【コラム】

暮らしのサウンドビジュアル

87 ミニマムなデジタル録画環境として「nasne」はあり? なし?

村田修  [2012/05/31]

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ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が7月19日に発売する、メディアストレージサーバー「nasne(ナスネ)」の合同体験会が5月21日に行われた。体験会の詳細については、レポート記事を参照して欲しいが、ここでは、ミニマムな録画環境としてのnasneについて、筆者が知り得た範囲のことをお伝えしようと思う。

nasneはデジタル放送チューナーを搭載したNASなのだが、使い方によっては、ミニマムなデジタル録画環境を構築することが可能だ

まずは、基本的なことだが、nasneはHDMIなどの直接的な映像音声の出力手段を持たない。そのため、nasneで録画した番組を視聴するには、DTCP-IPに対応したDLNAプレーヤーが必要になる(もちろんホームネットワーク環境も必要だ)。

背面の端子は、アンテナ端子とネットワーク端子、ACアダプターを接続するためのDC IN端子、HDDを接続するためのUSB端子のみとシンプルだ。USB端子には2TBまでのHDDを接続できる。対応しているフォーマットはFAT32形式だ。なお、ここに接続できるのはHDDのみで、他デバイス、例えばフラッシュメモリーなどを接続することはできない

各メーカーのテレビでは昨今、ネットワークに対応しているものが増えている。それらは基本的に、ビデオのオンデマンドサービス(VOD)や「Youtube」などの利用を主眼とするものだが、DLNAプレーヤー機能も多くの機種に搭載されている。例えばソニーでは「ソニールームリンク」として、現行のブラビア全てに実装されている。nasneではこの機能を使用して、録画した番組を視聴することになるわけだ。

DLNAプレーヤー機能を搭載しているのはブラビアだけではない。パナソニックでは「お部屋ジャンプリンク」として「C5」シリーズ以外の現行モデルで搭載。東芝では「Z」「R」の各シリーズが対応、シャープでは「V5」以上の全モデルがDLNAプレーヤー機能を搭載している。もちろん、これらのテレビ全てがnasneで録画した番組を再生できるという保証はないが、特にソニー製のテレビのみで動作するような制限は掛けないということなので、おそらくは、普通に動作するのではないかと思われる。

見にくい写真で申しわけないが、XPERIA上で「Gガイド.テレビ王国CHAN-TORU」を動かしているところ

さて、録画した番組を見るには、まず録画を行わなければならない。nasneは、「torne(トルネ)」を初めとするソニー製品から録画予約操作を行うことが可能だ。しかしそれ以外にも、nasneで録画予約を行う手段は存在する。それが、同社のBDレコーダーをスマートフォンやPCから操作するためのWebアプリ「Gガイド.テレビ王国CHAN-TORU」(以下CHAN-TORU)だ。

Google Chromeで動作中の「CHAN-TORU」。レコーダーの電子番組表からの録画予約と、感覚的には変わらない。マウスなど、使い慣れたポインティングデバイスを使用している分、こちらのほうが快適だったりもする

CHAN-TORUは、PCやタブレットでは、Google Chrome、あるいはApple SafariといったWebkit採用ブラウザで利用できる。また、Android 2.2以降やiOS 4.3以降でも動作する。

現状のCHAN-TORUでできることは、使用しているBDレコーダーによって異なるが、対応機種ならば、最低でも番組表の表示と録画予約は可能だ。ソニーのBDレコーダーの2008年以降のモデルならば、録画予約リスト・録画タイトルリストの閲覧、予約のキャンセル、録画タイトルの選択削除・まとめて削除が可能だ。

最近のテレビ+スマートフォンという組み合わせならば、既に両方とも持っているという人は少なくないだろう。CHAN-TORUで録画予約動作を行い、DLNA対応のテレビで視聴するという組み合わせならば、16,980円で、3波対応のレコーダーを導入することができることになる。

