラグの端子との間に100pF程度のセラミックコンデンサを入れておく。セラミックコンデンサは安全のために入れておくもので、耐圧は、人によって意見が違うが(200V以上という人もいれば1kV以上という人もいる)、筆者は500Vのものを使用している。これで、今のところ特に問題は出ていない(ただし、もしこれを用いる場合は自己責任で)。

電灯線アンテナ

耐圧500Vで容量100pFのセラミックコンデンサ

ただし、電灯線アンテナは、自分が受信したい目的の電波だけでなく、空中を飛び回っているありとあらゆる電磁波を拾ってくる。屋内に雑音源がある場合や、電波が弱くて受信できない場合には効果があるが、他の放送局からの電波が強くて目的の放送局が受信できないという場合は効果的ではない。

以上は中波放送の話だが、FM放送もかなり厳しい状態だ。FMラジオには、一般的にはロッドアンテナが使用されている。それよりも簡易なものでは、イヤホンのコードをアンテナ線として使用するもの、被覆電線がアンテナとして本体より出ているものなどがある。こういったアンテナを使用した場合の室内での受信状況の悪さは、雑音源に対する強さを除けば、基本的に中波と同様だ。

2素子のFMアンテナの例。写真は八木アンテナ製の「F-P2B-B」。ベランダや手すりなどにも取り付けることができる

さらに、FMにはFM特有の問題が存在している。それがテレビ地上波のデジタル化だ。これまで、FM放送を受信するのに、同じVHFの電波を使用するテレビ用のアンテナに接続するという方法がよく使われてきた。もちろん、FMの放送局がテレビの放送局と同じ方向にある必要がある。さらに、テレビアンテナは、FM専用のアンテナに比べると効率は落ちるが、それでも強電界地域ならば問題なく受信できる。しかし、テレビがデジタル化でUHFに移行してしまったため、新築の物件でVHFアンテナが取り付けられる例は少なくなっている。ベランダや窓の手すりに2素子ぐらいのアンテナでも取り付けようかという感じだ。いずれにせよ、外部アンテナが必須のオーディオ用FMチューナーは、存亡の危機だといえるだろう。

このような感じで、現在のラジオの受信環境は、かなり悪い。そこで、こういう電波の状況に左右されずにラジオを聞くことができる手段としても注目(?)されているのが、インターネットラジオだ。国内でメジャーなインターネットラジオサービスである「radiko.jp」も、その目的として、都市部を中心にした受信環境悪化の解消をあげている。

