【コラム】
○Ethernetのケーススタディ(1)
さてシェアードバスの限界が見えてきたところで、では「次は何か?」という話になるわけだが、これに関してはI/Oバスより先に典型的な例が存在している。それは何かというと、ネットワーク、もっと厳密に言えばEthernetである。ということで、ちょっと本題を外れてEthernetの話をしてみたい。
EthernetはそもそもDEC、Intel、Xeroxの3社により共同開発されたものである。当初の規格は3Mbps(厳密には2.94Mbps)だったが、その後IEEEによって802.3という規格が成立した際には10Mbpsに増速されている。
その最初のEthernetは10BASE5と呼ばれている。10Mbpsの転送速度で、500mまでの距離を転送できるところからこの名前がついたわけだが、その実際の接続方法というのは、図1の様な構造である。中央に物凄く太いネットワークケーブル(初期の製品は黄色だったので「イエローケーブル」なんて呼ぶことがあったが、そのうちオレンジとか赤とか、カラフルな製品も登場した)を配し、そこにトランシーバと呼ばれるアダプタを取り付け(この取り付けとは、同軸ケーブルに穴を開け、そこに針を突き刺すという代物で、結構体力が必要だった。更に余談だが、この工事の際に使う道具が、その形状から「バナナ」なんて呼ばれていたりした)、そこからドロップケーブルというやや細めのケーブルを介してノード(当時だとワークステーションとかPC)に接続するという仕組みだった。この構成は、要するにシェアードバスの方式そのものである。
ちなみにこの状態で、複数のネットワークを接続したい場合はどうするか? というと、例えば図2の様に2つのネットワークケーブルの両端を、ブリッジなりルータなりを使って接続することで実現している(この両者の違いに関しては、あまりにネットワークに特化した話なので、ここでは省く)。このあたりも、例えばPCIバスでマルチファンクションカードを作りたい場合などに、PCIバスブリッジ経由で複数のPCIコントローラチップを搭載する様に良く似ていて面白い。
さて、これに続くのが10BASE2である。10BASE5の欠点は「とにかく嵩張る事」だった。なんせケーブルは直径1cm以上あり、しかもシールドが丈夫なので、曲げても直径50cm以上になるという代物。加えてトランシーバが、初期のものでは長さ30cm、幅/高さ5cmにも達するという巨大なもので、マシンルームでミニコンピュータに接続している分には良くても、ワークステーションやPCを繋ぐにはあまりにも邪魔すぎるという欠点があった。その一方、技術の進歩によりトランシーバの回路をEthernetカード上に搭載できるほど小型化が進んできたため、無理にトランシーバを外付けにする必要もなくなってきた。そこで、従来の太いケーブルの代わりに細い同軸ケーブル(RG-58)を使い、接続自体もBNCコネクタを使う形でワンタッチに着脱できるようにしたのが10BASE2である(図3)。
名前の通り、今度は最大到達距離が200m(正確には185m)に制限されてはいるが、現実問題としてこれがネックになることはあまり無く(筆者の経験では、ある重工業メーカーの工場内部にLANを敷設するという時に、工場の内部が数kmもの距離があり、10BASE2では全然足りなかったという事はあったが、普通のオフィスでこれが問題になることはまず無い)、工事も楽とあって「ある程度」普及した。「ある程度」というのは、10BASE5を完全に置き換える前に、10BASE-Tへの移行が始まってしまい、結局10BASE-Tに収束してしまったからで、その意味では過渡期の技術と言えなくもない。この方式の欠点は、「配線中にネットワークが落ちてしまう」という事で、例えばマシンが増えたら同軸とBNCコネクタをどこかに挟み込んでやる必要がある訳だが、その際に既存の配線を一旦途中で切らないと挟み込めない訳で、煩雑にマシンの変更があると、そのたびにネットワークが落ちるという厄介な状態に陥ってしまった訳だ。
これに続き登場したのが10BASE-Tである。こちらの構造は、図4の様なものだ。トランシーバとネットワークケーブルを一体化してハブの中に収めてしまい、そことノードの間を10BASE-Tケーブルで接続する、というのがその骨子である。一見するとハブと各ノードの間がPoint-to-Pointで繋がっているように見えるが、実体はというとただのシェアードバスだったりする。ただし、これによって10BASE2の問題であった「配線の際にネットワークが落ちてしまう」現象はなくなったし、10BASE5の問題だった配線の難しさも解決したわけで、結果としてEthernetはすべてこの10BASE-Tに収束してゆく。この10BASE-Tの普及があったからこそ、これに続く発展があったわけで、次回はその発展をご紹介したい。
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