では、この環境の使い勝手はどうなのだろうか。個人的には、CHAN-TORUは、直接リモコンで操作する場合に比べてレスポンスがイマイチだという印象がある。とくに起動時の遅さが気になるところで、外出先で自宅のBDレコーダーに予約を入れようとすると、BDレコーダーが起動するまでかなり待たされることになる。ところがnasneの場合、レコーダーの場合と違って"サーバー"に類する製品なので、常に起動状態にしておくことが多い。起動までの待ち時間は発生しないし、起動後の通常の操作も、会場で見た限りはBDレコーダーをCHAN-TORUで操作するよりは速い。また、スマートフォンの小さい画面で録画予約を行うのは少々つらいが、PCやタブレットならば、レコーダーに搭載されている番組表から予約を行うのと、感覚的には変わりはない。

CHAN-TORUは、GoogleやYahoo!、Twitter、mixi Open IDのアカウントでログインして使用することになる。1つのアカウントでは、1つの機器しか制御することができない。別のアカウントでログインし直すことで、複数の機器の操作を行うことも可能だが、やはり少々手間に感じる。現在、CHAN-TORUを利用しているユーザーは、基本的に同社のBDレコーダーのユーザーということになる。そこに、見たい番組が重なったときのための追加のレコーダーとしてnasneをプラスすると、現状のCHAN-TORUは面倒な印象だ。

しかし、安心して欲しい。これに関しては、nasneの発売時期にあわせて、CHAN-TORUのアップデートを行うべく、開発を進めているらしい。会場で伺ったところによると、最低でもBDレコーダーとnasneといった、2台の機器は登録できるようにしたいとのことだ。

このように、ミニマムな環境でnasneをレコーダーとして使用すると、録画予約はPC、タブレット、あるいはスマートフォンで行うことになり、再生のための操作は、テレビのリモコンで行うことになる。録画と再生で、操作に使用するデバイスが異なるというのは、少々手間かもしれない。しかし録画に関しては、家の中でも外でも同じ操作体系になり、ある意味シンプルだと言えるだろう。

また、現状ではnasneに録画した番組をBDメディアに書き出す際、Windows 7以降を搭載するVAIOが必要になる。レポート記事にもあるとおり、nasneのリリースにあわせて、Windows 7以降を搭載するVAIOユーザーが利用できる形で「VAIO TV with nasne(β版)」が提供される予定だ。

BDに書き出すためだけにVAIOを用意するというのはさすがに気が引けるが、ミニマムなデジタル録画環境としてnasneを見た場合、比較対照になるのは、BDレコーダーではなく、おそらく、テレビに録画機能を付加するといったイメージのシンプルなデジタルレコーダーということになるのではないだろうか。それらの機器の多くはやはりBDへの書き出し手段を持っていない。さらに、nasneとは異なり、長時間録画モードやネットワーク経由での録画予約などはサポートされていない。

手元にあるデバイスを有効活用することで、フレキシブルな録画環境を構築することができるnasneは、PS3ユーザーや、VAIOユーザーだけでなく、幅広い層にとって、手軽なチョイスとなるのではないだろうか。

