(私の)過去の経歴の中で、386の互換とかInte社の互換とかをやった事はあるのですが、それをやってもやはり社会では尊敬されません。特にアメリカとヨーロッパにおいて、Imitationは最低ですよね。付加価値を付ける、つまりIinnovationを職業にする方々を蔑視する事を言うつもりは無いのですが、特にテクノロジーに関して言えば、何かを真似することで、本来ならば研究開発の膨大なお金が掛かる所をケチって、自分で製品を作っているという格好になると、やっぱり尊敬も受けないですし。今後マーケットが広がって行った時に、結局色々な所で、じゃあこれ使えるからあれ使えるからと手っ取り早く組み合わせだけでやってゆく事になってしまう。そうせずに、自分達でちゃんとした方針を持って作ってゆくことで、自由に広げてゆける自由度を確保できます。仮に今のままでは難しい事が出てきても、全部イチからいじれない物は無い訳ですから。

勿論、外から持って来た物でも、勿論良い物はあります。色々な所に使われているコアデバイス、例えばPCIとか、PCI Expressとかですが。そういうところに関しては、自分達が将来そこをやるよりは、お金で買った方が得という事が確かにあるのですが、そういったものは別にして、商品として勝負して行きたい部分に関しては、自分達の手元でやって行けるような状況を残しておきたいと。結果的にはシームレスで、色々な物を自動化し、性能上げて行く時の一つのテクノロジーのチャレンジにもなりますし、あと逆に中味を知ってるだけに、そこを広げて展開するような事も出来るので、そういう事をやって行きたかった事もあります。

Q:あの、現実問題として、例えば富士通さんは主要な株主さんでいらっしゃるわけですけど、あそこ組み込み用にまだSPARC Liteとかを頑張ってやっておられる訳で、例えば富士通さんとしてはSPARC Liteに繋げてくれない? って話などは無くは無かったんじゃないかな、と?

A:まぁSPARC Liteそのものではないのですが、まだ社員が20人とかの少なかった時期には、「体力無いんだから、オリジナリティなんて生意気なこと言ってる場合じゃ無いよ」と聞こえるようなコメントが、もしかしたらあったかもしれません。直接私に強く(そうしたコメントが来る)というのは無かったですけれど、たぶんどこかではそういう声はあったかもしれないですね。当然富士通さんも、ものすごくお金掛けてやってるわけですから。でも我々は違った価値、そこでしか創り出せない価値を創り出したいと。だから、ウチの会社で聞いたのは、やっぱり技術者ってのは苦しくなると、「佐藤さん、どこどこでこういう安いコア売ってます」というのは、沢山ありました。「パイプライン段数もこうなってますよ」って。「お金としてもこれくらい掛けてもたいした事無いでしょうって。もうそれ買った方がいいんじゃないですか」って。でも買ったら買ったで、何か拡張しようとか性能上げようとか言う時に、又やっぱり苦しい思いをするのは同じですよね。それに又お金を払わなくちゃいけないし。そういう事を考えてくと、いろんなトータルコストとしてもどうか、と。やはり、特に上手く行ってない時に、まあ今が完全に上手く行ってる訳ではなくて、まだ課題はあるんですけれども、上手く行ってない時はそういった声はどうしてもありますよね、社内に。

Q:ある(笑)。

A:「間違ってる」って。「やはりあの人は経営者じゃ無い」「なんか自分の一つのこだわりだけでやってく」と。ただDAPDNAを作ったばかりの時はともかく、最近はそういう声は私自身は少なくなりつつある気がします。それで結局性能稼げて、役に立つことを示せればそれは一つのやり方だと思っています。勿論、まだちょっと辛いのはユーザーさん、特に大きなホストとか持っておられるところなのですが。そうすると我々の方を下側に持ってくる。もうそれは仕方が無いのですが、我々はチャレンジャーなので。で、ホスト側はホスト側で、処理が重いところを下に落としたいわけですね。で、我々は当然下なので、なんでもやりますって言いますけれど、性能ではですからホスト以上のポテンシャルを見せ付けたいなと思ってます。

ユーザーさんからみれば、やはりホストというのは巨大なその半導体メーカーとかProcesserメーカーが皆でやっているものなので、安心感もあると思うんですよね。ですので、どこかで代替手段があればそれでかまわない、と。チャレンジャーは誰もがここのポジションか始めなければいけないので、どこかで逆転できればなあと思ってはいますが、当面はその、まあ知恵比べと技術競争というところで、(本来は)我々が果たす意味は無いんですが、頑張って性能を上げて行きたいと思います。私的にはですね、以前に比べるとホストを押す声は少なくなりつつあると思ってます。我々のやっていることは全く間違っている訳じゃないって声も、たぶん今はあるんだろうと思っています。ですので、こうした声がもっと増えるような努力をしたいな、とそう言う風に思います。