ということで、今回はMicro USB Plug/Receptacleの話である。まず最初に、USB 2.0までのMicro USBを紹介しておくと、こんな感じ(Photo01~04)となる。Micro-A、つまりUSB HostとなれるA-Device側が角型で、Micro-B、つまりUSB DeviceのみとなるB-Device側が下側を斜めに切り落とした形状となる。Micro-AのReceptacleが無いのは、USB Hostを実装できるなら、当然USB Deviceにもなりえるだろうという判断だ。

Photo01: Micro-A Plug。MicroUSB Specification to the USB 2.0 Specification, Revision 1.01のFigure 4-6より抜粋。

Photo02: Micro-B Plug。MicroUSB Specification to the USB 2.0 Specification, Revision 1.01のFigure 4-7より抜粋。

Photo03: Micro-AB Receptacle。MicroUSB Specification to the USB 2.0 Specification, Revision 1.01のFigure 4-11より抜粋。

Photo04: Micro-B Receptacle。MicroUSB Specification to the USB 2.0 Specification, Revision 1.01のFigure 4-12より抜粋。

そもそもUSB Host機能を持ちながら、形状がMicro USBでないといけないという用途は非常に考えにくい。無理に考えれば、超小型USB Hubを作るにあたり、Standard-Aでは大きすぎるのでMicro-Aを使う、なんて可能性は無くはないだろうが、そんな製品は未だお目にかかったことが無い。つまりDual-Roleとはならない、A-DeviceのみというケースはMicro USBでは考慮していない訳だ。どうしても必要ならStandard-A Receptacleを使えという事だろう。

Micro-Bの方は下側が斜めにカットされているので、

Micro-A Plug + Micro-AB Receptacle 挿入できる(この場合A-Deviecとして動作する)
Micro-A Plug + Micro-B Receptacle 挿入できない
Micro-B Plug + Micro-AB Receptacle 挿入できる(この場合B-Deviceとして動作する)
Micro-B Plug + Micro-B Receptacle 挿入できる(この場合B-Deviceとして動作する)

といった形となり、動作に支障は無い事になる。

さて、ではUSB 3.0はどうか? というのがPhoot05~08である。

Photo05: USB 3.0 Micro-A Plug。Universal Serial Bus 3.0 SpecificationのFigure 5-13からの抜粋。

Photo06: USB 3.0 Micro-B Plug。Universal Serial Bus 3.0 SpecificationのFigure 5-13からの抜粋。

Photo07: USB 3.0 Micro-AB Receptacle。Universal Serial Bus 3.0 SpecificationのFigure 5-14からの抜粋。

Photo08: USB 3.0 Micro-B Receptacle。Universal Serial Bus 3.0 SpecificationのFigure 5-14からの抜粋。

基本的な考え方は、

  • USB 2.0のMicro USBのコネクタの横にUSB 3.0の部分を追加した。
  • USB 3.0の追加分に関しては角型のShell構造で、これはA/B共に変化なし。したがってA/Bの機械的な区別は、USB 2.0側の形状で行う。
  • USB 2.0のMicro-AB Receptacle/Micro-B ReceptacleにUSB 2.0のMicro-A Plug/Micro-B Plugを装着することが可能。ただし逆は全く不可能。

といったあたりになる。信号ピンも、USB 2.0の側に関しては従来のMicro-A/Bと全く同一であり、追加された側はUSB 3.0の送受信ペア(都合4本)とUSB 3.0用のGNDと分離されている。OTGのIDはUSB 2.0側の信号ピンをそのまま使うことになっているわけだ。

この結果として、USB 3.0のMicro-A/Bのコネクタ形状はだいぶ幅広になってしまった。Photo09がMicro-A Plug、Photo10がMicro-B Plugであるが、それぞれ最大17mm/16mmまで広げられることになっている。ちなみにUSB 2.0の場合、それぞれ11.7mm/10.6mmだから、5.5mmほど広がった計算だ(長さの標準18.5mmという数字は変わらない)。ここまで広がると、本当にこのサイズで許容されるのかちょっと疑問が残るところだ。ただ昨今のトレンドは機器の薄型化であり、コネクタの厚みそのものはUSB 2.0のMicro USBと同じだから、これで許容範囲と考えられるのかもしれない。

Photo09: USB 3.0 Micro-A Cable Overmold Dimensions。Universal Serial Bus 3.0 SpecificationのFigure 5-18からの抜粋。

Photo10: USB 3.0 Micro-B Cable Overmold Dimensions。Universal Serial Bus 3.0 SpecificationのFigure 5-17からの抜粋。

ちなみにSpecificationでは、更にコネクタやケーブルの詳細について論じているが、ケーブルそのものについてはその4でも簡単に触れたのでここでは割愛する。実のところ、USB 3.0のSpecificationの中でも「詳細はUSB 3.0 Connectors and Cable Assemblies Compliance Documentを参照せよ」とかになっている箇所が多いのだが、肝心のこのDocumentがまだApproveされておらず、現在はUSB-IFのMember内部で審議中という扱いだからだ。先日のSuperSpeed USB Developers ConferenceではJeffが「これがUSB 3.0のCableだ」と示していたが(Photo11)、実はまだプロトタイプ状態でしかないことになる。

Photo11: これは基調講演での一コマ。これはMicro-B Plugで、反対側にはStandard-A Plugが付いたケーブルを紹介している図。

余談ながら、ケーブルの最大長に関しては利用するケーブルの種類により、最大0.8m(AWG28)~5.3m(AWG20)とされている。このケーブル長を規定するのは、USB 3.0の信号ではなくUSB 2.0の信号の側で、信号減衰と信号を伸ばすことによるDelayから定められている。要するにこのあたりはUSB 2.0とまるっきり変わらない訳だ。ただUSB 2.0の場合、しばしばUSB Cable Extender(Standard-A PlugとStandard-A Receptacleがケーブルの両端に付いた物)が使われていたが、同じ事をUSB 3.0でやれるかはちょっと「?」である。今度はUSB 3.0の側の信号で、途中に接点が入ることで信号の反射が発生しそうだからだ。このあたりは実際に製品が出てこないとなんともいえない、といったところだろうか。

(続く)