先週に引き続き、ウォークマンのフラッグシップモデル「X」シリーズです。前回は使い勝手と機能面についてでしたが、今回は、最大の特徴でもあるデジタルノイズキャンセリングシステムと、サウンド面について、筆者なりの印象をお伝えしたいと思います。

ノイズキャンセルのレベルは調整可能。最大にすると別世界といった感じになる

ノイズキャンセルは「電車・バス」「航空機」「室内」の3モードを備える

一覧からカーブと効果を確認しながら選択できるイコライザ

効果的で音質的にも悪影響が感じられないノイズキャンセリングシステム

筆者所有のアナログタイプのノイズキャンセリングヘッドホンは、低域がこもるという印象があります。それに対して、以前、同社のデジタルノイズキャンセリングヘッドホン「MDR-NC500D」を聴いたときには、そういった印象をあまり受けませんでした。Xシリーズのノイズキャンセリングシステムは、回路的にはMDR-NC500Dと同じものが採用されているということですが、オーバーヘッドタイプとインナーイヤー対応というヘッドホンのスタイルから来る違いからか、MDR-NC500Dに比べてもクリア度がアップしているように感じられます。

ノイズキャンセルの効果は、室内モードで動作させると、「PCのファンの音が聞こえなくなる」「となりの部屋で動いている冷蔵庫のモーター音が聞こえなくなる」といった感じで、普段、気にしていなかったノイズが、ノイズキャンセル回路によって消されたことで、初めてその存在に気づくといった具合です。

ノイズキャンセルをオンにしたときの切り替わりは、一瞬です。アナログタイプのノイズキャンセリングヘッドホンだと、最初は外部のノイズが聞こえていて、ノイズキャンセルのスイッチを入れると、外部のノイズに反応したノイズキャンセル回路が発生する外部のノイズを反転させた音が、聞こえてきて、しばらくすると、それらが打ち消し会って、外部のノイズが聞こえなくなるという感じなのですが、Xシリーズの場合、外部のノイズが突然消えます。これは一度体験してみる価値があるでしょう。

外出時にも使用してみました。まず、電車の中です。ノイズキャンセル回路をオンにすると、レールの継ぎ目の音とモーター音以外の、風の音などのノイズはほとんど聞こえてこなくなります(モーター音は若干減衰しているように思えます)。また、普通は、ホームと電車の中では、周囲のノイズレベルに差があるため、乗車時には、ボリュームを上げないと聞き取りにくいといったことがありますが、Xシリーズでノイズキャンセルをオンにした状態では、ボリュームを調整する必要は感じられませんでした(というよりも、まったくボリュームの調整に意識が行っていませんでした)。

インナーイヤータイプなので、もともと外部のノイズは減衰するのですが、それ以上にノイズキャンセルの効果が大きく、音楽を聴く環境として電車の中はそこそこ快適なのではと思えるぐらいです。

続いて、駅で降りてそのまま周囲を少し歩いてみたのですが、これは危険です。周りの車がすべてプリウスになったような感覚です。注意していないと、すぐ近くに来るまで気がつきません。また、歩いていると他人にぶつかるなど、普段、我々が外部からの情報を音で認識している部分がどれだけ大きいかを実感させられます。

クリアテクノロジーの効果は

Xシリーズには、デジタルアンプ「S-Master」、高域の補間を行う「DSEE」、左右のセパレーションを改善する「クリアステレオ」といったクリアテクノロジーが採用されています。短時間ですが、使用してみた印象をお伝えします。

搭載されているデジタルアンプS-Masterは、Xシリーズ全体のイメージともかぶるのですが、全体的にフラットで(イコライザやクリアベース機能をオンにすれば印象は変わる)、輪郭がはっきりしている印象です。立ち上がりの速さがそう感じさせているのかもしれません。

DSEEは、再生するデータのビットレートがある程度高い場合は、かけなくてもOKといった感じです。320kbpsのMP3ファイルだと、その差は筆者に判別できません。192kbpsでも、実際のところ、その差はあまりわかりません。DSEEをオンにしたときの音の違いは、高域が出るというものではなく、圧縮時に消されているメインの音に付随する音なのだろうと思われるようなものが再生されるという感じです。全体としての広がり感、あるいは臨場感といったものがアップしているように感じられます。

クリアステレオの効果は、左右のセパレーションを上げるということですが、オフにした場合、センター近くに音がまとまる感じになり、オンにすると、左右の広がり感が増すといった印象です。一部の製品に搭載されているステレオワイド機能のように、とくに音質自体に影響を与えてはいないようです。

イコライザに関しては、筆者は普段あまり積極的に使用しない機能なのですが、セットされたパラメータが一覧で並んでいて、そこからカーブと実際の効果を確かめながら選べるというユーザーインターフェイスは、なかなか楽しいものだと思いました。

さて、Xシリーズは、32GBモデルのNW-X1060だと、同社のショッピングサイトで4万9,800円(ソニースタイル限定モデルだと5万2,800円)、16GBモデルのNW-X1050でも3万9,800円と、確かに、ポータブルプレーヤーとしては値段の高い製品です。

とはいえ、ワンセグやビデオ再生など、機能面でも充実していますし、デジタルノイズキャンセリングヘッドホンの部分は、単にMDR-NC300Dのローコスト版という感じではなく、Xシリーズを含めた一つのシステムとして(音質/操作性も含めて)まとまっています。デジタルノイズキャンセリングヘッドホン込みとして考えると、以外にコストパフォーマンスが高いシステムだと思うのですがいかがでしょうか。

ソニースタイル限定モデルのウォークマン NW-X1060/BI(アイスブラック)とVAIO Type C(ブラウンクロコダイル)