しばらく間が空いてしまいましたが、今回は、現時点で、レコーダーをサーバーとして使用している際の制限などについてまとめておきたいと思います。

まず、DLNAのwebサイトには、デジタル放送を録画したコンテンツをDLNAクライアントでは再生できないというような記載があります。これはある意味正しく、ある意味不十分な記載です。DLNAは、ネットワークを使って映像機器などの機器間でコンテンツを流すための規格です。それに対して、デジタル放送を録画したコンテンツをネットワーク内で利用するための著作権保護の規格が、DTCP-IPです。デジタル放送を録画したコンテンツが、DTCP-IPに対応したサーバーに保存されているのならば、同じくDTCP-IPに対応したクライアントでならば、ネットワーク越しに再生することが可能です。DLNAのサイトにこのような記載があるのには、世の中にあるDLNA機器のうち、DTCP-IPに対応するものは、まだそれほど多くないという事情があるのでしょう。DTCP-IPに対応した組み合わせの代表的なものが、各メーカーが販売しているDLNA対応のレコーダーやテレビということになるのですが、DLNA対応機器は、これらの製品が発売されるよりも前から、PC系の周辺機器メーカーや、家電メーカーなどから発売されていました。これらの機器では、DLNAに対応していても、デジタル放送を録画したコンテンツを配信したり再生したりすることはできません。例えば、DTCP-IPに対応したサーバー(DLNAに対応したレコーダーなど)のコンテンツを、DTCP-IPに非対応のプレーヤーで見ようとすると、サーバーとの接続、コンテンツ一覧の表示まではうまくいくのですが、そこから先、コンテンツの選択に進むことはできません。これらのDTCP-IPに非対応のDLNA機器でできることは、著作権保護されていない映像の配信と再生、同じく著作権保護されていない音楽ファイルの配信と再生、静止画の配信と再生です。

では、DLNAに対応したレコーダーとテレビがあれば、レコーダー側のコンテンツを、すべて、ネットワーク接続されたDLNA対応のテレビから利用可能かというと、そういうわけではありません。ここにもいくつか制限があります。

ソニー BDZ-RX105

まず、クライアントから利用できるコンテンツは、HDDに保存されているものだけで、BDやDVDは無理という点が上げられます。DTCP-IPに対応した機器どうしでも、現状では、BDやDVDなどのタイトルは、ネットワーク経由では、見ることができません。パナソニックが、DLNAクライアント(お部屋ジャンプリンク)を搭載したブルーレイディスクプレーヤーを発売しているのも、クライアント側からはHDD以外のメディアからの再生ができないという制限による、不便を減らすためという意味もあったとのことです。

さて、レコーダーのHDDに保存されているコンテンツならば、クライアント側から視聴することが可能ですが、その際に、ダイレクトにレコーダーで再生する場合には使えた機能が、いくつか利用できなくなります。まずは、番組情報の参照です。クライアントは、サーバーからストリーミング配信されてくるコンテンツを再生するだけなので、こういった情報は表示させることができません。また、同じ理由から、チャプターのスキップも不可能です。最近のレコーダーの多くには、オートチャプター機能が装備されていて、番組を録画すると、CMとの境目などに自動的にチャプターマークが打たれます。レコーダーでダイレクトに再生している場合には、チャプタースキップボタンを押せば、次のチャプターに移動します。しかし、DLNAクライアントでこの操作を行うと、次のタイトルに移動することになります。さらに、現在市販されているDLNA対応のレコーダーや録画機能搭載テレビでは、ストリームを1本しか流すことができません。ネットワーク内に複数のクライアントが存在するケースでは、先にリクエストを出したほうが優先されます。つまり、1台のクライアントで、DLNAを使ってコンテンツを再生している場合には、他のクライアントからは、DLNAを使ってコンテンツを再生させることができないということになります(デジオンが供給しているDiXiM Digital TVシリーズ(PCやデジタルチューナーカードなどにバンドルされている)では、2本までストリームを流すことが可能となっています)。さらに、レコーダー側で2番組を同時録画している場合、BDタイトルを再生している場合、アクトビラ機能を利用している場合など、やはりストリームを流すことができません。そのほかにも、DLNAクライアント側からは、録画予約ができないといった制限もあります。DLNAクライアントがあれば、レコーダー2台分の便利さというわけには行きません(個人的な感覚では1.5台分ぐらい)。

ただし、プレーヤー側からの予約録画に関しては、ソニールームリンクに対応したソニー製のレコーダーとテレビの組み合わせ、お部屋ジャンプリンクに対応したパナソニック製のテレビとレコーダーの組み合わせでは、プレーヤーであるテレビ側から行うことが可能なケースもあります。これは、両社が採用しているソニールームリンクや、お部屋ジャンプリンクが、DLNAを独自に拡張しているためです。なお、ソニールームリンクやお部屋ジャンプリンクは、DLNA規格に沿っているため、現時点では、他のDLNA対応プレーヤーをネットワーク接続して再生することも可能です。もちろん、その場合には、予約録画といった独自機能は利用することはできないことになります。