クリエイティブメディアが発売したZiiOは、Android OSを採用したエンターテインメントタブレットです。使用しているOSとタブレットという形状から、情報端末的な製品と思われがちですが、端的に言ってしまえば、ZiiOは、メディアプレーヤーです。ZiiOの起動画面は、次の写真のようになっています。画面下の部分には、音楽再生のための「ZiiMusic」、動画再生のための「ZiiVideo」、写真表示のための「ZiiPhoto」、そしてブラウザのアイコンが並んでいます。要するに、これらが、Ziioのメインの用途ということになるのでしょう。

エンターテインメントタブレット「ZiiO」。音楽や動画再生をメインとしたホーム画面

そういったたぐいのことならば、スマートフォンでも十分という意見もあるでしょうが、ZiiOには、スマートフォンとは違った、プレーヤーとしての特徴をいくつかもっています。まず、そのひとつが、スマートフォンに比べて、画面サイズが大きいという点です。ZiiOには、7インチモデルと10インチモデルとがありますが、今回お借りしたのは7インチモデルです。こんな画面サイズのスマートフォンは、もし存在したとしても、非常に使いにくいものでしょう。もうひとつの特徴が、高音質/高画質という点です。これに関しては、筆者が使用しているEMOBILEのS31HTとの比較ということになりますが、かなりの違いを実感できます。

7インチモデルのZiiO。隣のEMOBILEのS31HTと比べると、画面のサイズの大きさがわかる

それはそれとして、まずはZiiOの外観から。表面には、タッチ式のディスプレイ、その下に、左から「検索」「ホーム」「メニュー」「戻る」のタッチ式のメニューボタンが並んでいます。このボタンは表示が薄く、また、バックライトなどもないため、かなりの頻度で押し間違えます(これは、筆者がS31HTユーザーだからかもしれません。ZiiOとS31HTとで同じ機能のボタンが配置されているのですが、並び順が異なります)。上面には、電源スイッチ、ヘッドホンジャック、miniHDMIコネクタ、USBポートが並びます。HDMIケーブルは市販のminiHDMI→HDMIケーブルを用意すればOKでしょう。USBポートは、スマートフォンなどでよく採用されているマイクロコネクタではなく、ミニBタイプです。左側面にはmicroSDカードスロットが、右側面にはボリュームコントローラー、下面にはACアダプタ用のコネクタとステレオスピーカーが配置されています。

ホームボタンやメニューボタンなどの表示はもう少し目立たせた方が

一般的なミニBタイプのUSBコネクタを装備する

動画ファイルや大量の音楽ファイルを入れるなら、microSDカードでストレージの容量を増やしたほうがよい

普通のデジタルオーディオプレーヤーと変わらない操作性

ZiiOをPCにUSBで接続すると、次のような画面が表示されます。ここで「マウント」を選ぶと、PCからのファイル操作が可能になります。なお、マウント中は、音楽、ビデオの再生は行えません。PCにマウントしたら、music、videoなどのフォルダにファイルをコピー、音楽やビデオの再生準備は、それだけです。WindowsMediaPlayerなどで取り込んだ楽曲の場合、ジャケットイメージも転送され、ZiiO上で利用できます。再生可能な音楽ファイルの形式は、MP3/AAC/WMA9/FLAC/OGG/MIDI/WAV/Audibleです。ZiiOの内蔵メモリーのサイズは8GB、または16GBなので(8GBモデルの場合、実際にユーザーが使用できるのは5GB程度)、大量の楽曲やビデオファイルなどを入れておきたい場合には、microSDカードによるストレージの拡張は必須でしょう。

ここで「マウント」を選ぶと、PC側から、ZiiOにアクセス可能になる。音楽やビデオの転送は、ファイルをコピーするだけでOK

ZiiMusicの最上部には、曲一覧/アーチスト一覧/アルバム一覧/最近追加したアイテムといったボタンが並びます。一番左のボタンはX-FiとBluetoothの設定です。圧縮時に失われた音楽成分を補間する「Crystalizer」、音の拡がり感を強調する「Expand」の2種類のエフェクトが利用でき、「詳細」を選ぶことで、それぞれの効果の強さも調節できます。ちなみに、これらの効果をすべてオフにした状態で聞いてみても、S31HTよりも高音質ではあります。筆者の印象では、ZEN X-Fi2>ZiiO>ZEN X-fi>S31HTといった順番です。こういった端末なので、今後のアップデートなどにより、さらなる音質向上も期待できるかもしれません。

