ハーマンインターナショナルといえば、JBLやAKGといった、国内でもよく知られるブランドを持つオーディオメーカー。今回、同社の試聴室で最新のJBLスピーカーを聞くという、なかなかない機会を得ることができたので、その結果をレポートしてみたいと思います。実際に聞いてみた音の特徴、印象といったものについて、一般的な範囲で進めていきたいと思います。

試聴室に並べられていたのは、「ON STATION MICRO II」「SAS100」「4319」「Project EVEREST DD66000」の4製品です。ON STATION MICRO IIは、iPod/iPhone用のドックスピーカーで、SAS100は、スタイリッシュなミニコンポ、4319は、今年の3月に発売された、43xx系モニタースピーカーの最新モデル、そしてEVERESTは、JBLが60周年記念モデルとして、2006年にリリースした、同社のフラッグシップモデルです。前編の今回は、カジュアルなシステムON STATION MICRO IIとSAS100に付いてお送りいたします。

軽快なサウンドで、聞く人をリラックスさせるON STATION MICRO II

最初に試聴したのが、4月に発売されたばかりの新製品、ON STATION MICRO IIです。新たにiPhone 3Gに対応し、グリルのカラーをシルバーからブラックにしたというのが、従来モデルからのおもな変更点です(ほぼ同じ仕様で、ウォークマン用のモデル「ON STATION MICRO III WM」も販売されています)。25mm径のネオジウムユニットOdysseyを、総合出力4Wのデジタルアンプで駆動するワンボディタイプのiPod用アクティブスピーカーで、4製品の中では(JBLブランドの中でも)、ローエンドのモデルということになります。

こういった、コンパクトなシステムの話になると「サイズからは想像もできないような、しっかりとした低域」といったような常套句がよく使われますが、筆者が聞いた限りでは、小さいシステムで、小さいシステムとしての方向と目的で作られたサウンドという感じです。中域の軽快さとJBL製品すべてに共通する明るいキャラクターの組み合わせが、そういった印象を生み出しているのでしょうか、非常に聞きやすいサウンドです。普通の音量で聞いている場合、重低音という感じでは決してありませんが、無理にブーストさせている感じではなく好印象です。もちろん、ある程度ボリュームを上げれば、低域の量感も感じられます。比較的大きな音で慣らしているときの方が、よりJBLっぽい、ライブ感の強いサウンドになるといった感じはします。また、大音量で鳴らしている場合でも、ソースとして使用しているiPhoneが、ただ、上に乗せられているだけにもかかわらず、音楽の邪魔になるような余計な振動は感じられませんでした。

キャビネットの筐体が、ドーナッツ型とでもいうのでしょうか。この形状と、斜め上方に向けられたユニットの配置により、リスニングエリアは広めです。リスニングポイントを変えてみても、それで音のバランスが崩れるということはありませんでした。システムの存在を気にかけることなく、日常的に部屋に置いておいて、BGM的に音楽をかけるという、そういったスタイルの中で、より魅力を発揮するシステムという印象でした。

JBLのスピーカーとしてはローエンドモデルとなるON STATION MICRO II。ローエンドでも、JBLのキャラクターは感じられる

この形状とユニットの配置により、リスニングポイントを選ばない

スタイルのよさだけで語るには惜しい正統派のシステムSAS100

続いて試聴したのがSAS100です。アンプ、コントロールユニット、スピーカーで構成されるミニコンポスタイルのシステムです。スピーカーは、2ウェイ構成で、同社としては珍しく、ウーファーに125mmの平面ユニットが採用されています。ツイーターは25mmのドーム型ユニットで、ウェーブガイドと呼ばれるショートホーンに取りつけられています。ウェーブガイドは、高域の指向性を改善するとともに、ウーファーとツイーターの振動板の位置を揃えることで、低域と高域のの音のつながりを良くするという目的があるとのことです。アンプは出力130Wのデジタルアンプ。コントロールユニットには、CDプレーヤーとFMチューナー、iPod用のDockを接続するためのコネクタを装備。イルミネーションが施された半透明なアンプのボリュームや、タッチパネル式のオペレーションを採用した、モノトーンなシンプルなデザインも大きな特徴となっています。

ON STATION MICRO IIでは、ソースにiPhoneに保存されている128kbpsのAACファイルを使用したのですが、SAS100はせっかくCDが装備されているので、CDで聞いてみました。SAS100を聞いてみた印象ですが、ON STATION MICRO IIに比べて、軽快感は減少しています。しかし、ソースの違いもあるのでしょうが、音量を抑えめにしている状態でも、例えばベースやドラムの音は、より前に出てくる、躍動感を感じるといった印象を受けました。

ミニコンポスタイルと、そのデザインから、インテリア的な側面が語られることが多いSAS100ですが、実際に聞いた感じでは、BGM用のシステムというよりも、もう少し真剣に音楽を聴くシステムといった感じです。以下、次回に続きます

スタイリッシュなシステム「SAS100」

平面ユニットを採用する、同社の製品としては異色の存在

Dockコネクタは、本体に装備されているのではなく、ケーブルで接続する別体式