今回から数回はちょっと中休みで、変なものをご紹介。6月にちょっとニュースでご紹介したのだが、米DigilentがMicrochipのPIC32をベースに、Arduino互換の開発ボードであるChipKITを開発、同社でも販売するほかMicrochip Directでも取り扱いを始めた。

もともとMicrochipはご存知の通りPIC14から始めて多くの8bit MCUを展開、その後16bitのPIC24や、これにDSPを組み合わせたdsPIC、更にはMIPS32 M4Kコアを内蔵したPIC32を展開するローエンドMCUの雄である。これに真っ向勝負を仕掛けているのがAtmelで、自社のAVRシリーズを8bitに幅広く展開、最近は16bitを飛ばし(その分8bit系のラインナップと性能拡充を図っている)、32bitにも独自アーキテクチャのAVR32を投入して、ここでもMicrochipと真っ向勝負になっている。

で、ArduinoはこのAtmelの8bit AVRを使って構成されている訳で、Microchipからすれば決して面白い話ではない。そんなわけでMicrochipも色々PICを使った開発ボードを出したりはしていたのだが、Arduinoコミュニティの勢いはとどまる所をしらず、ついにGoogleまでがAndroid Open Accessory(ADK)をArduino Megaベースで提供するようになるに至り、この勢いに対抗するのは容易ではないと判断したようだ。そこで一転、Digilentと共同でPIC32コアを搭載するArduino互換ボードを開発、オリジナルより高性能なArduino互換ボードを低価格で販売するという戦略に切り替えた。

この低価格というのがなかなか面白い部分で、例えばArduino Uno/Uno SMDは$29.95、Arduino Mega 2560は$58.95というのがまぁ「定価」である。これに対し、Uno/Uno SMD互換のchipKIT Uno32は$26.95、Arduino Mega互換のchipKIT Max32は$49.50という価格で販売されており、微妙に安くなっているのが判る。国内だと、Arduino Uno/Uno SMDが\2,995、Arduino Mega 2560で\6,495で各ショップ横並び、対してMicrochip DirectでこのchipKIT Uno32とchipKIT Max32、さらに$19.95のChipino Proto-Shieldをまとめて購入した時は、パーツ代が合計$96.40、送料+税金が$21.74で合計$118.14。日本円での支払いは\9,794で済んだ。5月末の購入だったので、まだ支払いの換算レートが\82.902/$とちょっと円安風だったのも影響している。恐らく今購入すれば更に安くなるだろう。ちなみに5/31の夕方(日本時間:米国時間は5/31の早朝)に発注したところ、5/31中にFedexで発送され、6/3の午後には我が家に配達されたというスピードで、国内通販とそれほど大きな差がなかったりする。結局Arduino Uno+Arduino Mega 2560とほぼ同じ金額で、ついでにChipino Proto-Shieldまで入手できたわけで、お買い得感は強い。

というわけで、まずは製品紹介など。Microchipから販売されているため、デフォルトでこのMicrochipの箱に入った形で届けられる(Photo01)。中身はこんな具合のパッケージになっている(Photo02)。さてChipKIT Uno32はこんな具合。I/Oピンの数が大幅に増えているほか、ジャンパ類の数もかなり多いのが判る(Photo03)。Arduino Unoと並べてみたのはこちら(Photo04)。サイズとかピンそのものは互換であるが、内側にI/O Pinを拡張したり、リセットスイッチの位置が移動していたりという違いがあるのが判る。

Photo01: 今回3個口だったため、この箱が三つ届くという始末に。んで、それがFedexの箱に入って届くという、微妙にエコではない構成。

Photo02: Arduino UNO以降で採用されたパッケージに良く似ているが、開くときに壊れやすい。またシール類の同梱もない。

Photo03: 例えばArduinoなら、Pin 10のDigital In/OutとPWMの出力切り替えは自動で行われるが、chipKIT Uno32はこれをJP4で切り替える必要がある、といったわずかな煩わしさはある。

Photo04: 細かいところではUSBがMini USBコネクタに切り替わっている。また、基板右端の切り欠きがなくなっているのも特徴。

ではchipKIT Max32は? というとこんな感じ(Photo05)。更にピン数が大幅に増えているのが判る。Arudino MEGA 2560と比較してもその差は明らかだ(Photo06)。

Photo05: Uno32にあったI2C/AnalogのPin Selectのジャンパはこちらでは無くなっている。ピン数が多いので、そこまで共用しなくてもいいから、という事なのかもしれない。

Photo06: Uno32ほどではないにせよ、MAX32のパーツの多さが目立つ。というよりも、Arduino MEGA 2560がすっきりしすぎているのかもしれないが。こちらも、基板の右端の切り欠きがなくなっているのがわかる。

ところで今回一緒に購入したのが、このCHIPINO Proto-Shield(Photo07)。サイズはArduino Unoに準拠したもので、上に小さなブレッドボードが載っている。実際にChipKIT Uno32(Photo08)やArduino Uno(Photo09)に搭載しても、違和感が無い。個人的にはリセットボタンが操作しやすい場所に設けられているのと、本当に小規模なテストだとこのサイズのブレッドボードで十分だったりするので、結構便利ではないかと思っている。

Photo07: 写真からも判る通り、これはChipinoが販売するもの。元々はChipinoが販売するプロトタイプ用シールド。

Photo08: ChipKIT Uno32に載せてみた図。流石に拡張されたピンまではサポートしていない。

Photo09: Arduino Unoに乗せた図。Proto-Shieldの足がかなり長めなので、一杯まで差し込んでもUnoの上の3×2ピンには引っかからない。

さてこのchipKIT、Arduinoとバイナリ互換で動作するというのがウリである。勿論独自モードもあり、こちらではPIC32のフル機能を使えるし、PCIDEというMicrochipのデバッグ機能も使える。そんなわけで、次回からこうした機能を色々ためしてご紹介したいと思う。

(続く)