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インデックス

連載目次
第116回 クラッチバッグのようなデザインのBluetoothスピーカー「Beoplay A2」
第115回 デスクトップのリスニング環境に適した「SoundBlaster X7」
第114回 ComplyイヤーチップのPシリーズは使い方を選ぶがスグレモノ
第113回 Complyイヤーチップのプレミアムモデルとスタンダードモデルとの差を探る
第112回 最新ノイズキャンセリングヘッドホンの性能を検証(3)
第111回 最新ノイズキャンセリングヘッドホンの性能を検証(2)
第110回 最新ノイズキャンセリングヘッドホンの性能を検証(1)
第109回 標準付属品のイヤホンから買い替える高"コスパ"イヤホン(7)
第108回 スマートフォンに適したBluetoothスピーカー(8)
第107回 標準付属品のイヤホンから買い替える高"コスパ"イヤホン(6)
第106回 標準付属品のイヤホンから買い替える高"コスパ"イヤホン(5)
第105回 標準付属品のイヤホンから買い換える高"コスパ"イヤホン(4)
第104回 標準付属品のイヤホンから買い換える高"コスパ"イヤホン(3)
第103回 標準付属品のイヤホンから買い換える高"コスパ"イヤホン(2)
第102回 標準付属品のイヤホンから買い換える高"コスパ"イヤホン(1)
第101回 多機能アクティブスピーカー「SoundBlaster Axx」を使ってみた
第100回 手軽なところからスタートするハイレゾ音源再生環境(4)
第99回 手軽なところからスタートするハイレゾ音源再生環境(3)
第98回 手軽なところからスタートするハイレゾ音源再生環境(2)
第97回 手軽なところからスタートするハイレゾ音源再生環境(1)
第96回 Bluetoothスピーカーの置き方(4)
第95回 Bluetoothスピーカーの置き方(3)
第94回 ちょっと便利なBluetoothスピーカー「Creative Airwave HD」
第93回 Bluetoothスピーカーの置き方(2)
第92回 Bluetoothスピーカーの置き方(1)
第91回 いまさらながらのインターネットラジオ(3)
第90回 スマートフォンに適したBluetoothスピーカー(7)
第89回 いまさらながらのインターネットラジオ(2)
第88回 いまさらながらのインターネットラジオ(1)
第87回 ミニマムなデジタル録画環境として「nasne」はあり? なし?
第86回 インドア用のヘッドホンを買い換えた
第85回 スマートフォンに適したBluetoothスピーカー(6)
第84回 スマートフォンに適したBluetoothスピーカー(5)
第83回 スマートフォンに適したBluetoothスピーカー(4)
第82回 スマートフォンに適したBluetoothスピーカー(3)
第81回 スマートフォンに適したBluetoothスピーカー(2)
第80回 スマートフォンに適したBluetoothスピーカー(1)
第79回 キャビネット容積が限られたスピーカーでも高音質を実現するCONEQ技術
第78回 ボーズの1.1chホームシアターシステム「Lifestyle 135」の音を聴いてみた
第77回 チューナー内蔵レコーダーの登場で便利になった「スカパー!HD」
第76回 ヤマハらしいサウンドのヘッドホン「HPH-200」
第75回 実用的なAndroidタブレットプレーヤ「ZiiO」
第74回 ソニー、RM-PLZ530D - 学習機能付きリモコンのマクロ機能を使いこなす
第73回 ウォークマンがiPodを再び抜いた件に関して
第72回 2011年のレシーバー
第71回 3D放送の一般化にはまだ時間がかかるらしい
第70回 年末以降のテレビ需要
第69回 何インチからが大画面か
第68回 圧縮音楽ファイルのエンコード方法とビットレートによる音質の違いを調べる
第67回 ZEN X-Fi Styleを使ってみた
第66回 JBLの最新モデルを聞き比べ(後編)
第65回 JBLの最新モデルを聞き比べる(前編)
第64回 クリエイティブのBluetoothスピーカー「ZiiSound D5」を試してみた
第63回 一から始めるAV機器ネットワーク(3) - もっとメジャーになってほしいDLNA
第62回 ちょっと大きめのパーソナルTVが欲しい - シャープのLED AQUOS「LC-32SC1」を試用する
第61回 一から始めるAV機器ネットワーク(2) - もっとメジャーになってほしいDLNA
第60回 一から始めるAV機器ネットワーク(1) - もっとメジャーになってほしいDLNA