標準の音楽再生アプリZiiMusic

X-FiやBluetoothの設定もZiiMusicから行える

サイズだけでなくコマ落ちしにくいビデオ再生

ビデオの転送の方法も、音楽ファイルと同じです。対応ファイルはH.264、MPEG-4、WMV9、MOV、AVI、MKV。MPEG-2には対応していないので、DVDをリッピングしたものなどは、対応しているファイル形式に再エンコードする必要があります。ZiiO 7"の画面解像度は800×480。(ZiiO 10"は1024×600)なので、解像度に関してはそのままでOKです。7インチという画面は、車載用テレビやポータブルDVDプレーヤーなどでは一般的なサイズで、家庭用のテレビに比べればさすがに小さいですが、それでも、個人で見る分には、許容範囲ではないかと思えるサイズです。スマートフォンや、ポータブルプレーヤーなどの2.5~3.5インチ程度の画面とは、かなりの開きがあることは間違いないところです。また、動画再生能力の高さも、大きなポイントです。ビットレートが700kbps程度のm4vファイルを再生した場合、ZiiOではまったくコマ落ちが感じられなかったのに対して、S31HTでは、動きの多い部分などで、かなりコマ落ちが見られました。S31HTに700kbpsは無いだろう、というのはもっともな話なのですが、ZiiOの動画再生能力の高さがうかがえます。

動画再生能力はS31HTに比較すると高い

webブラウジングも高速

webブラウジングの速度は許容範囲でしょう。筆者はAtom N270を積んだネットブックを使用しているのですが、それと比較してもZiiOの方が快適です(これはOSとブラウザの差もあると思うのですが)。また、画面の小さいスマートフォンとは異なり、表示画面を拡大する必要がほとんどないため、ストレス無く使用できます。もちろん、Androidの2.1まではFLASHに対応していないため、FLASHを使用したページを表示できないという問題があります(2.2を搭載しているS31HTでも、FLASH Liteなので、表示できないサイトはやはり表示できないのですが)。FLASHを使用したサイトというと、ニコニコ動画が有名ですが、これに関しては、Android用のニコニコ動画再生アプリを使用すれば、それなりに再生できます。ただし、その場合の速度が、S31HTだと、かなりかくかくというか、途切れるのですが、ZiiOではそのようなことが少なく、かなり快適です。同じネットワークにつながっているので、環境自体は同一。唯一異なるのは、再生している機器だけなので、これは機器による違いということなのでしょう。動画再生の能力だけでなく、無線LANでのファイル転送の速度にも違いがあるようで、そこが再生品質の違いに結びついているようです。

速度的にも快適なwebブラウジングが十分に可能

専用の動画再生アプリを使用すると、ニコニコ動画もそれなりに再生する。今回使用したのは「Nicoro α版

ZiiOのとりあえずのまとめ

ZiiOは、感覚としては、0スピンドルのポータブルDVDプレーヤーにネットワーク機能が搭載されているとといった使い勝手です(0スピンドルなDVDプレーヤーなどというものは存在しないのですが、感覚的にはこのような感じ)。また、ネットワークも含めて、処理速度もそれなりに高く、ソファーやベットでリラックスしながらwebブラウジングといった用途では、下手なノートPCよりも快適に使用できます(軽さと、コンパクトさ、ファンレスといった点も大きい)。ZiiOは、音楽、動画、そしてwebサイトなどといったコンテンツを再生するためのプレーヤーとしては、なかなかバランスの取れた製品だといえるでしょう。今回は、とりあえず、ZiiO本体のみを使用した印象ですが、ZiiO 7"は、apt-X対応のBluetoothを搭載しており、周辺機器との、高品位なオーディオ伝送も可能です。同社からは、apt-Xに対応したヘッドホンや外部スピーカーなどもリリースされているのですが、それらとの組み合わせについては、次回以降でお伝えしたいと思います。