BCNの発表によると、この年末、再度、ウォークマンの販売シェアが、iPodの販売シェアを上回ったそうです。この逆転は一時的なもののなのでしょうか。

昨年8月に、デジタルオーディオプレーヤーの国内の販売台数で、ソニーのウォークマンがアップルのiPodを一時的に抜いたという発表がありましたが、BCNの発表によると、この年末、再度、ウォークマンのシェアが、iPodの販売台数を上回ったそうです。ソニーでは、POSデータをもとに、リアルタイムで販売数をチェックしているとのことで、それによると年末だけでなく年明けになっても好調は続いているとのことです。iPhoneを初めとするスマートフォンの普及により、単体のデジタルオーディオプレーヤーは減少し、いずれ吸収されてしまうのではという見方があります。もっとも、現在、国内の携帯電話の多くは、スマートフォンでなくても音楽再生機能が搭載されており、音楽プレーヤーとしても利用可能です。にもかかわらず、携帯電話と専用のデジタルオーディオプレーヤーの両方を利用しているという人は、少なからずいるようです。いずれにせよ、この年末年始に関しては、スマートフォンによって、単体のプレーヤーが市場から駆逐されてしまうというようなことはなかったようです。現在、デジタルオーディオプレーヤーの市場は堅調で、年末年始には、全体的に販売台数も伸びていたとのことでした。iPodもウォークマンも販売台数を伸ばしたなかで、iPodに対して、ウォークマンの販売台数が上回った理由を、同社では、クリスマスプレゼント用や、忘年会新年会の景品などに利用されたと分析しています。また、デジタルグッズ的な要素よりもオーディオプレーヤーとしての要素が強く、高音質を求める層から支持された、語学学習機能や、歌詞ピタ、ちょい聴きmoraなどの機能が、買い得感を生んだ、なども要因となっているのではとのことです。いずれにせよ、何か決定的な要素が1つあって逆転したのではなく、いくつもの要因が重なって起こった逆転だということのようです。同社では、総合的にオーディオプレーヤーとして評価された結果として捉えており、今回のシェア逆転を、一時的なものではないと考えているようです。

販売数の中心となったのは、当初からの予想通りSシリーズ。Sシリーズには、スピーカーが付属しているモデルと、スピーカーレスのモデルとが存在する。2009年までは、価格の安いスピーカーレスのモデルの方が販売数が多かったのに対して、2010年の年末から年始にかけては、3,000円程度価格の高い、スピーカー付きモデルのほうが、販売台数で3~4%上回っていた

となると、気になるのが、ウォークマンの今後です。現在のラインナップは、デジタルノイズキャンセリングシステムとデジタルアンプを搭載したAシリーズ、デジタルノイズキャンセリングシステムとアナログアンプを組み合わせたSシリーズ、エントリーモデルのEシリーズ、アウトドア向けのWシリーズとなっていいます。昨年までは、これらの上にXシリーズが存在したのですが、Xシリーズは、ネットワークなどに対応した、マルチメディアプレーヤー的要素の強いモデルでした。果たして、こういったモデルの登場はありえるのか、同社に伺ったところ、Xシリーズのような高機能モデルを求める声は多く、そういったモデルが発売される可能性はあるとのことでした。ただし、もし、そのようなモデルが発売されるとしても、それがウォークマンブランドの製品になるか、それともまったく別のものになるのかは、なんとも言えないとのことでした。同社では、ウォークマン携帯なども発売しています。ウォークマンの性能をプラスしたAndroid端末などというのも、面白いかもしれないと、想像を膨らませてしまいます。

また、この年末年始、ウォークマン本体だけでなく、ドックスピーカーなどのアクセサリー類も好調だったそうです。なかでも好調だったのは、昨年4月に発売した「サウンドマグ」(RDP-NWV500)。家でも、車の中でも利用可能なウォークマン用のスピーカーで、車内ではドリンクホルダーに設置して使用します。サウンドマグは、同社のドックスピーカーの中で、最も台数/金額ともに多く出ているモデルということで、それだけ、車の中で利用したいというニーズは高いのでしょう。

一昨年ぐらいから、各社が発表するカーオーディオ機器には、比較的低価格なモデルでも、iPodへの対応が標準的になりつつあります。それに対して、ウォークマンに対応したカーオーディオ機器は、皆無です。もちろん、AUX端子やトランスミッターなどを利用してカーオーディオと接続することは可能ですが、ダイレクトに接続でき、プレーヤー側、本体側のどちらからでも操作が可能といったiPodに比べると、とくに操作性の面で劣ると言わざるをえません。同社は、かつて、アフターマーケット用のカーオーディオ機器を製造販売していたのですが、現在はその分野からは撤退しています。また、現在同社では、カーオーディオに対するアプローチとして、このサウンドマグ以外は考えていないとのことです。となると、他社が対応してくれるのに期待するしかありませんが、グローバルで見ると、ウォークマンのシェアは10%弱でしかありません(ただし、アジア圏を中心にシェアを伸ばしており、とくにロシアでは1位を獲得している)。カーオーディオ機器を製造するメーカーの多くは、製品をグローバルに展開しており、国内市場向けだけに、というのは、なかなか難しいところでしょう。現在、同社から認証を受けてWM-PORTに対応したウォークマン用のアクセサリーが、Designed for Walkman製品として、ハーマンインターナショナル、バッファロー、ロジテック、ロックリッジサウンドなどからリリースされています。シェアが今後も上昇していけば、こういった製品のラインナップも、増えてくるでしょうが、シェアがどのくらいになれば、対応したカーオーディオがリリースされるのかは筆者には分かりません。しかし、ウォークマンの本格的な復権には必要なことなのではないでしょうか。

今回のシェア逆転は、あくまでも国内市場だけの話です。しかし、デジタルオーディオプレーヤーの市場全体にとってはプラスなのではないでしょうか。市場がiPod(あるいはウォークマン)のみに集束してしまい、ショップに行ったら、一種類の製品しかなく、それを選ばざるをえない世界よりも、多くの選択肢があった方が、我々ユーザーにとっては、望ましいことでしょう。と、ZENユーザーである筆者は思うのですが。