【コラム】

暮らしのサウンドビジュアル

86 インドア用のヘッドホンを買い換えた

 

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ソニーが4月に発売したオープンエアー型ヘッドホン「MDR-MA100」。店頭では、1,980円程度で販売されているケースが多いが、ただの低価格ヘッドホンというわけではない。オープンエアー型らしい、拡がりのあるサウンドを楽しませてくれる1本だ。

筆者がメインで使用していたヘッドホンは、エレガというメーカーのDR-592C2というモデルだ。これは、モニターレプリカとでもいうべき分野の製品で、優れた定位と高い解像度をもった密閉型ヘッドホンだ。その反面、音の拡がりに乏しく、高域の伸びはあまり感じられないし、低域もそれほど出るわけではない。いわゆる、現代的ではないモニターヘッドホンを、少しだけコンシューマ向けに味付けしたというような製品なのだ。デザインは少々無骨で、側圧は最近のヘッドホンと比較するとかなり強い。

かなりレトロなヘッドホン「DR-590C2」

確かに、DR-592C2はメインのヘッドホンなのだが、いつもそればかりを使用しているというわけではない。例えば仕事中に音楽を聴いたり、深夜にテレビを観たりするときに、こんな大袈裟なヘッドホンを使用するのはばかげている。そういった用途向けに、2年ぐらい前から、JVCケンウッド(当時は日本ビクター)の「HP-X73」というモデルを使用していた。HP-X73は、購入した当時でも2,000円もしなかった(と記憶している)ほど低価格なヘッドホンだ。軽量な密閉型のヘッドホンで、長時間使用していても負担にならない掛け心地で、密閉型なのに音の籠もった感じが少なく、中高域もバランスが良い。なかなかコストパフォーマンスが高い製品だ。

壊れた「HP-X73」の代わりに購入したのが、この「MDR-MA100」。質感は、価格ほどには低くない。大型のハウジングは上位モデルと変わらないし、ハウジングバックのメッシュ部分も同様だ

ところが先日、バッファローの「ゼン録」のレビューのために、機器の配置換えをしている際に、誤って踏みつけ、壊してしまったのだ。というわけで、その代わりとして何を使おうかと思っていたところ、ちょうど良さそうなモデルが発売された。ソニーの「MDR-MA100」だ。メーカー機能小売価格は2,468円だが、同社のショッピングサイト「ソニーストアicon」での販売価格は、5月14日時点で1,980円となっている低価格モデルだ。低価格モデルではあるが、価格を下げた犠牲として音質が悪くなっているわけではない。

MDR-MA100は、ソニーが4月に発売したオープンエアーヘッドホン5モデルのうちの1つだ。各モデルについては、ニュース記事を参照して欲しいが、残念ながらこの記事では、MDR-MA100についてはあまり触れられていない(筆者自ら書いておいて「残念ながら」も何もないのだが……)。というのもMDR-MA100は、シリーズのローエンドに位置するモデルで、上位機種に比べると、目を惹く技術や機構が採用されているわけではないからだ。

それはさておき、ここで4製品の全体的な特徴を簡単にまとめると、オープンエアー型でありながら、低域が出るヘッドホンということになるだろう。もちろん、同社の「MDR-XB1000」のように、何を聴いてもクラブサウンドにしてしまうような強力なチューニングが施されているわけではない。オープンエアータイプならではの音の拡がりとバランスをキープしたまま、低域再生能力を向上させているのが特徴だ。

「MDR-MA900」は、新開発の70mmドライバーとアコースティックバスレンズと呼ばれる、低域を中心に集中させる機構によって、低域再生能力を高めている。「MDR-MA500」以下のモデルは40mmドライバーだが、MDR-MA500と「MDR-MA300」はフレキシブルイヤーメカニズムを採用している。耳乗せタイプのヘッドホンでは、ハウジングが動き、ユーザーの耳にフィットする。それに対して耳を覆うタイプのヘッドホンでは、ドライバーの角度は固定されている。フレキシブルイヤーメカニズムは、人によって異なる耳の角度にあわせて、ハウジング内でドライバーの角度が動くというものだ。これも低域の再生能力を高める構造だ。