第59回 セカンドテレビを最新仕様にアップグレードするネットワークメディアプレーヤー(2)
第58回 セカンドTVを最新仕様にアップグレードするネットワークメディアプレーヤー
第57回 デジタルノイズキャンセングヘッドホン「MDR-NC300D」
第56回 ウォークマン最高モデル Xシリーズを試す - ノイズキャンセリング効果とサウンド
第55回 ウォークマン最高モデル Xシリーズを試す - 操作性と付属機能
第54回 遅ればせながらBDレコーダーを導入(1)
第53回 高音質タイプの骨伝道ヘッドホンを試してみる - ティアック Filltune「HP-F200」
第52回 HDMI 1.3時代のAVアンプ機能比較(1) - エントリークラス編
第51回 エバーグリーンの低価格メディアリペアキットを試す
第50回 W-ZERO3[es]とクリエイティブ「Xmod」で「どこでも高音質」を実現したい(2)
第49回 マクセルの高音質システムヘッドフォン「Vraison」を試す
第48回 流行の丈夫なDVD-Rはどこまで頑丈か
第47回 小型デジタルハイビジョン液晶テレビ、東芝REGZA 20C2000を使う(2)
第46回 小型デジタルハイビジョン液晶テレビ、東芝REGZA 20C2000を使う(1)
第45回 ドルビーバーチャルスピーカー採用2.1chサラウンドシステムをセッティング
第44回 W-ZERO3 [es]とクリエイティブ「Xmod」で「どこでも高音質」を実現したい(1)
第43回 ICレコーダーを購入
第42回 骨伝導ヘッドフォンを買ってみた
第41回 USBからの電源でも動作する高音質アダプター
第40回 低価格化が進むフルHD37V型液晶テレビ
第39回 ソニー「ネットジューク」最新モデルをチェックする(2) - 新モデルの音質
第38回 ソニー「ネットジューク」最新モデルをチェックする(1) セッティングとUI
第37回 オーディオテクニカの新型インナーイヤーヘッドフォンを聞く
第36回 圧縮音楽の補正技術は本当にうまく働くのか
第35回 ロジクールのマルチリモコン「Harmony」の途中経過
第34回 団塊の世代をターゲットにした製品って
第33回 ロジクールのマルチリモコンを試す(1)
第32回 スピーカーで聴くバーチャルサラウンド
第31回 HD DVDとBlu-ray Disc、ソフトのタイトルは?
第30回 コンパクトなスピーカーの音量は足りる?
第29回 HDDのトラブルに泣かされる
第28回 徹底的に低価格な謎のMP3プレイヤーの試聴にチャレンジする
第27回 ヘッドフォンサラウンドを手軽に試す(2)
第26回 ヘッドフォンサラウンドを手軽に試す
第25回 余ったメディアの再利用
第24回 1年前と最新のポータブルオーディオプレイヤー
第23回 測定したヘッドフォンの音漏れ以外の性能はどうなのか(2)
第22回 測定したヘッドフォンの音漏れ以外の性能はどうなのか(1)
第21回 ポータブルオーディオプレーヤーの音をスピーカーで鳴らす
第20回 ヘッドフォンの音漏れは、言われているほどにうるさいのか(4)
第19回 ヘッドフォンの音漏れは、言われているほどにうるさいのか(3)
第18回 ヘッドフォンの音漏れは、言われているほどにうるさいのか(2)
第17回 ヘッドフォンの音漏れは、言われているほどにうるさいのか(1)
第16回 ビデオ用8倍速のDVD-R DLメディア登場
第15回 ポータブルスピーカーはどのくらい聴けるのか(2) - Travelシリーズ編
第14回 ポータブルスピーカーはどのくらい聴けるのか(1) - Travelシリーズ編
第13回 BauXar Marty101試聴会に行ってきました
第12回 オーディオセレクター+パワードスピーカーでのリスニング環境構築
第11回 マルチメディア用2.1chスピーカーをオーディオ製品として聴く
第10回 精度を要求しない測定環境(2) - 身の回りの機器を測定する
第9回 精度を要求しない測定環境(1)
第8回 DLNAガイダンス準拠機器ではないネットワークメディアプレーヤーを試す
第7回 音楽データをどこに置くかがポイント
第6回 バッファローLinkTheaterでPC内の音楽ファイルを再生する
第5回 PC内のMP3ファイルをNAS-M7HDに取り込む
第4回 今度こそNAS-M7HDでPC内の音楽をストリーミング再生する
第3回 突然、長瀬産業のHMP-100のレビューを行う
第2回 オーディオのネットワークを考えてみる(2)
第1回 オーディオのネットワークを考えてみる(1)

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