以上、4つの開発環境をご紹介した。STM32Fを使うためには、これのいずれかを入手してインストールしなければいけない。で、Webなどを見ていると、Atollic TrueSTUDIO STM32を使う、という人が多いようだった。生成できるコードサイズに制限はないし、機能制限はあるにせよ一応開発環境が完全にそろっている。また、万一購入する必要がある場合でも、他のツールに比べると安価というあたりが主な選択の理由であった。

で、筆者は? というと、あえて今回はIAR Embedded Workbenchを選んでみることにした。主な理由は「一度使ってみたかったから」である。確かに32KBというのは凄く大きいと言うわけではないし、STM32F4 Discoveryに搭載されているSTM32F407VGT6は1MBものFlash Memoryを積んでいるから、かなり勿体無いのは事実である。ただ、あれこれネットワークスタックとかUSBドライバとかを入れ始めると32KBではすぐに足りなくなるかも知れないが、もしそうなったら改めてAtollic TrueSTUDIO STM32に乗り換えるという選択肢もあるわけで、とりあえずはIAR Embedded Workbenchでやってみることにした。

前にも書いたが、IAR Embedded Workbenchの入手はこちらからになる。このページでARM用のSize-limited licenseをクリックすると注意事項が示された後でユーザー登録ページに推移する。ここでユーザー登録を行うと、登録したメールアドレスに確認メールが届く筈だ。この中に記されたURLに飛ぶと、こんなユーザー登録完了画面と一緒にLicense Number/License Keyが示される(Photo01)。ついでにこのページに日本語版と英語版、両方のIAR Embedded Workbenchへのダウンロードリンクが示されているので、必要な方をダウンロードしておこう(一応今回は日本語版を選んだ)。ちなみに原稿執筆時点での正式なバージョンは6.30.4となっている。ファイルサイズは756MBと結構な大きさだった。

Photo01: このLicense NumberとLicense Keyはインストールの際に必要になるので、テキストファイルにでもコピーしておくと便利。

ダウンロードが終わったら実行すると、自己展開を行った後にStartup Wizardが立ち上がるので(Photo02)、ここで"IAR Embedded Workbenchのインストール"を選ぶ。すると、既にライセンスを取得しているかどうかを問われるので、取得済みということで「次へ」を選ぶと、使用許諾契約の表示の後でまずLicense Number(Photo03)、ついでLicense Key(Photo04)の入力画面となるので、先ほどのテキストファイルからコピー&ペーストで埋めてやる。後は特にWizardの指示に従ってインストールすればよい。

Photo02: 1番目と2番目の項目の違いが判りにくいが、素直に2番目を選んでおけばよい。

Photo03: 氏名は入っていさえすれば何でもOKだった。会社名はなしでも大丈夫。

Photo04: 411回でも説明したが、このライセンスの有効期限は2037年まで。ということで、まぁ事実上利用期限が無いのと一緒である。

これのインストールが終わったら立ち上がるわけだが、その前にもう一つ行うことがある。それはST-Linkのドライバのインストールで、こちらは自動では行われない。

このドライバは、64bit版OSならば、

C:\Program Files (x86)\IAR Systems\Embedded Workbench 6.0 Kickstart\arm\drivers\ST-Link

32bit版OSならば、

C:\Program Files\IAR Systems\Embedded Workbench 6.0 Kickstart\arm\drivers\ST-Link

の下に置かれているので(Photo05)、これを実行するとWizardが立ち上がるが(Photo06)、こちらもデフォルトのままで問題ないだろう。正常にインストールされれば、STM32F4-DiscoveryをUSBポートに繋ぐとデバイスが認識され、最終的にはUSBの下にSTLink dongleがぶら下がっているのが見えるはずだ(Photo07)。

Photo05: IAR Embedded Workbenchは汎用ということもあり、特定のマイコン別のドライバ類はディレクトリの下にまとめておいてあるだけなので、それをインストールするのはユーザーの作業、という事になる。

Photo06: こちらは別にライセンスも何も要らないので、そのまま起動してデフォルト設定のままインストールを行えばよい。

Photo07: デバイスマネージャでUSBの下に"STMicroelectronics STLink dongle"が見えればOK。

以上でインストール作業は終了なので、早速IAR Embedded Workbenchを立ち上げてみよう。初回は言語設定をたずねられるので、とりあえず日本語にしておいた(Photo08)。するとIAR Embedded WorkbenchのIDEが立ち上がるはずだ(Photo09)。

Photo08: 日本語か英語かの選択。別に英語でもかまわないし、必要なら後で環境設定(「オプション」→「言語」)から変更も可能。

Photo09: キャプチャ画面はサイズの関係で横幅800pixelにしているので、画面がつぶれて見えることはご容赦いただきたい。

さて、それでは実際に何かやってみるとしよう。411回目にも紹介した通り、STM32F4-Discoveryの説明ページのDesign supportタブの下のほうに、"STM32F4DISCOVERY board firmware package, including 22 examples (covering USB Host, audio, MEMS accelerometer and microphone…) and preconfigured projects for 4 different IDEs"とあるZIPファイルへのリンクがある筈だ(原稿執筆時点でのバージョンは1.1.0)。これをダウンロードし、任意のフォルダに展開しておく。ついでに、同じページにある"Audio playback and recording using the STM32F4DISCOVERY"というPDFもダウンロードしておこう。

(続く)