MDR-MA100にはそういった機構は採用されていないが、よく見てみると、ドライバーが斜めに配置されていることがわかる。これが、限定的にではあるが、低域再生能力を高めているのだろう。また、使用されているドライバーは、MDR-MA300と同じものだ。

4モデルのうち、MDR-MA100とMDR-MA300がフェライトマグネットで、MDR-MA500とMDR-MA900がネオジウムマグネットを採用している。

イヤカップの内部でドライバーが斜めに取り付けられている

一般的に低価格なヘッドホンでは、コード部分もそれなりのものになってしまうのだが、MDR-MA100のコードは、直径約3mmと、このクラスとしては太い。この太さのおかげで、放っておいても、コードは絡まりにくい

筆者は、プレス向けに行われた商品説明会に行っており、そこで、実際に4製品の音を聴いた。各モデルを比べてみると、MDR-MA500と300の音色は比較的近い。一方、MDR-MA100は、MDR-MA500とMDR-MA300には似ていない。どちらかというとMDR-MA900に近いサウンドだ。使用しているマグネットの差よりも、フレキシブルイヤーメカニズムの有無の差のほうが、影響が大きいようだ。

もちろん、ほとんどの面で、MDR-MA100はMDR-MA900のレベルに届いていない。しかし、それはMDR-MA900と比較したからであって、もし、そうでなかったら、それはそれで問題だろう。MDR-MA900は別格なのだが、MDR-MA100はMDR-MA900の廉価版といった品質に仕上がっている。実際、説明会で音を聞いて、一番驚かされたのが、このMDR-MA100のサウンドのクオリティの高さだった。

というわけで購入したMDR-MA100だが、方式の違いとドライバーのサイズの違いがが影響しているのか、今まで使用していたHP-X73よりも、ボリュームを上げ気味にしなければならないとか、これからの季節は耳全体を覆うタイプのヘッドホンは、やはり暑いだろうなぁ……といった細かいことは気にせずに、オープンエアー型に特有の、自然でワイドなサウンドを筆者は楽しんでいる。

ヘッドバンドの調節部分がとがっていて、頭に当たると痛いというのも問題といえば問題だが、気にしない

さて、ヘッドホンは密閉型ばかりを使用しているという人は、比較的多いのではないだろうか。何といっても、公共交通機関内で使うことを考えたら、密閉型を選択せざるを得ない。しかし、密閉型のヘッドホンのサウンドに慣れていると、拡がりがありヌケのよいMDR-MA100のオープンエアーらしいサウンドは、非常に新鮮に聞こえるはずだ。MDR-MA100は低価格ではあるが、十分にオープンエアー型ヘッドホンの良さを感じさせてくれるヘッドホンである。メイン用途で1本持っておく密閉型ヘッドホンに加えて、さらにもう1本持っておくのであれば、この手軽なMDR-MA100はなかなか面白いヘッドホンだ。

