ということで、13回にも及ぶ連載になってしまったが、Xilinx JapanのSam Rogan氏へのインタビューをまとめさせていただいた。

ちょっと昔話になるが、筆者がハードウェア屋をやっていた(というか、小さい会社だったのでハードウェアのエンジニアが足りず、バス屋さんというかファーム屋さんをやっていた筆者が無理やりハード屋をやらされたというのが正確なところ)頃は、まだFPGAなんて使える金額のものではなく、CPLDですらコストに合わなかった。結果、初期のPAL(というか、確かLatticeの16V8/20V8/22V10というGAL)を使ってボードを作っていたような記憶がある。

今となってはお話にならないほど昔の話であるが、それまでがTTLやらCMOSやらのディスクリートで組んでいた(学生時代にCMOSだったかTTLだったかで、エレキーを作ったりしていた……なんて話をしても判る読者が何人居られるんだが……)頃から比べると、考えられないほどに自由度が高まった事に感激した記憶がちょっとだけ残っている。それがFPGAになると、そもそもLE(Logic Element)の数が桁違いだわ、動作速度が無茶苦茶速いわ、トランシーバー内蔵製品もあるわ、で偉い事になっている。

筆者がハード屋をやってた当時に作っていたシステムが丸ごと、多分Spartan-3の上のモデルで収まってしまうだろう。あるいは筆者のメインターゲットの一つであるCPUの分野でも、古い8051ベースのIPとかMicroBlaze/PicoBlazeなどが動き、Cortex-M1すら動く。勿論マルチタスクOSを乗っけてどうこう……というには何れのCPUも厳しいが、Realtime OS程度ならCortex-M1やMicroBlazeに移植できるだろう。

その一方で、コスト面では非常に厳しいものがある。3回目にもちょっと触れたが、特にXilinxのFPGAは安くない。よく引き合いに出すのは、Digi-Keyでの購入価格である。代理店がしっかりサポートしてくれるような規模のメーカーはともかく、いわゆる中小企業ではしばしば代理店がサポートしてくれないような場合もある。こうした場合に役に立つのがDigi-Keyを初めとする部品サプライヤーで、実際FPGAを1個単位で買えるのはありがたいのだが、例えばSpartan-3だとローエンドグレード(XC3S50-4VQG100C)なら1000円/個程度で購入できる。これがハイエンドのSpartan-3A DSPクラス(XA3SD3400A-4FGG676I)だと2万円弱。このあたりが、量産にかろうじて使える限界だろう。Virtex-5になると、Virtex-5 LX(XC5VLX30-1FFG324C)でも2万4千円、ハイエンドのVirtex-5 LXT(XC5VLX330T-1FFG1738I)で170万円オーバー(!)となっている。

まぁDigi-Keyでハイエンド買うなよという話はあるのだが、以前はPCI-ExpressのカードをFPGAベースで作ろうとすると、(Xilinxの場合)Virtex-5が必須で、とてもじゃないが使えないといった声はあった(そうしたベンダーがAlteraのArriaとかに走ったりしているのだが、これはまた別の話だ)。そういう意味で、Spartan-6にPCI ExpressのEndpointが含まれたのはなかなか象徴的な話だとは思うが、様々なアプリケーションがHigh Speed Serial I/F(Serial ATAとかUSB 3.0、Ethernet、etc...)への対応が必須になるなかで、そうしたデバイスを繋ぐ上で、今のSpartan-6程度の装備でいつまで十分か、はちょっと疑問だ。

話がそれた。FPGAは原理的にSRAMでLook-up Tableの内容を保持しているから、Logic Cellを1つ作るのに膨大な数のトランジスタが必要になる。したがって、どうしてもコスト面ではASICなどに比べて不利である。これを逆手に取ったのが、Flashベースで内容を保持するActelのProASICやIglooなのだが、アイディアはともかくマーケットシェアとしてXilinx/Alteraにはまだ及ばないあたりは、テクノロジーというよりもマーケッティングの問題なのかもしれない。

ただ結果として、ActelのProASIC3クラスはSpartan-3/6あたりとぶつかるものでしかないから、(それだけが理由ではないにせよ)VirtexクラスのFPGAの価格が下がる方向には働かない。もしFPGAのマーケットを本当に大きくするのであれば、もう少し製品価格が下がらないといけないのでは? というのが強く感じるところだ。中小企業でも普通に最終製品にFPGAをドカスカ入れられるような価格帯になれば、また別のビジネスが生まれるような気がする。というわけで、Rogan社長が今後Xilinx Japanをどの方向に導いてゆくのか、今後を見守りたいと思う。