幕張メッセで行われたInterBEE 2010は、放送機器などをメインとした展示会です。放送機器メーカーは、放送のデジタル化、HD化の次は、3D化というのを規定の流れにしたいと考えているようで、今年のInterBEEでは、3D関連の展示が非常に高い比率を占めています。

10月にJEITAが発表した「3D 薄型テレビ及び3D パソコンの国内出荷実績」によると、2010年4月~9月の薄型テレビ全体に占める3D対応テレビの構成比率は、1.34%となっています。この統計には今年の年末に販売されたテレビは含まれていないため、現在の3D対応テレビの正確な比率はわからないのですが、いずれにせよ3D対応テレビのユーザーは、まだまだ少数派だといいうことは間違いありません。現状での3Dのコンテンツは、BDのタイトルやゲームタイトルなどのパッケージがメインです。これに加えて、デジタルビデオカメラやデジタルカメラなどによるパーソナルコンテンツが、3Dテレビで普通に利用できる3Dコンテンツということになります。対応したテレビの数が増えればコンテンツの供給量も増える、逆に、対応したテレビの数が増えなければコンテンツの量は増えないと考えると、3Dテレビが少数派の現時点では、あまりコンテンツの量が増加しそうな感じはしません(パーソナルコンテンツを別にすれば)。このような中、パナソニックは、音楽番組パナソニック 3DミュージックスタジオをBS朝日で11月1日から放送開始、また、ソニーも1月1日より、BSフジで3D★3Dのレギュラー番組を開始するなど、一部で放送の3D化がスタートしつつあります。3Dテレビの発表当初から、テレビメーカー各社は、コンテンツの重要性について、そしてその充実に力を注いでいくと語っていましたが、今回の3D放送も、その一環ということなのでしょう。コンテンツがまだまだ少ない3Dテレビのユーザーにとっては、喜ばしいことです。

3D放送が一般化すれば、3Dテレビの普及に弾みがつくことは間違いないのですが、ここで問題になるのが、放送局側には、今のところ3D化によるメリットはさほど存在していないという点です。さらに問題になるのが、放送の3D化には、放送局側の体力が必要だという点です。来年はアナログ停波の年で、現在、地上デジタル放送への移行は、最終段階に来ています。ただ、移行への対応には、放送局によって差があります。東名阪のキー局では、2003年に地上デジタル放送を開始しており、それから約7年間の運用実績もあります。一方、ローカル局では、移行がなかなか進まないというケースもあったようで、最終的にデジタル化が完了したのは、2006年となっています(もちろん、エリア内の全戸でデジタル放送が視聴できるという意味ではありません。それはまた別の話です)。デジタル化とHD化には大きな費用がかかっており、とくに体力的に苦しいローカル局にとっては大きな負担となっています。現在、地上デジタル放送の内容は、地上アナログ波でサイマルキャスト放送されていますが、これは遅くとも来年の夏までには終了します。これにより両方を流すことによるコストは削減されることになりますが、それでもこの状態で3Dに対応した機材や設備を整えるという余裕を持つ放送局は、かなり限られてきます。会場で聞いたところによると、地上波で普通に3Dの放送が行われるのは、今少し先というのが共通認識のようでした。当面はBSやCSなどで限定的に行われていくようです。