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インデックス

連載目次
第116回 クラッチバッグのようなデザインのBluetoothスピーカー「Beoplay A2」
第115回 デスクトップのリスニング環境に適した「SoundBlaster X7」
第114回 ComplyイヤーチップのPシリーズは使い方を選ぶがスグレモノ
第113回 Complyイヤーチップのプレミアムモデルとスタンダードモデルとの差を探る
第112回 最新ノイズキャンセリングヘッドホンの性能を検証(3)
第111回 最新ノイズキャンセリングヘッドホンの性能を検証(2)
第110回 最新ノイズキャンセリングヘッドホンの性能を検証(1)
第109回 標準付属品のイヤホンから買い替える高"コスパ"イヤホン(7)
第108回 スマートフォンに適したBluetoothスピーカー(8)
第107回 標準付属品のイヤホンから買い替える高"コスパ"イヤホン(6)
第106回 標準付属品のイヤホンから買い替える高"コスパ"イヤホン(5)
第105回 標準付属品のイヤホンから買い換える高"コスパ"イヤホン(4)
第104回 標準付属品のイヤホンから買い換える高"コスパ"イヤホン(3)
第103回 標準付属品のイヤホンから買い換える高"コスパ"イヤホン(2)
第102回 標準付属品のイヤホンから買い換える高"コスパ"イヤホン(1)
第101回 多機能アクティブスピーカー「SoundBlaster Axx」を使ってみた
第100回 手軽なところからスタートするハイレゾ音源再生環境(4)
第99回 手軽なところからスタートするハイレゾ音源再生環境(3)
第98回 手軽なところからスタートするハイレゾ音源再生環境(2)
第97回 手軽なところからスタートするハイレゾ音源再生環境(1)
第96回 Bluetoothスピーカーの置き方(4)
第95回 Bluetoothスピーカーの置き方(3)
第94回 ちょっと便利なBluetoothスピーカー「Creative Airwave HD」
第93回 Bluetoothスピーカーの置き方(2)
第92回 Bluetoothスピーカーの置き方(1)
第91回 いまさらながらのインターネットラジオ(3)
第90回 スマートフォンに適したBluetoothスピーカー(7)
第89回 いまさらながらのインターネットラジオ(2)
第88回 いまさらながらのインターネットラジオ(1)
第87回 ミニマムなデジタル録画環境として「nasne」はあり? なし?
第86回 インドア用のヘッドホンを買い換えた
第85回 スマートフォンに適したBluetoothスピーカー(6)
第84回 スマートフォンに適したBluetoothスピーカー(5)
第83回 スマートフォンに適したBluetoothスピーカー(4)
第82回 スマートフォンに適したBluetoothスピーカー(3)
第81回 スマートフォンに適したBluetoothスピーカー(2)
第80回 スマートフォンに適したBluetoothスピーカー(1)
第79回 キャビネット容積が限られたスピーカーでも高音質を実現するCONEQ技術
第78回 ボーズの1.1chホームシアターシステム「Lifestyle 135」の音を聴いてみた
第77回 チューナー内蔵レコーダーの登場で便利になった「スカパー!HD」
第76回 ヤマハらしいサウンドのヘッドホン「HPH-200」
第75回 実用的なAndroidタブレットプレーヤ「ZiiO」
第74回 ソニー、RM-PLZ530D - 学習機能付きリモコンのマクロ機能を使いこなす
第73回 ウォークマンがiPodを再び抜いた件に関して
第72回 2011年のレシーバー
第71回 3D放送の一般化にはまだ時間がかかるらしい
第70回 年末以降のテレビ需要
第69回 何インチからが大画面か
第68回 圧縮音楽ファイルのエンコード方法とビットレートによる音質の違いを調べる
第67回 ZEN X-Fi Styleを使ってみた
第66回 JBLの最新モデルを聞き比べ(後編)
第65回 JBLの最新モデルを聞き比べる(前編)
第64回 クリエイティブのBluetoothスピーカー「ZiiSound D5」を試してみた
第63回 一から始めるAV機器ネットワーク(3) - もっとメジャーになってほしいDLNA
第62回 ちょっと大きめのパーソナルTVが欲しい - シャープのLED AQUOS「LC-32SC1」を試用する
第61回 一から始めるAV機器ネットワーク(2) - もっとメジャーになってほしいDLNA
第60回 一から始めるAV機器ネットワーク(1) - もっとメジャーになってほしいDLNA
