今回は、今後の比較基準用のスピーカーとして用いることにしたクリエイティブメディアの「Creative D80」について、使い勝手や、音質などについて書いていきたい。D80は、サイドがラウンド形状の横長のワンボディタイプのアクティブスピーカーだ。いたって普通のスタイルだが、限られたスペースで、キャビネット容量と左右のチャンネルの距離を稼ごうとすると、どうしてもこういったスタイルになってしまうのだろう。前回も書いたように、サイズはW325×D100×H100mmだ。といっても、数値だけではなかなか実感が湧かないと思うので、似たような形状のものと並べて比較してみたのが、次の写真だ。

なかなかコンパクトなBluetoothスピーカー「Creative D80」。サイズは縦横ともに 標準的な絆創膏の約5倍程度だ

フロントには、サランネットが張られているが、これは取り外すことができず、中を見ることはできない。私物なので、無理に外そうとすればできないこともなさそうだが、そのあと修復するのが大変そうだ(今後もこのコラムで使う予定なので、今はやめておきたい)。キャビネット前面には、Bluetoothのペアリング用のボタン(円形のもの)と、ボリュームコントロール、ステレオミニジャックが配置されている。ペアリング用のボタンは、最後にペアリングを行った2機種の機器の切り換えにも使える。スマートフォンとPCなど、複数の機器を使い分けるのには便利だろう。ステレオミニジャックはアナログ入力用だ。こういったBluetoothスピーカーでアナログ入力を何に使うのか、難しいところだ。スマートフォンなどの携帯機器は、Bluetoothで接続するだろうし、そうでなければ、Bluetoothスピーカーをチョイスする意味がない。筆者は、テレビのイヤホン出力に接続して使用している。本来想定されている使い方とは異なるかもしれないが、テレビの上に置いて、バースピーカー的に使っているのだ。当然ながら、テレビ本体のスピーカーよりも、相当に音質面では優れている。セリフも聴きやすいし、スポーツ番組などでの臨場感もアップする。ただし、こういった使い方をする場合、フロントに入力端子があるのは見た目的にあまりよろしくない。もっとも、これは先に書いたように、D80の本来の用途とは離れているので仕方がないところだろう。なお、これはD80だけのことで、上位モデルのD100になると、アナログ入力端子は背面に回されている。ちなみにD80では、アナログ入力時のボリュームコントロールが効かないので、AV機器のライン出力端子から音声信号を入力すると、とんでもない大音量が鳴り出してビックリするので注意が必要だ。

操作部分は非常にシンプルだ。円形のBluetoothペアリングボタンにはLEDが内蔵されており、Bluetooth機器とペアリングしている状態では点滅するようになっている。アナログ入力時や、非ペアリング時は常時点灯する

背面には、バスレフポートが設けられている。一般的にリアバスレフタイプの場合、フロントバスレフタイプに比べると、セッティングには気を遣う必要がある。スピーカーの背面と後ろの壁の距離によって、低域の出方が大きく変わってくるからだ。もちろん、壁に近づければ、低域は強くなる。ただし、近づけすぎた場合でも、中高域に対して低域が強烈すぎるという事態にはならない。背面には、電源ジャックと電源スイッチが配置されている。D80はAC100V駆動オンリーなのだ。サイズはコンパクトだが、ポータブルスピーカーではない。また、電源スイッチは、機械式のシーソースイッチが採用されている。こういった構造なので、リモコンで電源のオン・オフなどということはできないが(そもそもリモコンが付いていないのだが)、これをオフにしておけば待機電力はゼロだ。

リアバスレフ方式を採用する

機械式のスイッチと、ダイレクトにAC100Vを接続できる電源ジャック

音の傾向についてだが、バランス的には、強烈な低域というわけではなく、また高域の伸びもいたって普通だ。ボーカルなどの中域は比較的聴きすい。全体的に刺激の少ないサウンドといってもよいだろう。長時間鳴らしていても、邪魔になるサウンドではない。1m以内といったニアフィールドで聴くと、それなりに左右のセパレーションは感じられるが、ある程度離れると、それは次第に希薄になっていく。こういった構造のスピーカーなので、仕方のないところだろう。小口径ユニットを使用したスピーカーであるが、指向性はそれほど強くはない。部屋のどこに置いてもそれほど極端なバランスの差は現われず、ほぼ真横の位置で聴いていても音は破綻しない。

