11月11日にJEITAが発表した「2010年度上半期(2010年4月~2010年9月)受信システム機器国内出荷実績」によると、2010年度上半期のテレビ受信用アンテナの国内出荷が、前年度比で138.8%に達したとのことです(本数では107万3,000本)。地デジ化に伴い、アンテナの需要が増加しているということのようです。

JEITAのサイトでは、2004年からの受信システム機器国内出荷実績を閲覧することができます。これを見ると、2008年度までは、テレビアンテナの出荷実績は前年度比100%程度で(2004年度には大幅な伸びが見られるのですが、2005年度には大幅な減少が見られます。アテネオリンピックの影響でしょうか)、顕著な伸びは見られていません。2009年度上期になって、ようやく107.9%と上向き、2009年度全体では、前年度比119%となっていました。もちろん、地デジの放送を見るのに必ずアンテナが必要というわけではありません。ケーブルテレビで放送を試聴しているという家庭も多いでしょう。しかし、1本のアンテナの先には、1台以上のテレビが接続されていることになるわけで、それが2008年度まではほとんど増加していないというのは、なかなか面白いところです。2008年といえば、倍速液晶やCECコントロール、HDMI 1.3aなど、現在主流となっている技術がほぼ出そろっていた時期で(3DやLEDバックライトはまだですが)、製品の魅力という点では、現在とさほど遜色ないレベルに達していたと記憶しています。2008年度と2009年度の最大の違いは、2009年5月から家電エコポイント制度がスタートしたという点です。これにより、テレビの販売台数が(テレビだけではないが)大幅に伸びたということなのでしょう。

2010年の年末は、各メーカーや販売店にとって、特別なものとなっています。薄型テレビは、各社とも、前年比で150~160%という売り上げ見込みを立てています。エコポイント制度は、来年の5月末での終了が予定されています(エコポイント用の原資がなくなった場合は、その前に終了)。テレビがとんでもなく売れる年末は、この年末のあとは、しばらくやって来ないでしょう。さらに、12月以降は、サイズにもよりますが、ポイント数はほぼ半減。また、ポイントの申請対象が、リサイクルを行う場合に限定されるようになります。これにより、エコポイント制度変更直前の11月がピークなるだろうというのが大方の予想です。今週~来週あたりの週末の家電量販店は、とんでもないことになっていそうです。

エコポイント制度の終了後は、いったいどうなるのでしょうか。来年はエコポイント対象外の商品が伸びるという意見も聞きますが、実際のところ、人は、家電にのみ、お金を使うわけではありません。エコカー補助金は、家電のエコポイントよりも一足早く終了しましたが、これにより、エコカー補助金の対象となっていなかった車の売れ行きが上向くというようなことがあったのでしょうか。テレビには、地デジの駆け込み需要といったプラスの要素もあるのですが、夏以降は、やはり販売台数が減少するでしょう。

さて、1997年に消費税率のアップが行われる直前に、エアコンや冷蔵庫など、耐久消費財の大規模な駆け込み需要が発生しました。需要の先食いです。エアコンのライフサイクルは、10~11年程度といわれています。これは、先日、エアコンの新製品発表会で伺った話なのですが、本来ならば翌年、あるいは翌々年に交換になっていたはずのエアコンが、先に交換されたことで、その次の年には、大幅な落ち込みがあったそうです。しかし、翌々年以降は通常のレベルに戻っており、また、1997年に購入されたエアコンの交換のピークとなる、だいたい2007年から2008年には、それほど大きくはありませんが、やはり需要の伸びが現れていました。つまり、前回、1~2年前倒しで購入した耐久消費財のライフサイクルは、10~11年に1~2年をプラスしたものではなく、通常の10~11年というものだったということのようです。そういった前例を見ると、エコポイント制度の終了後、短期的には、テレビの売れ行きは減速するでしょうが(買う方からすると、チャンスかもしれません)、それはおそらく短期的な話で、中長期的には、制度終了の影響は、それほど大きくはならないだろうと、筆者は見ています。