校正をどう掛けるかは詳しくは次回以降で紹介するが、簡単に言えば水やらお湯やらに、基準となる温度計と一緒に突っ込むのが一番早い。方法から言えばほかにも校正を掛ける方法は一杯あるが、個人宅にある道具で簡単に出来て、それなりの精度を出すという目的だと、これ以上に便利な方法を筆者は知らない。ということで、

  1. 温度センサーを水に突っ込んでも大丈夫なように、配線を絶縁しないといけない
  2. 実際に使う場合、或る程度配線を引っ張りまわせるようにしないと不便
  3. センサーを実際にはガムテープなどで貼り付ける場合もあるから、これに耐える強度が必要

といった条件が入ってくる。これを満たすように温度センサーを加工しようというのが今回の主題である。

さて、まず配線である。センサーが3線式なので、今回は6芯(Photo01)のリボンケーブルを3芯づつに分割して使うことにした。配線はまぁ1mもあればいいだろうから、3m6芯のリボンケーブルなら、1m3芯の配線が6本取れる計算になる。ついでに、Arduinoと繋げる部分は、最終的に着脱できるように3Pのコネクタ(Photo02)を使うことにした。また最後に利用する外被として熱収縮チューブ(Photo03)も用意した。ちなみにいずれも同社のオンラインショップで購入できるが、大抵の電子部品を扱っている店なら似たようなものがあるだろう。

Photo01: 千石電商で\480。センサー1個あたりだと60円の計算になる。今回は0.3mmφのものを使ったが、これだとごついという人はもう少し細めのものを探してもよい。ただその分機械的強度が落ちるので注意。

Photo02: ファン用のコネクタでおなじみのアレ。左上がメス、右側が対になるオス、中央下側がメス型コネクタの内部に使う金具。いずれも1個30円(千石電商)。

Photo03: 確か5mmφのもの。正式名称はスミチューブF(Z)で5mmφ×0.25mm(肉厚)×1mのものを\100で、やはり千石電商で。

さて手順であるが、まずは配線の両端の被覆を全部剥き、簡単にハンダめっきしておく(Photo04)。一方センサーとコンデンサをこんな具合に絡めておき(Photo05)、一方中央の配線は反対側に折り曲げた(Photo06)上で、配線と絡めてハンダ付けを行い、余分なリードを切り取っておく(Photo07)。

Photo04: ちなみに全部で36回の被覆剥きとなる。冗談抜きにこれが一番重労働だった。

Photo05: センサーの裏側がちょっとだけ盛り上がっているので、ここにコンデンサをあわせて取り付けたが、今から思えばもう少しコンデンサをセンサーと離した下側に取り付けても良かったかも。

Photo06: 中央のこの配線が温度出力である。

Photo07: ちなみに配線の色を信号にあわせてきちんと、とか考えると配線がややこしくなるので、あきらめた方が良いと思う(というか、筆者はあきらめた)。

これを6つのセンサー全部に対して行ったら、次は反対側である。金具はこんな具合になっているので(Photo08)、これに併せて被覆を剥いた配線も切り詰めておき(Photo09)、金具に挟み込んで(軽くラジオペンチなどで金具を折り曲げてはさんだ上で)、ハンダ付けをする(Photo10)。終わったら、軽くモールド部を何度か折り曲げると、綺麗に分離する筈だ(Photo11)。それが終わったら、3Pプラグメスに挿入して出来上がりである(Photo12)。

Photo08: 下の板は単なるモールドなので、ここにハンダ付けしないように注意。

Photo09: これでもまだちょっと長すぎた。実際は5mmほどあれば十分である。

Photo10: ハンダ付けが終わった後の図。

Photo11: 金具が4Pコネクタ用に4つでセットなので、こんな具合にちょっとあまる。

Photo12: ちなみにそれぞれの配線とコネクタの位置関係をきちんと決めて守らないと大変な事になるので注意。今回の場合、コネクタの1番がVcc、2番が温度出力、3番がGNDと決めている。

この挿入はちょっと分かりにくいと思うので図で説明すると、まず図1の様に金具にハンダ付け後、上下をひっくり返して図2のようにプラグに差し込むわけだが、このとき金具の爪がプラグ上の穴に引っかかるように挿入する。きちんと奥まで差し込むと、図3の様になり、もう金具も抜けなくなる。この状態で3Pプラグのオスに差し込むと、図4の様に接触するという仕組みだ。

2011年7月5日追記: 記事公開当初、金具裏の抜け防止の爪の件を忘れて説明を記載しておりました。お詫びして訂正いたします。

図1:

図2:

図3:

図4:

配線が終わったら、次は絶縁である。まず温度センサー部を適当なもの(筆者はメンディングテープを使ったが、セロテープでも十分である)でカバーし(Photo13)、縦に半切にしたストローをあてて、そこに接着剤を流し込む(Photo14)。とだけ書いても分からないと思うので、もう少し細かく手順を紹介したのが図5だ。コンビニで貰った飲み物用ストローを3cmほどの長さに切り、更に縦に半切にして配線のあたりにあてがい、両端をテープで止め、そこに絶縁材料となる汎用の接着剤(コーキング剤とかでもいいが、接着剤の方が一般的だろう)を流し込むというわけだ。もっともこれだと上半分しか接着剤が回らないので、ある程度固まったら一旦ストローを外し、上下ひっくり返してもう一度(3)~(5)の手順を繰り返せば、配線部分が綺麗に絶縁材料で覆われるというわけだ(Photo15)。

図5:

Photo13: 実は温度センサー全体ごと、まとめて接着剤ドブ付けという方法もある。ただこの場合、接着剤が断熱材的に働くので温度変化がなだらか(というか、鈍感)になるという欠点がある。もともとあまり感度の良い(温度変化にすぐ反応する)センサーではないので、必要以上に鈍感にすることもないと思い、センサー部をマスキングして接着剤がつかないように気をつけた訳だ。

Photo14: 筆者はコニシ(株)のウルトラ多用途SUが気に入っているのでこれを使ったが、二液性のエポキシとかでもいいだろう。

Photo15: これはまだ硬化中の様子。このボンドを選ぶ理由は、ストローを簡単にはがせる(なぜかコンビニのストローはくっつかない)という特徴があるから。ちなみに硬化時間は接着剤の説明書に記載されているので、これに従ってほしい。

さて、最後が熱収縮チューブでカバーである。熱収縮チューブを2~3cmの長さに切って被せ(Photo16)、ドライヤーなどであぶるとチューブが収縮して綺麗に収まってくれる(Photo17,18)。ということで6つのセンサー全体に同じ処理を行って、完成である(Photo19)。

Photo16: これは接着剤をつけて3時間ほど後の状況。実用強度は既に出ているが、まだ完全には固まっていない。

Photo17: これはまだ熱を加える前。ちなみにこのチューブの場合、80℃~90℃を超える温度になると最大55%程度収縮する。もともとが5mmφだから、2.3mmφ近くまで縮む計算になる(実際はもう少し甘い)。

Photo18: 熱を加えた後はこんな具合。多少接着剤がはみ出しているが、これは後でカッターなどで取り去ったほうがいいだろう。

Photo19:

(続く)