特性について話が出たので、D80の特性を測定してみよう。といっても、筆者にできるのは、特定の周波数の音を流して、それがどのくらいのレベルで再生されるのかを調べる程度だ。なお、測定に使用している機器は普通のPCで、正しくキャリブレーションされているものではない。また、測定用の機器側と、音を出している部屋にも問題がある。測定に使用しているマイクは、ずいぶん昔のPCに付属していたものだ。これ自体の特性は、おそらく、さほど褒められたものではないだろう。また、部屋はエアコンが動いているうえ、相当に騒々しいPCが複数台動作しているという、劣悪な測定環境だ。このデータの絶対値には、まったく意味はない。しかし、各音域の出方について、相対的な判断材料の一つにはなるだろう。

以下の画面が、測定結果だ。測定は、PCで作成したsin波の音声信号をリニアPCM形式で保存し、スマートフォンにコピー、Bluetooth経由で再生するという方法で行っている。マイクはスピーカーの近くに置いてあり、1kHzの時に約-6dBになるようにボリュームを調節してある。横軸が周波数で0Hz~20kHzまで。1つのグリッドで4kHzという間隔だ。縦軸は音の強さで、一番下が-60dB、一番上が0dBとなっており、1つのグリッドで10dBとなっている。

20Hz

50Hz

100Hz

4305Hの100Hz(参考1)

20Hzと50Hzでは、ピーク周波数がそれぞれ150Hz前後と250Hz前後という値になっている。これは高調波で、筆者の耳にも、もう少し高い音しか聴こえてきていない。100Hz以上では、基音らしい音もちゃんと聴き取れる。ただし100Hzではやはり高調波が混ざっているようで、それよりも高い音も同時に聴き取れる。強さは-14.5dBとなっているが、この値は信用できるものではない。参考画面1は、JBLの4305Hを同じ条件にセットして(もちろんアンプは異なるが)、鳴らしてみた場合の100Hzの際のグラフだ。こちらの場合、筆者の耳では、基音以外を聴き取ることができなかった。

440Hz

1kHz

2kHz

4305Hの2kHz(参考2)

4kHz

10kHz

16kHz

4305Hの16kHz(参考3)

20kHz

4306Hの20kHz(参考4)

ホワイトノイズ

4305Hのホワイトノイズ(参考5)

440Hzでは-4.5dBとなっている。2kHzになると、音のピークがいくつも現われてくるが、これは4305Hでも同様になっており、おそらく元の音が原因だ。強さは-7.5dBとなっている。4kHzでは-2.2dBとなっているが、10kHzになると-50dB前後に落ち込む。筆者の耳にもかすかにしか聴き取れないレベルだ。16kHzでは、その周波数にまったく波形が表示されない。参考画面3は、JBLの4305Hの16kHzの際の波形だ。16kHzあたりに山が現われており、聴き取ることもできる。D80では、20kHzの波形でも、その周波数にまったく波形が表示されていない。それ以外の周波数の音が鳴っていて、20kHzの音が出ているのかどうかは分からない。これは4305Hの場合でも同様で、原因は元の音とマイクにあると考えてよいだろう。

D80は、システムに正体してリスニングポジションで聴く、といったスピーカーではないのだろう。しかし、中域を中心としたサウンドや広い指向性は、何かをしながら音楽を聴くBGM用のスピーカーとしては、なかなかよいのではないかと思う。また、ACアダプターを必要とせずにダイレクトにコンセントに接続することができる、音楽を聴くためだけのシンプルな機能と操作性といった点が、使い勝手のよさにつながっている。

D80の大まかな全体像は、だいたいこのような感じだ。次回からはこのD80を基準に、他のスピーカーをチェックしていきたいと思う。