さて、ここからはインタビューの内容をお届けしたい。D:はKevin Donnelly氏、W:がSteven Woo博士の発言となる。

Q:Hughes氏やRies氏(RAMBUS社副社長兼ラムバス株式会社代表取締役)はTBIを、将来のゲームコンソールに最適と紹介しましたが、まず最初にお伺いしたいのは、誰がそんなコンソールを作ろうとしているのか? です。通常、こうしたゲームコンソールを新規に立ち上げる場合、3年~4年は必要です。コンセプト決定からデザインや設計、テスト、サードパーティへのプロトタイプ供給などには、最低でもこの程度は必要でしょう。逆に言えば、2011年に新しいゲームコンソールが立ち上がるためには、既に開発が始まってないとおかしい事になります。Microsoft? 彼らはXBOX 360に集中しています。SCEIのPS4? そうした方向を進めてきた久多良木氏はもうSCEIにおられません。それにSCEIは半導体製造部門を東芝に売却してしまいました。こうした状況でPS4が2011年にラウンチするのは難しいでしょう。では任天堂? 彼らはWiiで、HDに拠らない新しいゲーム体験の分野を開拓しました。なので、彼らが再び、TBIが必要とされるようなハイエンドのHD環境に戻るとは考えにくいのですが。

D:確かにあなたの言うことは判るし、同意する。ただ、今から4~5年後にどうなっているか、というのはまだ判らない。例えば任天堂がHDの世界に戻ってくるか? といえば、(個人的には)多分Yesだと思っている。SONYやMicrosoftが新しいプラットフォームに移るか、といえば、これもYesだと思う。勿論2011年ではなく、2010年とか2012年になるかもしれないし、正確な日付を言うことはできないが。ただ、その時点では新しいプラットフォームが必要になる(そしてそこではTBIの性能が必要になる)と信じている。

W:別の視点から見てみよう。今の時点でも、Processorには十分なメモリ帯域は供給できていない。通常演算を行うためには、1Bytes/flops以上の帯域が必要になってくる。例えばCell BEの場合、数百Gflopsの演算性能を持っている。ところが、メモリ帯域は25GB/sec、比率にして1:10のオーダーでしかない。もっと帯域があれば、Cellはもっと高速に動作できることになる。他の汎用Processorでも、たとえばIntelのProcessorは常に帯域不足に悩まされている。もしこれがもっと大きな帯域を利用できれば、更に性能を上げることができるだろう。TBIはこうした部分にも役立つことになる。

Q:これに関連する話ですが、HPCのマーケットをどう思いますか? 例えば先月NECは新しいVector ProcessorのSX-9を発表しました。このSX-9は256GB/secの帯域を持っていますが、NECはこれを実現するためにダイエリアの40%をMemory I/Fに割いているそうです。こうしたマーケット、つまりVecrot ProcessorとかClusterこそが、真に高いMemory Bandwidthを必要としているように思うのですが?

D:その通り。我々はTBIのターゲットとしてGame ConsoleやGraphics以外にHPCも主要なターゲットにしている。Vector Processorなどは、まさにこうしたターゲットだろう。だから、今から4年後には、TB/secの帯域がこうしたマーケットで必要になってくるだろう。

Q:次はGraphicsです。私はXDRとXDR2の時に、やはり同じ質問をRAMBUSの方に行っているのですが、Graphicsについてはどうでしょう? XDRのアーキテクチャは、潜在的にはグラフィックに非常に向いた構造になっています。ですがTop 2 Vendor、つまりNVIDIAとATIですが、彼らはGDDR / GDDR3 / GDDR5といったGDDR系列に最適化したアーキテクチャを取っており、これをコアはそのままでXDRやXDR2に置き換えるという訳にはいかないと思います。同じ事はTBIにも言えると思うのですが、グラフィックベンダーがアーキテクチャを変更して、GDDRからTBIに乗り換えるといった事は現実問題ありえるでしょうか?

D:その可能性はあると考えている。勿論あなたの見方は正しい。現在はGDDR3が使われているし、彼らがそこに留まる(GDDR系を使い続ける)のは非常に容易な選択だ。ただ我々は、Single-Ended Signalingを高速に動作させることには限界があると強く信じている。また多くの人が、この中にはグラフィックベンダー2社も含まれるが、GDDR5を様々な製品に適用するのは大変に難しいと言っている。5GHzのSingle-Ended SignalingはNoiseやCross-Talkの影響が大きく、これを動かすのは至難の業だ。確かにATIは、GDDR5は素晴らしいといっている。ただ彼らにしてもGDDR6の話はしていない。10GHzのSingle-Ended Signalingは不可能だ。だから、より広い帯域が必要になったら、別のアイディアが必要となる。勿論、メモリ帯域を増やすという案はあるだろう。ただ先のNECの40%ではないが、既にかなり多くのダイエリアがMemory I/Fに使われている現状では、これ以上バス幅を広げるのは難しいと思う。GDDRはGDDR5以降のロードマップが無いし、私自身はTBIはGDDRよりも容易に、より高速なMemory I/Fを提供できると思う。