リアルサウンドラボ・ジャパンという企業名に馴染みのある一般の読者の方は、やはり少ないだろう。リアルサウンドラボは、CONEQという音響パワーイコライジング技術を開発した、ラトビアに本社を置く企業で、リアルサウンドラボ・ジャパンはその日本法人だ。

キリアルサウンドラボ・ジャパンブースでは、同社がハイエンドオーディオ向けに発売している音響パワーイコライザー「APEQ‐2pro DIO」のデモが行われている

家電チャンネルでは以前、「Inter BEE 2009」で、同社が出展したブースを取材している。CONEQの技術に関しては、当時の記事を読んでいただきたいが、要約すると、物理的なスピーカーがそれほど強力ではない環境でもモニタースピーカーなみの再生を実現する技術ということだ。また、CONEQのパラメーターはすべて、製品の出荷前に設定されており、ユーザーはそれらを意識することなく製品を使用することができる。

このところ、テレビの狭額化が進んでいる。狭額化は、デザイン面だけでなくテレビのフレームを目立たなくすることで、より映像に集中できるというメリットがある。だが、スピーカーのキャビネットに割ける容積が減ることで、音質的にはマイナスになるのだ。テレビメーカー各社ももちろん、限られた容積の中で最善を尽くしてはいるが、テレビのキャビネットに収まるサイズで高音質なスピーカーを実現しようとすると、その設計やチューニングには時間がかかる。そして、高価なユニットや複雑な機構の採用は、製造コストを押し上げることにもなりかねない。そこで、狭額タイプのテレビを中心に採用が増えてきているのが、このCONEQだ。CONEQでは、スピーカー前方の仮想的な半球上での測定結果をもとにイコライジングを行うのだが、同社によると、そのイコライザーのパラメーターを設定するのに必要な時間はわずか数時間で、スピーカー部分の設計を突き詰めるのに比べて、時間もコストも大幅に減少する。2009年に取材した際には、国内のコンシューマー向け機器でCONEQを採用しているのは、ケンウッドが発売したコンポ「K-521」という1製品のみだったが、現在はテレビだけでも、国内向けでは東芝の「REGZA」、日立の「Wooo」が採用しており、さらにパナソニックの海外向けモデルでも採用が進んでいる。

となると、気になるのが次の展開だ。「Inter BEE 2011」のリアルサウンドラボ・ジャパンブースで同社の担当者に話を聞くと、「テレビメーカーが製品にCONEQを採用することで、狭額デザインと高音質とを両立することができます。国内でも、テレビやホームオーディオ機器などを中心にCONEQの採用が進んできていますが、既に薄型テレビを購入しているユーザーも数多く存在します。今後はこれらのユーザーに向けて、バースピーカーなどの製品でもCONEQを展開していきたいと考えています」とのことだ。このところ製品の発表が相次いでいるバースピーカーだが、CONEQを採用することでよりデザインの自由度が上がり、また小型化も可能になる。さらに同社では、テレビ以上にスピーカーキャビネットの容積が限られる、タブレット端末やヘッドホンなどにもCONEQを拡げていきたいと考えているとのことだ。

CONEQに対応したヘッドホンというと不思議な感じがするが、パッシブ動作をするヘッドホンにCONEQ技術を採用するのではなく、プレイヤー側に組み込む形になるとのこと。ヘッドホン出力にCONEQ技術を導入することで、低価格なヘッドホンの再生能力を高めることが可能になるだけでなく、ハイグレードなヘッドホンでもよりフラットな特性での再生が可能になるようだ。テレビやバーシアターなどの場合、内蔵しているアンプとスピーカーとは1対1で対応している。そのため、CONEQのパラメーターもピンポイントで決めることが可能だ。それに対してプレイヤーのヘッドホン端子には、さまざまな特性のヘッドホンが接続される可能性がある。CONEQでは、ユーザーに測定やパラメーターの設定を行わせるようにはなっていないため、ヘッドホン出力にCONEQ技術を採用する場合、比較的広い範囲(接続するヘッドホンの特性)に対応できるパラメータ設定になる見込みだ。

プレイヤーだけでなく、ヘッドホンアンプなどにも採用例が出て来れば、さらに楽しそうだ。いずれにせよ、今後さらに増えるであろう、CONEQ採用製品は注目必須である。