第59回 セカンドテレビを最新仕様にアップグレードするネットワークメディアプレーヤー(2)
第58回 セカンドTVを最新仕様にアップグレードするネットワークメディアプレーヤー
第57回 デジタルノイズキャンセングヘッドホン「MDR-NC300D」
第56回 ウォークマン最高モデル Xシリーズを試す - ノイズキャンセリング効果とサウンド
第55回 ウォークマン最高モデル Xシリーズを試す - 操作性と付属機能
第54回 遅ればせながらBDレコーダーを導入(1)
第53回 高音質タイプの骨伝道ヘッドホンを試してみる - ティアック Filltune「HP-F200」
第52回 HDMI 1.3時代のAVアンプ機能比較(1) - エントリークラス編
第51回 エバーグリーンの低価格メディアリペアキットを試す
第50回 W-ZERO3[es]とクリエイティブ「Xmod」で「どこでも高音質」を実現したい(2)
第49回 マクセルの高音質システムヘッドフォン「Vraison」を試す
第48回 流行の丈夫なDVD-Rはどこまで頑丈か
第47回 小型デジタルハイビジョン液晶テレビ、東芝REGZA 20C2000を使う(2)
第46回 小型デジタルハイビジョン液晶テレビ、東芝REGZA 20C2000を使う(1)
第45回 ドルビーバーチャルスピーカー採用2.1chサラウンドシステムをセッティング
第44回 W-ZERO3 [es]とクリエイティブ「Xmod」で「どこでも高音質」を実現したい(1)
第43回 ICレコーダーを購入
第42回 骨伝導ヘッドフォンを買ってみた
第41回 USBからの電源でも動作する高音質アダプター
第40回 低価格化が進むフルHD37V型液晶テレビ
第39回 ソニー「ネットジューク」最新モデルをチェックする(2) - 新モデルの音質
第38回 ソニー「ネットジューク」最新モデルをチェックする(1) セッティングとUI
第37回 オーディオテクニカの新型インナーイヤーヘッドフォンを聞く
第36回 圧縮音楽の補正技術は本当にうまく働くのか
第35回 ロジクールのマルチリモコン「Harmony」の途中経過
第34回 団塊の世代をターゲットにした製品って
第33回 ロジクールのマルチリモコンを試す(1)
第32回 スピーカーで聴くバーチャルサラウンド
第31回 HD DVDとBlu-ray Disc、ソフトのタイトルは?
第30回 コンパクトなスピーカーの音量は足りる?
第29回 HDDのトラブルに泣かされる
第28回 徹底的に低価格な謎のMP3プレイヤーの試聴にチャレンジする
第27回 ヘッドフォンサラウンドを手軽に試す(2)
第26回 ヘッドフォンサラウンドを手軽に試す
第25回 余ったメディアの再利用
第24回 1年前と最新のポータブルオーディオプレイヤー
第23回 測定したヘッドフォンの音漏れ以外の性能はどうなのか(2)
第22回 測定したヘッドフォンの音漏れ以外の性能はどうなのか(1)
第21回 ポータブルオーディオプレーヤーの音をスピーカーで鳴らす
第20回 ヘッドフォンの音漏れは、言われているほどにうるさいのか(4)
第19回 ヘッドフォンの音漏れは、言われているほどにうるさいのか(3)
第18回 ヘッドフォンの音漏れは、言われているほどにうるさいのか(2)
第17回 ヘッドフォンの音漏れは、言われているほどにうるさいのか(1)
第16回 ビデオ用8倍速のDVD-R DLメディア登場
第15回 ポータブルスピーカーはどのくらい聴けるのか(2) - Travelシリーズ編
第14回 ポータブルスピーカーはどのくらい聴けるのか(1) - Travelシリーズ編
第13回 BauXar Marty101試聴会に行ってきました
第12回 オーディオセレクター+パワードスピーカーでのリスニング環境構築
第11回 マルチメディア用2.1chスピーカーをオーディオ製品として聴く
第10回 精度を要求しない測定環境(2) - 身の回りの機器を測定する
第9回 精度を要求しない測定環境(1)
第8回 DLNAガイダンス準拠機器ではないネットワークメディアプレーヤーを試す
第7回 音楽データをどこに置くかがポイント
第6回 バッファローLinkTheaterでPC内の音楽ファイルを再生する
第5回 PC内のMP3ファイルをNAS-M7HDに取り込む
第4回 今度こそNAS-M7HDでPC内の音楽をストリーミング再生する
第3回 突然、長瀬産業のHMP-100のレビューを行う
第2回 オーディオのネットワークを考えてみる(2)
第1回 オーディオのネットワークを考えてみる(1)

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