--次回に続く--

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インデックス

連載目次
第116回 クラッチバッグのようなデザインのBluetoothスピーカー「Beoplay A2」
第115回 デスクトップのリスニング環境に適した「SoundBlaster X7」
第114回 ComplyイヤーチップのPシリーズは使い方を選ぶがスグレモノ
第113回 Complyイヤーチップのプレミアムモデルとスタンダードモデルとの差を探る
第112回 最新ノイズキャンセリングヘッドホンの性能を検証(3)
第111回 最新ノイズキャンセリングヘッドホンの性能を検証(2)
第110回 最新ノイズキャンセリングヘッドホンの性能を検証(1)
第109回 標準付属品のイヤホンから買い替える高"コスパ"イヤホン(7)
第108回 スマートフォンに適したBluetoothスピーカー(8)
第107回 標準付属品のイヤホンから買い替える高"コスパ"イヤホン(6)
第106回 標準付属品のイヤホンから買い替える高"コスパ"イヤホン(5)
第105回 標準付属品のイヤホンから買い換える高"コスパ"イヤホン(4)
第104回 標準付属品のイヤホンから買い換える高"コスパ"イヤホン(3)
第103回 標準付属品のイヤホンから買い換える高"コスパ"イヤホン(2)
第102回 標準付属品のイヤホンから買い換える高"コスパ"イヤホン(1)
第101回 多機能アクティブスピーカー「SoundBlaster Axx」を使ってみた
第100回 手軽なところからスタートするハイレゾ音源再生環境(4)
第99回 手軽なところからスタートするハイレゾ音源再生環境(3)
第98回 手軽なところからスタートするハイレゾ音源再生環境(2)
第97回 手軽なところからスタートするハイレゾ音源再生環境(1)
第96回 Bluetoothスピーカーの置き方(4)
第95回 Bluetoothスピーカーの置き方(3)
第94回 ちょっと便利なBluetoothスピーカー「Creative Airwave HD」
第93回 Bluetoothスピーカーの置き方(2)
第92回 Bluetoothスピーカーの置き方(1)
第91回 いまさらながらのインターネットラジオ(3)
第90回 スマートフォンに適したBluetoothスピーカー(7)
第89回 いまさらながらのインターネットラジオ(2)
第88回 いまさらながらのインターネットラジオ(1)
第87回 ミニマムなデジタル録画環境として「nasne」はあり? なし?
第86回 インドア用のヘッドホンを買い換えた
第85回 スマートフォンに適したBluetoothスピーカー(6)
第84回 スマートフォンに適したBluetoothスピーカー(5)
第83回 スマートフォンに適したBluetoothスピーカー(4)
第82回 スマートフォンに適したBluetoothスピーカー(3)
第81回 スマートフォンに適したBluetoothスピーカー(2)
第80回 スマートフォンに適したBluetoothスピーカー(1)
第79回 キャビネット容積が限られたスピーカーでも高音質を実現するCONEQ技術
第78回 ボーズの1.1chホームシアターシステム「Lifestyle 135」の音を聴いてみた
第77回 チューナー内蔵レコーダーの登場で便利になった「スカパー!HD」
第76回 ヤマハらしいサウンドのヘッドホン「HPH-200」
第75回 実用的なAndroidタブレットプレーヤ「ZiiO」
第74回 ソニー、RM-PLZ530D - 学習機能付きリモコンのマクロ機能を使いこなす
第73回 ウォークマンがiPodを再び抜いた件に関して
第72回 2011年のレシーバー
第71回 3D放送の一般化にはまだ時間がかかるらしい
第70回 年末以降のテレビ需要
第69回 何インチからが大画面か
第68回 圧縮音楽ファイルのエンコード方法とビットレートによる音質の違いを調べる
第67回 ZEN X-Fi Styleを使ってみた
第66回 JBLの最新モデルを聞き比べ(後編)
第65回 JBLの最新モデルを聞き比べる(前編)
第64回 クリエイティブのBluetoothスピーカー「ZiiSound D5」を試してみた
第63回 一から始めるAV機器ネットワーク(3) - もっとメジャーになってほしいDLNA
第62回 ちょっと大きめのパーソナルTVが欲しい - シャープのLED AQUOS「LC-32SC1」を試用する
第61回 一から始めるAV機器ネットワーク(2) - もっとメジャーになってほしいDLNA
第60回 一から始めるAV機器ネットワーク(1) - もっとメジャーになってほしいDLNA
第59回 セカンドテレビを最新仕様にアップグレードするネットワークメディアプレーヤー(2)
第58回 セカンドTVを最新仕様にアップグレードするネットワークメディアプレーヤー
第57回 デジタルノイズキャンセングヘッドホン「MDR-NC300D」
第56回 ウォークマン最高モデル Xシリーズを試す - ノイズキャンセリング効果とサウンド
第55回 ウォークマン最高モデル Xシリーズを試す - 操作性と付属機能
第54回 遅ればせながらBDレコーダーを導入(1)
第53回 高音質タイプの骨伝道ヘッドホンを試してみる - ティアック Filltune「HP-F200」
第52回 HDMI 1.3時代のAVアンプ機能比較(1) - エントリークラス編
第51回 エバーグリーンの低価格メディアリペアキットを試す
第50回 W-ZERO3[es]とクリエイティブ「Xmod」で「どこでも高音質」を実現したい(2)
第49回 マクセルの高音質システムヘッドフォン「Vraison」を試す
第48回 流行の丈夫なDVD-Rはどこまで頑丈か
第47回 小型デジタルハイビジョン液晶テレビ、東芝REGZA 20C2000を使う(2)
第46回 小型デジタルハイビジョン液晶テレビ、東芝REGZA 20C2000を使う(1)
第45回 ドルビーバーチャルスピーカー採用2.1chサラウンドシステムをセッティング
第44回 W-ZERO3 [es]とクリエイティブ「Xmod」で「どこでも高音質」を実現したい(1)
第43回 ICレコーダーを購入
第42回 骨伝導ヘッドフォンを買ってみた
第41回 USBからの電源でも動作する高音質アダプター
第40回 低価格化が進むフルHD37V型液晶テレビ
第39回 ソニー「ネットジューク」最新モデルをチェックする(2) - 新モデルの音質
第38回 ソニー「ネットジューク」最新モデルをチェックする(1) セッティングとUI
第37回 オーディオテクニカの新型インナーイヤーヘッドフォンを聞く
第36回 圧縮音楽の補正技術は本当にうまく働くのか
第35回 ロジクールのマルチリモコン「Harmony」の途中経過
第34回 団塊の世代をターゲットにした製品って
第33回 ロジクールのマルチリモコンを試す(1)
第32回 スピーカーで聴くバーチャルサラウンド
第31回 HD DVDとBlu-ray Disc、ソフトのタイトルは?
第30回 コンパクトなスピーカーの音量は足りる?
第29回 HDDのトラブルに泣かされる
第28回 徹底的に低価格な謎のMP3プレイヤーの試聴にチャレンジする
第27回 ヘッドフォンサラウンドを手軽に試す(2)
第26回 ヘッドフォンサラウンドを手軽に試す
第25回 余ったメディアの再利用
第24回 1年前と最新のポータブルオーディオプレイヤー
第23回 測定したヘッドフォンの音漏れ以外の性能はどうなのか(2)
第22回 測定したヘッドフォンの音漏れ以外の性能はどうなのか(1)
第21回 ポータブルオーディオプレーヤーの音をスピーカーで鳴らす
第20回 ヘッドフォンの音漏れは、言われているほどにうるさいのか(4)
第19回 ヘッドフォンの音漏れは、言われているほどにうるさいのか(3)
第18回 ヘッドフォンの音漏れは、言われているほどにうるさいのか(2)
第17回 ヘッドフォンの音漏れは、言われているほどにうるさいのか(1)
第16回 ビデオ用8倍速のDVD-R DLメディア登場
第15回 ポータブルスピーカーはどのくらい聴けるのか(2) - Travelシリーズ編
第14回 ポータブルスピーカーはどのくらい聴けるのか(1) - Travelシリーズ編
第13回 BauXar Marty101試聴会に行ってきました
第12回 オーディオセレクター+パワードスピーカーでのリスニング環境構築
第11回 マルチメディア用2.1chスピーカーをオーディオ製品として聴く
第10回 精度を要求しない測定環境(2) - 身の回りの機器を測定する
第9回 精度を要求しない測定環境(1)
第8回 DLNAガイダンス準拠機器ではないネットワークメディアプレーヤーを試す
第7回 音楽データをどこに置くかがポイント
第6回 バッファローLinkTheaterでPC内の音楽ファイルを再生する
第5回 PC内のMP3ファイルをNAS-M7HDに取り込む
第4回 今度こそNAS-M7HDでPC内の音楽をストリーミング再生する
第3回 突然、長瀬産業のHMP-100のレビューを行う
第2回 オーディオのネットワークを考えてみる(2)
第1回 オーディオのネットワークを考えてみる(1)

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